続 突撃
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「はぁっ!!」
風の魔術。巨大な真空の刃がオーガを切り裂く。広範囲魔術は四方を巻き込み木々を両断しオーガも八つ裂きにする。
飛び散る紫色の血液。頭部を裂かれ脳を撒き散らす。腕を切られ、腹を両断腸を撒き散らす。
普通人間ならば痛みでのたうち回る所だろうが、オーガ達は多少動きが鈍る程度で、残った四肢を持って襲いかかってくる。
「レイヴァンス氏!」
左右の片翼、それを担うマリナとカナリス。A級である二人の戦力は完全にオーガを圧倒し、昌晃達を圧倒するほどに二人は片翼の戦線を押し上げていく。
「封ぜよっ!!」
更に押し返そうと迫るオーガに、今度はカナリスが手を上げて声を荒げる。と、同時に地面、百メートル四方に稲光が走る。
すると、荒ぶっていたオーガが一斉にその動きを止める。
「レイヴァンス氏!!」
今一度声を上げてマリナに合図を送ると。マリナは正面に手をかざし。
「地を這う獄炎よ、敵を焼き払え!!」
正面に炎のうねりが集い収束すると共に、地面を這いずる様にオーガに襲いかかる。全てを焼き、オーガを消し炭に。後に残ったのは肉の焼けた残り香と、宙を舞う消し炭。
「よしっ!!」
マリナが表情を変えずに、更に百メートルの距離を押し上げる。着実に近づいているはずだ。そう思い他の方にも視線を向ける。正面の戦線を担当している三人は開けた場所へと出た様で、その瞬間からこちらのオーガの数が目に見えて少なくなっている。森の木々のせいで中々に確認は出来ないが、オーガの動きには違和感を覚える。
「レイヴァンス氏!」
と、マリナが違和感を感じ始めたのと同時に、カナリスも何かを感じた様で声をかけてくる。
「どう思う、レイヴァンス氏、やはりモンスター使役士は…………」
「えぇ、多分ですが、オーガの目を使い遠視していると思います」
遠視。モンスター使役士だけでは無いが、この場合モンスターの目を術者の目に繋げて情報を獲得する。それをカリエールが行って、正面の三人にまずモンスターを集中させたのだろう。
「ジャコモ…………だな」
「でしょうね、悔しいですが、多分カリエールは彼女をこの部隊の最高戦力と見たのでしょう、だからオーガを正面に集中した」
「だろうな………」
と、そこでマリナは一呼吸置き。
「なら、こっちはそれに乗らせて貰いましょう」
「乗る?」
「えぇ、ジャコモにオーガを集中させ、私達両翼の面々は、カリエールとブゼに向かいましょう!」
現状人数の少ないマリナ達にとれる最善策だった。
「…………動きがあるねぇ………」
戦闘を行いつつ、ジャコモは両翼が動き出したのを感じる。しかし、感じるまで周囲はオーガの集団がその包囲を狭めてきている。
「ふぃ〜、何だろうな、正面の戦線は解るけど、さっきより増えてねぇか!?」
モンスター特有のえげつない色の血を浴びながら、脇差しに着いた血を払う。
「ですね、その辺ジャコモさんはどう思われますか?」
昌晃の言葉を受けて、淳はそれをジャコモに再度問う、するとジャコモは相対していたオーガをククリ刀で斬り伏せ、淳では無く、昌晃の横に飛び。
「さてねぇ、まっ、言えるのはカリエールがアタシらに戦力を増やしたんだろうねぇ………」
「それは、誰のせいなんだろうな?」
嫌味っぽく、昌晃がジト目を向ける。だがジャコモはさして気にした様子もなく、首をかしげて。
「まぁ、アタシは有名人だからねぇ」
「悪目立ちの有名人だろうがよ、犯罪者が!」
指で刺す。
「まぁまぁ、昌晃も落ち着いて、戦闘中ですし、それに!」
と、襲いかかってきたオーガのナタを、淳は盾で受け、いなし、バランスを崩し膝を着いた所を片手剣で首を払う。喉がばっくりと開き、天に向けて紫色の血が吹き上がる。
その時には、昌晃やジャコモも再び散開して戦闘を再開する。
「昌晃の良い相棒ですかね?」
小声で口にしたつもりだが、少し離れた場所にいた昌晃が。
「なわけあるかよ、ボケッ!」
と、反応し怒声を上げる。苦笑いの淳。
その間も両者入り交じった音が開けた場所に響き、戦闘の壮絶さを物語る。
「淳、行けるか!?」
「大丈夫ですよ、オーガは多いですが何とか、しかし、戦線が押し上げられませんね」
「仕方ねぇだろ、数が多すぎるんだよ、何とか何ねぇのかよ!?」
「現状はなんとも、凌ぐしかありませんよ」
「だろうなぁぁ、淳、正面更に来るぞ!!」
開けた場所で、木々の間隔も広くなったために、昌晃は脇差しを長モノの野太刀に変化。全力で振り回す。
「俺は…………不死身の藤堂だぁコラァァ!!」
「…………深夜アニメですね、てか昌晃の場合は奇跡の方では?」
「不死身の方が今時だろ!?」
ニタァと笑みを浮かべ、昌晃は野太刀を振るう。先程よりも小気味良くオーガを両断、景気良く宙を舞う。
「オラオラァ、オーガ何てこんなもんかよ、もっと来んかぁい!!」
「昌晃、それフラグです…………」
淳の警告と共に、正面から更にオーガの群れが現れる。
「どうやら、本当に術者をやらないと駄目みたいだねぇ」
サッとこちらに近づいてきて一言。それを聞いた昌晃は少し機嫌悪そうに。
「だろうな………」
と、一言。しかし、どれだけ愚痴ろうともオーガの数は減ることはない。むしろ増える一方である。
「これは…………流石に僕達よりも村の方が心配ですね」
襲い来るオーガをいなしながら、村を心配する淳。だが、しかし、オーガの殲滅に手一杯で術者、カリエールの発見には全く至らない。
「オラァッ!」
苛立ちを晴らすかのの様に振るわれる野太刀。紫色の血飛沫が舞い、オーガであった肉片が宙を飛ぶ、そこには何の情も通ってはいない、ただ作業の様に斬り倒していく。
と、その時。正面に何かが現れる。雰囲気こそオーガと変わらないが。出で立ちからしてオーガとは別格の何かだ。
「ありゃぁ………」
と、その時、ジャコモが昌晃の近くにきて呟く、どうやら何かを知っている様だ。
「何か知ってんのか?」
「ん、どうだろうねぇ、そうさねぇ、キスしてくれたら教えてあげようかねぇ」
「却下だな」
「ありゃま………………つれないねぇ」
「で、あれは何だよ?」
オーガが動きを止めて、近づいて来る何かに道をあける。それを見て。
「多分あれはカリエールの切り札だろうねぇ」
「切り札?」
「そうさね、死んだ冒険者の肉体を、死霊になる寸前に支配したんだろうねぇ」
「マジかよ………」
「マジさね、ランクはA級だろうねぇ」
野太刀を地面に刺し、指を鳴らす昌晃。そのまま歩く死体に視線を向ける。そして。
「なら、あれを倒せば術者な近づくかもだな?」
「そうさねぇ………保証は無いけどねぇ」
と、ジャコモがそう言った時。
敵がコチラに向けて走り出すのだった。
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