甘さ
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「ただの黒服じゃないな?」
自身の攻撃を防いだ防御能力もさることながら、アドルノは破れもしない黒スーツに視線を注ぐ。それに気付いた淳は、黒スーツの誇りを払いながら。
「別に隠す必要もありませんでしたが、聞かれる事も無かったので、確かにこれはただの黒スーツじゃありません、対物理・魔術防御に優れ対刃対圧構造で魔力を通すことにより普段の30倍の力を出すことが出来るスーツです」
「ほぉ…………」
「と、言うのは半分本当で半分は嘘です、30倍の力なんて出ませんよ、冗談です、某アニメのA○スーツじゃ無いんですから」
「?」
最後のはアドルノには通用しなかった様だが、それでもスーツの性能を警戒していきなり突っ込んでくる事はない。
しばしの睨み合い。両者戦闘姿勢を崩さず対峙する。
ザリっと地面を踏みしめる音を響かせた時。再度動き出す。
「煙!」
一瞬で距離を詰めると思いきや、アドルノは手をつきだし煙幕を展開、戦場を一瞬で煙幕で覆う。
「うっ…………」
視界を奪われ、数メートル先さえ確認出来なくなる。淳は直ぐさまその場から飛び退き、飛び退き様に近距離広範囲用のショットガンに切り替える。
「ベームの時もそうだが、君の魔導石は特殊だな、仲間になる気はないか?」
「遠慮しますよ、これでもエリート旅団所属ですから」
「そうか、それは残念だな、俺としては再起不能にするより仲間にするほうが良いと思ったんだがな」
「殺すでは無く、ですか?」
「あぁ、団長の方針でな」
煙幕の中、淳は何処からか聞こえる敵の声に反応する。
「本当に仲間になる気は無いかな?」
「えぇ、再度お断りしますよ」
「あぁ、残念だよ」
言葉を言い終わると共に、煙幕を切り裂きアドルノが出現。その距離数メートル、直ぐ様反応した淳はショットガンを構え発砲、の、はずが、腰を落とし力を溜め、素早くインステップで懐に潜り込んで来る。
「うっ…………」
咄嗟に反応するも、既にショットガンの斜線上にアドルノは無く、超至近距離、格闘戦のフィールドに。
「ふっ、はぁっ!!」
ジャブのダブル。寸前で腕を前に出してガードするも、その重い打撃に衝撃が脳を揺さぶる。
「まだ行くぞっ!!」
更にジャブからのボディへの一撃。まだ左だけの攻撃だが淳は攻撃になすすべ無く後退することも許されない。
「近接格闘は苦手か?」
すっと二三歩距離をとり、左右にステップを踏みながらアドルノが口を開く。
「さぁ………どうでしょう?今から勉強させてもらいますよ?」
口元に滲む血を拭いながら、淳もショットガンを片手剣と盾に変化させる。
「本当に、珍しいっ!」
アドルノの言葉で再び戦闘。ステップインで懐へ、淳も盾を前面に突き出し正面の攻撃を防ぐ。ガンゴンッ、ベアナックルの拳が盾にぶつかり鈍い音が響く。衝撃が腕を伝い身体を駆け抜ける。今は防戦一方。しかし、淳の盾から覗く視線はアドルノを捉えて離さない。
「眼は死んでいないな」
更に数発、鈍い音が響き、淳を押さえ込む。攻撃が止むことは無く、何とか反撃を試みるも、ステップインとステップアウトに翻弄され片手剣の攻撃は虚しく空を切る。
「速いっ………!?」
「ふっ、それは褒め言葉ととらせてもらう」
更に数撃。しかし、淳が魔術で身体強化を行ってもアドルノのスピードはそれを上回る。空を切る斬撃。的確に打ち込んで来る拳撃。ジリジリと押し込まれて行く。
「ジリ貧ですね………」
「さて、どうするか見物だ」
左右にステップ。頭を振りもう数発盾に打ち込む。ガンゴンッ。鈍い音、伝わる衝撃、進展しない展開に流石の淳にも苛立ちと焦りがつのる。
「クッ!」
呻きながら、何とか敵の動きを追う。が、動きを追うと、アドルノは更にスピードを上げてくる。
「さぁ、まだまだギアを上げて行くぞっ!!」
言い終わると共に、斬撃を回避。掻い潜ると同時にジャブ。二発三発。切れ間の無い拳撃は淳を押さえ込む。
「甘いな、動きが雑だ、そして…………」
言い終わる間もなく、突きの一閃。しかし、アドルノはそれを待っていたと言わんばかりに片手剣の延びきった横を通り過ぎ、一撃を叩きこむ。
「ぐはっ…………」
身体が開いた一瞬を見逃さず、左のボディ。今度はベアナックルの一撃が脇腹にめり込む。言い知れない鈍痛。脳天を突き抜ける痛みが、淳の意識にダメージの大きさを報せる。
「どうだ、いくら防御しても痛いものは痛いだろ?」
苦痛に歪む淳。それを見てダメージが伝わったのを確認するアドルノ。だが攻撃は終わらない。ダメージに身体が沈みこんだ所に顔面へのジャブ。何とか顔面を盾で庇うがそれも布石。がら空きになったボディにボディフックがダブルで突き刺さる。
「ぐほっ!?」
堪らず身体が九の字に折れる。が、それは決してやってはいけなかった事、なぜなら。
「お休み!」
がら空きになった顎にアドルノのアッパーが一閃。淳の意識を刈り取る。
「中々に楽しかったが、まだまだだな、攻防が甘過ぎるよ」
地面に倒れる淳を見ながら、アドルノが言葉を発する。
決着は、思ったよりも呆気なくついてしまう。
倒れ伏し物言わぬ淳。口からは夥しい血液があふれている。
「おい、この青年を縛っておけ、丁重にな………」
そこまで言ってゆっくりと歩きだす。目的は解っている、場所は村長の家だ。歩きながも警戒は解かずに歩を進める。
今、アドルノを阻む者は何も無い。常駐の冒険者も二人程復帰しているが、村人の誘導でこちらへ向かってくる素振りはない。と、そう思い村長の家の方へ歩いていると、正面に初老の男が現れる。
「村長か?」
「そうだ………野盗の男」
現状、コモス村に彼等を阻む術はなかった。




