ヘルミーネ・ベルギウス
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マリナは絶句した。
騒ぎに気がつき、宿泊用の集会場から飛び出た時、倒れる昌晃と純一の近くにいたのは、淳や他の旅団員では無く、白のローブをすっぽりと被った、一人の女性だ。月明かりに照らされ、その姿を確認したマリナは心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われる。
が、白のローブの女性はマリナの姿を確認すると。笑みを浮かべ。
「あらあらまぁまぁ、希望の翼のマリナちゃんじゃない!?」
と、昌晃や純一等いなかったかのように話しかける。が、話しかけられたマリナは絶句して硬直したままだ。
「確か前回会ったのは、イーグレットと王都に来た時よね、懐かしいわぁ一年程前かしら、希望の翼のニシノ要塞戦での活躍も聞いてるわぁ、王都でも最近は、希望の翼は一目置かれる存在よ!!」
優しく肩に手を置いて。白ローブの女性は満面の笑みを浮かべる。そこでやっと硬直から回復したマリナは背を正して。
「ベルギウス様、何故この場所に!?」
「様は止めてよぉマリナちゃん、だって今は違うけど元十傑のマリアちゃんの妹でもあるのよぉ、私の事は気軽にヘルミーネって呼んでよぉ!」
マリナの胸の辺りにのの字を書いて優しい声音で語りかける。若干年相応な感じがしない喋り方な気もするが、誰もそれに突っ込む事はしない。
と、その時、やっと意識を回復させた昌晃が、ダメージの全然抜けていない身体を重そうに動かし立ち上がる。視線をヘルミーネに合わせそのまま睨み付ける。そしてその瞬間、場の空気が凍りつく。多分昌晃は解っていない、今正面にいる女性が誰なのかと言う事に。
昌晃は知らない。
彼女がこのチルダ王国最強の一角であると言う事を。
昌晃は知らない。
彼女がS級十傑第4位、回復士ヘルミーネ・ベルギウスと言う事を。そして、戦闘能力の決定的差を。昌晃は全くもって気付いてはいない。だがこの瞬間、昌晃にこの事実を伝えることが出来る者もいなかった。
「クソッ…………いきなり…ド頭蹴り飛ばしやがって……首がもげるかと………思ったぜ…………」
右に左にヨロヨロと。それでも何とか意識を保って昌晃はヘルミーネに悪態を吐き捨てる。すると、ヘルミーネはマリナから手を放して、昌晃をゆっくりと振り向く。その仕草は、マリナに見せていたそれとは180度違うモノ。冷たい、視線で射殺せそうな程のモノだった。だが、昌晃にはさして関係無い。ヘルミーネの視線を正面から受けてなお怯える事はない。
「解ってんだろうなぁ………ド頭蹴ってくれた借りは………倍にして返してやっからなぁ………このクソボケッ………」
魔導石の武器を展開することも忘れ、昌晃は怒りに任せて前進。
が。そんな昌晃を見て、蒼い瞳を細めヘルミーネは可笑しそうに声を殺しクツクツと笑う。
「何が可笑しい……」
ダメージの抜けきらない身体を引きずり、笑うヘルミーネに苛立つ。しかし、ヘルミーネはそんな昌晃を更に滑稽そうな瞳で見つめ。
「コレが笑わずにいられますか、マリナちゃん、この頑丈な子は?」
いきなり話をふられるも、マリナは何とか冷静に。
「ウチの旅団です………」
「そうなのぉならぁ…………」
笑みは崩さず、ヘルミーネは冷えきった視線で昌晃をねめつけ。鳩尾に一撃。拳をめり込ませ逆側の手で胸ぐらを掴み上げ。
「生意気な後輩には、少し躾が必要かしら!?」
「ゴホッ………躾だ…………!?」
咳と共に、血を吐き出すと。今度は脚を払われ、無抵抗のまま地面に叩きつけられ、顔面を踏みつけられる。
「糞が……………」
何とか口を開くが、踏みつけられた足の力は尋常ではない、現状の昌晃の力では抜け出す事が出来ない。踏みつけられた足は更に力をこめ、昌晃の頭はギシギシと軋んでいく。激痛が襲い、次第に痛みで手が痙攣を始める。
ヤバイ…………
流石に内心危険を感じる昌晃。が、未だに意地が先行して、降参することを良しとはしない。歯をギリギリと食い縛り、何とか耐える。
と、その時。ズドンッ。銃声が響き渡り、それと共に昌晃の頭の激痛がふっと消える。何事かと思うも、今はそれを考えている暇は無い。ダメージを確認しながら立ち上がり、ヘルミーネの姿を確認する。しかし、確認した先にいたヘルミーネは自分の方を向いておらず。
「あらあらまぁまぁ、アレは貴方の敵では無くて?」
「……………さて、敵では無いッスけどねぇ、でも今は考え方が違うだけッスよ、ならそれは、助けない理由にはならないッスよ」
ヘルミーネの強さを感じていた純一は、有無も言わさずに発砲。銃口から火花が迸る。が、ヘルミーネはさして動揺する素振りもなく、ただ無言で手をかざし。銃弾を握りつぶす。
「……………はぁ、やっぱりッスね」
ヘルミーネと昌晃の戦闘を見て、ある程度の予想をつけていたのか、純一はヘルミーネの行動に驚きを見せずに、更に発砲。勿論それすらも弾丸を握りつぶすのだが、その間に純一は中距離にまで距離を広げる。そして、そのまま武装を小銃に変化させ発砲、しようとするが、いつの間に距離を詰められ。 銃口を力任せに握られると引き寄せられて、顔面に一撃。拳が頬にめり込むと同時に鼻の中に熱い何かかが伝う。
「ゴフッ……」
鼻の中に熱い何かかが伝う、伝うが、それを意識する暇も無く。胸ぐらを掴まれて鳩尾を二度殴打、激しい鈍痛と共に鼻ではなく口から血を吐き出す。
「あらあらまぁまぁ、鼻より先に内臓?困ったわねぇ…………」
笑みを浮かべながらヘルミーネは暗闇で、更に純一の胸ぐらをを掴み上げる。何とか脱出しようと試みるものの、思った以上のダメージを受けた純一は、逃げる事すらままならない。
(ミイラ取りがミイラになった感じッスね………)
心中でそう呟くと、自身のあまりの滑稽さに笑みを浮かべてしまう。
「ダメージを受けても余裕かしら……?」
ヘルミーネの表情から笑みが消え。その直後、鳩尾に一撃、再度吐血して脱力した時、胸ぐらを掴んだ手を放し、地面に落ちそうになったところに蹴りを入れて吹き飛ばす。それはもう、ボールを蹴り飛ばす程度に。
勿論、誰もそのやり取りを止める事は出来なかった。いや、出来るわけが無かった。
相手はS級十傑、暴風域に無謀に突っ込むものなどいないのだから。




