当たり前の平和
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まだもう少し幕間になります
「これが………………電……車ですの?」
ガタンゴトンと揺れる車内で、マリアは驚きの声をあげる。その横ではそんなマリアを愉しげに見つめる女性。先程の交番所勤務の男の娘らしい。
「電車が初めてなんて、何か新鮮だね」
「そ、そうですの?私の地元には無かったですの、だから………」
昼間と言うこともあり客はまばら、しかし、それでもマリアの格好が周囲の目を引くのは確かだった。
「まぁ、その格好は浮くわね………」
「?」
「しかも、金髪美少女だし……」
「?」
正直自分が浮いているのはわかっていたが、気にしない様にしていた。しかし、改めて横に座っている女性、真奈美にこちらの格好を指摘されると、抑えていた気恥ずかしさが戻って来そうになる。が。マリアは真奈美を見て笑みを浮かべ。
「マントを脱ぐと、もっと恥ずかしい格好ですの」
「あら、それはまたどんな格好か気になる所だけど、こっちまで恥ずかしくなりそうだから、止めとくは………」
と、その時。
「仕事仲間かぁ………」
不意に真奈美の言葉。何処か羨むような、それでいて懐かしむような。電車の椅子に腰掛けながら真奈美が天井を仰ぐ。それを視線で追いながら、次の言葉を待つマリア。
ガタンゴトンと揺れる車内、次第に揺れにも慣れ、心地よさを感じる程になる。と。
「レイヴァンスさんだっけ?」
「マリアで良いですの、真奈美さん」
「そ、じゃあマリアちゃんはいくつ?」
「20ですの」
「20………若!?」
「真奈美さんは、いくつですの?」
「私、私は………31ね………」
何処か遠い場所を見つめて真奈美の視線が泳ぐ、が、さしてマリアは気にした様子もなく。
「結婚はされてますの?」
「何かショックな反応ね…………まぁ、してるわよ、子供も一人ね、マリアちゃんは?」
「私は、同じ職業だった妹が一人いますの」
「だった?」
「私は色々あって仕事を辞めましたから」
「そうなんだ………でも妹さんは元気してるの?」
「そうですわね、元気してますの、仕事も順調そうですし」
「そっかぁ、親御さんは?」
「私達が幼少期に………」
「それは、何かごめんね………」
「いえいえ、構いませんの、私達の国では少なくはないですから」
あっけらかんと話して見せるマリア。それを聞いて、若干気を使う真奈美。だが、そんな他愛もない会話をしていても電車の速度が変わるわけでもなく。ガタンゴトンともう何度目かの停車駅へと到着しようとしていた。
「それにしても皇木かぁ、珍しいわね?」
「そうですの?」
「まぁねぇ、それにこの辺り出身の皇木っていったら有名な人がいるわね」
「それは、男性ですの?」
皇木と聞いて不意に質問する。が、問われた真奈美はゆっくりと首をふり。
「違うわよ………女性、確か皇木 理華だったかしら、ボクシングの世界選手権代表」
「ボクシング………」
ぱっとしない感じではあるが、マリアは真奈美の言葉に耳を傾ける。と、同時に極の言葉を思い起こす。
(俺の姉貴は強ぇよ、多分この世界に来たら相当にな………)
何故か思い起こされる言葉。窓から見える流れる景色を眺め、少しばかり感慨に更けり、極の言葉を思い出した。
「……確かに、もしかしたら………かも知れませんの」
「何?何の事?」
「いえ、こちらの話しですの…………」
笑みを浮かべて、話しをはぐらかす。勿論気になる真奈美はもう一度聞こうと食い下がろうとするが。その時電車の中に次駅のアナウンスが流れる。すると、それを聞いて。
「ちぇっ、問い詰めたい気もするけど、マリアちゃん、次の駅でおりるよ!」
声だけのアナウンスを指差すようにして、真奈美は次の駅だとマリアに説明する。
〜駅前〜
「住所だと、ここから徒歩で15分くらい何だけど」
紙片の写しに目を通して呟く真奈美。その間マリアは、ロータリーから見える景色を眺めながら。
「城壁がないですの………」
と、ポツリと溢す。それもそのはず、先程の森からこちら、一度として城壁の影すら見えないのだから。するとその言葉を何気無く聞いていた真奈美は。
「城壁?無いわよそんなの」
「!!??」
城壁が無い。この言葉に驚愕を覚えるマリア。なら敵からの攻撃にどう防衛を行うのか、心中で思った時。
「街はお城じゃ無いんだから、城壁なんて必要無いわよ」
「えっ!?」
城壁がない、それを聞いた瞬間にマリアは驚愕の声をあげてしまう。勿論それを見て、不思議に思った真奈美が。
「えって、日本の何処にも城壁何て無いわよ!」
「なら、外敵の備えは?」
「外敵…………戦後70年以上になるけど、外敵なんて無いわよ………」
「そ、そんな」
外敵が無い、それを聞いた瞬間、マリアの足から力が抜けそうになる。ヴォバックではあまりにも考えられない事だから。
「ま、まぁ、マリアちゃんの住んでる所がどんな場所かは知らないけど、日本では大丈夫よ」
そう言って、真奈美は駅のロータリーを歩き出す。マリアもまだまだ疑問や思う所があったものの、それらを押しやり、真奈美の後を続く。
……………
無言で歩きながら街並みを眺める。印象は平和だった。ヴォバックにある何処か敵を意識した中にある平和ではなく、ただ漠然と平和だった。敵意を感じない、心の底から安心出来る、そんな印象の場所。
歩く、ただ道を歩くだけでも、マリアには平和を感じとることが出来た。悪く言えばぬるま湯とも言えなくは無いが、それは今までが戦いと隣り合わせにあった自分の嫉妬や妬みかも知れない。それでもそれらを差し引きしても日本は平和そのものだった。
(これが……極が私やフランに見せたかった日本の平和な街並みですのね、正直、出来ることなら三人で来たかったですの………)
何処か失った、遠い思いを引き出して、マリアは、ふと歩きながら青空を眺める。
と、その時。真奈美の足が止まり、指がとある場所を指し示す。背の高い建物だ。シャリオの城壁(20メートル)程もある建物、それを指差してそのままこちらに振り向き。
「多分アレじゃ無いかしら?マンションね」
「マンション…………」
「ピンと来ないかしら?アレも人の住む場所なの」
「アレが、凄いですの………」
城壁のごとき建家を見つめ、呆然とするマリア。それを見て少しだけ優越感を覚える真奈美。そして。
「後は大丈夫ね、このマンションだから、後は部屋の号室を探すだけ、私はここまでね!」
そう言って、マリアから一歩離れる。それを見て。
「あの、有り難うございましたの!」
「良いの良いの、私の父見たでしょ、警察官でお人好し、まっ、私も嫌いじゃないし、それにマリアちゃんとは一期一会の関係にはならない様な気もするし……」
手を振りながらまた一歩。
「おっと、そうだこれ私の新しくなる住所!」
思い出すかのように鞄からペンを取り出し、極の住所の書いた紙片に、自身の住所を書き足す。
「これは………」
「私、今度新企画の都市開発区に引っ越すんだ、かなりの山中だけど………そこでパン屋をするから、もし良ければ、立ち寄ってね!」
と、そこまで言って今度こそ真奈美は立ち去っていくのだった。
「本当に感謝ですの…………」
感謝の念を籠めて、去り行く背中を見つめるマリア。
…………………
………………………
背が見えなくなり、少しの間を置いて。
「さぁ、私も私のやることをやりますの!」
と、誰に言う出もなく気合いを入れてマリアはマンションへと入っていく。
幕間の時系列では、主人公三人は高校生です。




