プロポーズと二日酔い
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〜コモス村から少し離れた泉〜
時間はコモス村に武装集団が現れる少し前。そこにはラースと村長の孫ツィラがいた。
「一年くらいかな?」
「だな、シャリオに行って一年、目標の冒険者になったしな」
「改めておめでとうだね、しかも、旅団にも所属できたんだよねラース?」
「あぁ、元々冒険者適正が無いって言われてたから、純粋に嬉しいよ」
そこまで言って満面の笑みを浮かべるラース、それを見てツィラも微笑を浮かべる。が、その後少しだけ表情を曇らせ。
「でも、直ぐにシャリオに帰っちゃうんだよね?」
不安そうに聞くツィラ。シャリオの旅団に所属しているのだから拠点はシャリオ。なら、帰るのは当然の事。ツィラとしては、解ってはいても心境は複雑だ。
「まぁ、そうだけど………」
と、そこまで言ってラースがいい淀み。一度だけ泉に視線を向け、何かを思案。少しの沈黙の後。
「ツィラ、聞いて欲しいことがある」
真剣な、茶化した様子の無い言葉。その言葉を耳にした瞬間、ツィラが背を正しラースに視線を合わせる。
「何?」
「俺と…………」
そこまで言って一度言葉を区切る。一瞬の間。そして、周囲の森と泉の静寂が、二人を包み込むと。
「結婚して欲しい!!」
力強い、それでいて意思の籠った言葉。それを聞いた時、ツィラの眼には涙が滲み。
「はい………」
と、口元に笑みを浮かべ、涙を拭い、返事を返す。
「ありゃま………」
眼下。正確には自分の身体を預けている大木の枝の下で、プロポーズが行われ、しかも、成功をおさめていた。木の上の人影は、満面の笑みを浮かべながら、下を見下ろす。内心場違い感を感じながらも、彼女は純粋に祝福する。
が、赤の他人がいきなり出ることも出来ず、それは事の成り行きを見守っていた。
と、その時、不意にツィラと呼ばれていた女性が上を見上げ互いに視線がぶつかる。
「ひゃつ!?」
小さい悲鳴をあげるツィラ。勿論木の上にいた人影も驚いた拍子にバランスを崩し地上へと降り立つ。
「あはは………ごめんねぇ、別に盗み見るつもりは無いんだけど」
苦笑いを浮かべ現れた人影、女性は取り敢えず取り繕って言葉を発する。
勿論、ラースやツィラは絶句。
「あぁ、えぇと、二人とも良かったわねぇ、さぁお邪魔虫は去ろうかしら、お幸せに」
と、何食わぬ顔でその場を去ろうとする女性。しかし、それを制したのは以外にもツィラだった。
「あの!」
「ん?何かしら、後は二人の時間を大切にしなさいな……」
ツィラの言葉を補完するように、女性が言葉を続けるが、ツィラは首をふってそれを否定。そして。
「あの、私は近くの村のツィラ・アモンです、これも何かの縁と思います、お名前をお聞きしても良いでしょうか?」
「は……?いやいや、いきなりじゃない!どうしたのよ」
突然の事に驚く女性、確かにいきなり過ぎて驚かない方がどうかしてる。だが、ツィラは真剣に女性の名乗りをまつ。少しの間。視線だけが女性に刺さる。
「あぁ、まぁ、そのぉ、あんまり名乗る程の名前でも無いんだけど」
「それでも、構いません」
少し困った表情を浮かべながらも、それ以上は何も言わず。一言。
「マレーン・ビュルガー、アタシの名前さ」
マレーン、そう名乗った女性はそう言って二人に背を向け手を振る。
「また、会えますか?」
と、ツィラ。
「まぁ、会えるかもね…………」
振り向かず、マレーンはその場を後にする。
ドンッ!ズンッ!!
と、その時マレーンの背を見送っていた二人に爆発音が襲う。何事かと周囲を見やるが何もなく、それが村の方からだと気づくのにそう時間はかからなかった。
「まさか!?」
ラースが声を上げると共に、ツィラの手を握り走り出す。
〜コモス村 周囲森林〜
「気持ち悪………」
頭がガンガン、胸焼けからの喉元の不快感。油断すれば色々なものがリバースしそうな状態でも純一は走っていた。
「うぇぇぇ……………」
原因は野盗の襲撃だ。既に村では淳が戦闘状態に突入していた。二日酔い、しかもかなりのアルコール臭を撒き散らし走る。純一は吐き気と戦いながら村から離れた巨木に身体を預ける。
「こんな時に襲撃なんて、空気の読めん襲撃者っすねぇ……………」
ぐるぐると回る視界。まだ抜けぬアルコールと戦いながら魔導石を狙撃銃に変化させる。
「あいやぁ〜気持ち悪いは何やらで最悪っす………」
巨木に背を預け、太い枝に腰を据える。そこは村が見渡せる位置、勿論、照準眼鏡には淳の姿もハッキリと見える。
「飲み過ぎっすねぇ…………」
ズドンッ!! 言葉尻に一発。火花が銃口から迸り刹那、襲撃者の1人が吹き飛ばされる。
「殺しはしないっすけど…………重症は我慢してくださいっすよ!!」
ズドンッ!!更に一発。照準眼鏡に見える敵を一撃の元に沈める。
「ゴルゴ純一………と、呼んでも良いんっすよ…………オエッ……………」
胸の不快感。餌付くと共に、喉元に酸っぱいものが昇ってくる。
「あぁ…………目が回るっす………」
一発射つ度に衝撃が脳を揺さぶり、二日酔いに多大な影響を与える。しかし、恐ろしい事に射撃が外れる事はない。
「この距離、この世界の武器じゃ考えられないっすからね……ウエッ、俺はゆっくり…………!?」
と、余裕をもって巨木に背を預けなおそうとした時、言い知れない殺気を感じ硬直する。
「やるねぇアンタ、この距離を必中距離にしてるってだけでも凄いのに、その見慣れない武器」
声はするが姿は確認出来ない。視線だけで相手を追うが、純一の視線の範囲内に相手はいない。
「まぁ現状、ここにはアンタだけみたいだけど良いのかい1人で?」
姿の無い声の言葉。だが純一が1人な様に、相手の気配を探ると1人のようだ。
「ま、まぁ距離が距離っすからね、ここは俺1人でも大丈夫なんっすよ…………」
冷や汗が頬を伝う。その間も必死に純一は相手の姿を探す。
「そうかい、なら都合が良いねぇ……」
「都合が良い?」
姿の見えない相手の言葉に反応、だが相手の殺気はその言葉と同時に更に膨らんでいく。
やる気か…………
純一が心中でそう思った刹那。バかンッ!足場にしていた枝が折れ落下。否応なしに相手との戦闘に引きずり込まれる。
「ははっ、咄嗟に直撃は避けたねぇ!!」
姿無き声が、純一の反応を賞賛する。その間も四方から魔術攻撃が襲い来る。
「くそっ、やるっすね………」
毒づきながら着地。それと共に狙撃銃を小柄なサブマシンガンに変化。手当たり次第に銃弾をばらまく。
タタタタタッ……………!
小気味の良い銃撃音。周囲の木々に着弾し牽制を続ける。
「やるねぇ、気味の悪い武器さね…………でも!」
声がそう言った刹那、純一の死角から人影が出現。手に握られた短刀を構え一気に距離をつめる。が、純一も負けてはいない、咄嗟に身体を捻り気配の方を向いて発砲。小気味の良い発砲音が響く。たがしかし、弾丸は全て空を切る。
「グッ、オエッ……………」
激しい動きが二日酔いを悪化、ゲロが喉元に込み上げてくる。
「ヤッバ、戦闘中にゲロは不味いっす………」
「確かに、格好悪いったらありゃしないさね!」
二日酔いを相棒に、相手は強敵。既に狙撃による援護は出来なくなっていた。




