気付かれない何処かで
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結論から言えば、コモス村は無傷だった。
キリールとの戦闘で、村の中は少しばかり傷付いたものの、それでも直ぐに復興出来る程度のものだった。
オーガの集団は、カリエールの逃亡と共に消滅。残ったのは野盗旅団であるキリール。
その処遇は増援として来たマリナに一任される事になる。
「別に逃げやしないさね………」
戦闘終了後、ジャコモ達キリールの面々は村の入口に急遽設営された牢へと入れられる。その数10名程。どうやら戦闘終了後、殆どの旅団員が森の中へと姿を消していった。それを聞いた時、ジャコモはさして興味を示す事も無く。
「まぁ、そんなもんさね、元々食い詰めた奴等の集まりだからねぇ、雲行きが怪しくなればそんなもんさねぇ………」
牢の中で笑みを浮かべ、ジャコモは用意されたコップの水を飲み干す。それを鉄柵越しに見ていたのはラースだった。ゆったりと近より、そして。
「ジャコモさん、本当に野盗旅団長だったんですね……」
少し残念そうに表情を曇らせ、しかし、何か意を決して。
「ジャコモさん、いえ、マレーンさん俺とツィラの結婚式を見てもらえないでしょうか?」
何を言い出すのか、牢に入れられている犯罪者に対していきなり結婚式に出てくれとは。流石のジャコモも、いきなりの事に虚をつかれたようになるが、直ぐに苦笑し。
「アンタ正気かい?アタシは犯罪者さねぇ、そんな輩に結婚式に出ろ?はぁ…………」
最後はため息。驚きを通り越して呆れてしまう。だが、ラースは至って真剣で。
「確かに犯罪者かもしれない、でもツィラが認めた人ですから、ですから………」
「まぁまぁ焦らないさね、ちょっとは冷静に考えなよ、結婚式に犯罪者を出席はぁ現実的じゃないさね、それに」
「それに?」
と、そこで一息入れて間をつくり。ラースでは無く、少し遠巻きにこちらを見ているマリナを見つめ。
「多分明日には、シャリオに護送されるだろうからねぇ、悪いけど諦めてくれるかねぇ」
そこまで言って、ジャコモは軽く頭を下げる。そして、それ以上の会話は無いとばかりに背を向け他の旅団員と会話を始めてしまう。
ラースはその背を見つめ。
「ツィラの為にも、諦めませんよ俺は…………」
そう言って。ラースはその場を後にするのであった。
〜森林区 某所〜
「くっ…………」
額に汗を浮かべ、肩で息をし、木にもたれ掛かる男。数度大きく深呼吸し、呼吸を整えて落ち着きを図る。
今回は没落とは言え、貴族を使い自身の力を証明しようとしたが失敗だった。しかし、生きてさえいれば機会はある。自身のモンスター使役能力があればいくらでも必要とする組織や個人はいるのだから。
「再起の機会などいくらでも…………」
「あると思いますか?」
いきなりの事。カリエールの言葉を否定して汲み取ったかのような言葉。はっとなって周囲を見回すと、いつの間にか巨木にもたれ掛かる一人の女性がいるではないか。白のローブをすっぽりとかぶり、全身を隠している。髪は深い海を想像させるような蒼。瞳の色も髪と全く同じ。だがその存在感は何故かカリエールに警戒をずっと促している。
「一人…………なのか?」
剣を構え女性に問う、すると、女性はうっすらと笑みを浮かべ、上品そうな口調で。
「そうですよ」
ただ一言だけ答える。しかし、それでもカリエールの警戒感は一つも拭えない、それどころか更に増していき、額を伝う汗が直ぐに冷えていく。ヤバい、何故か本能的にそれだけは悟った。だが、自分にはモンスター使役能力がある。一人だと言うのならばオーガ等の戦力差で押し潰せば良いだけのこと。手に力を入れて、オーガの召還を準備する。すると。
「エッカルト・カリエール、モンスターでも召還ですか?」
「!?」
図星、言い当てられて背に悪寒が走る。こちらとしてはそんなモーションに及んだつもりはない。それでもその女は笑みを崩さずに行動を読み当ててくる。
「ふむ、良いですね、最期の抵抗をしてみますか?」
「最期だと、たかだか女の分際で!」
「女の分際で………?そぅかしら………」
「あぁ、俺を相手にこんな場所で一人でいるんだからな、来いオーガ共っ!!」
手を横に振り、モンスターの召還。
…………………
が、何も起こらない。勿論再度召還を試みるも無反応。それを見て女がクスクスと笑いをこぼし。
「何も起きませんか?おかしいですね?」
笑みは崩さず、女はカリエールの行動を滑稽そうに見つめる。見つめられ流石に苛立ちを覚えたカリエールは。
「女、何者だ?」
剣の切っ先を突き付け、低い声音で問う。
すると。
「……………ふぅ、まぁ死に行く者への手向けでしょうか、良いでしょう」
薄い笑みが、不気味な笑いに変わる、その瞬間カリエールの身体が恐怖に硬直する。動けない訳では無いが、何故か動けない。そして。
「私は、チルダ王国がS級十傑第4位、ヘルミーネ・ベルギウス、初めまして…………そして、さようなら…………」
S級十傑、正に死神と言える実力者、ヘルミーネが言葉を発する度に、カリエールの背に冷たい何かが近寄ってくる。
「くそ、S級とは言え回復士だろう、ならっ!」
「ふふ、何とかなると思いますか………そうですか、ならどうぞ……」
白のローブをすっぽりと被り。無防備の状態でヘルミーネが抵抗しろとばかりにカリエールを挑発する。剣を握る手に言い知れない汗が滲み出す。それでも行かなければ生き残る術は無い。意を決してカリエールが戦闘姿勢をとった刹那。
………………………
見慣れた姿。死の狂人を筆頭にオーガなど無数の魔物が遅れてカリエールの前に現れる。しかし、その全てがカリエールを向いている。
「何だ!?」
自分の意思で出してはいない。しかし、自分の特異能力で出せる魔物達だ。それが今自分を向いてじっと見ている。
カリエールにとっては不気味な光景。
「ふふ………」
と、そんなカリエールを見て、小さく嘲笑ったのはヘルミーネだった。ヘルミーネは今一度視線を向けて。
「この程度の戦力を有して、特異能力使いですか、笑ってしまえますね?」
「なっ!?」
「私ならこの能力で、最低でも竜属を隷属させますよ、貴方には勿体無い、能力が泣きますよ…………」
「な、何故だ、何故、お前がっ!?」
「お前?私に向かってお前ですか…………面白い、抵抗してみなさい、貴方の能力は私が認めた人間に譲渡しておきます、さぁ……………」
心置無く………
…………死出の旅路へ……
……………………
後に残ったのは冷たいヘルミーネの声音だけだった。




