ニシノ要塞防衛戦10
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結果魔物達の逆攻勢を受け。出撃戦力の六割を失う事になったニシノ要塞防衛隊。
特に損害が大きかったのは正規兵。残存兵力の五割を失う事になる。
だが、戦闘から2日が過ぎようとした今も、森では撤退不能となった兵や旅団員達がニシノ要塞を目指し地獄の撤退戦を続ていた。
そう、後に地獄と呼ばれる1ヶ月の撤退戦。
しかし、そう離れていない距離でなぜ1ヶ月もの撤退戦を余儀なくされたか。それはひとえに要塞防衛の戦力が今回の被害で限界に達しようとしていたからだ。要塞内部では救出に向かうべきかと論議も上がったが、それでも要塞が突破されたリスクを前面に出されれば誰も救出に向かうべきとは強く言えなかった。
“ニシノ要塞前面森林区”
「糞、どんどん要塞から離されてんぞ!!」
魔物達との散発的な戦闘をくりかえしながら、昌晃達はあてもなく森を走っていた。
「ゲームみたいに……」
「死に戻りはねぇぞ、純一!!」
「っスよねぇ……ここは異世界で現実っスからねぇ」
狙撃銃から近接戦闘用のショットガンへ。
今は魔族との戦闘から2日、途中数人の生存者と合流して14人で撤退を続けている。
「おい、前衛が前に出すぎだ、後衛の速度をもっと考えろ!」
そう声を荒げたのは昌晃でも純一でもなく、要塞でイチャモンを付けてきたアギバだった。アギバは自身が中衛に入り前後をみて、撤退速度の調整を行っていた。
「何だ、いきなり合流して仕切りやがってよ!」
「仕方ないッスよ、相手は」
アギバの事が気に入らず昌晃が不満を漏らす。そして、その不満を拾って宥める純一。周囲にはその他二人の他旅団員が肩を並べて前衛を担っている。
「エマさん、ジトモさん、中衛の指示っス速度を落としましょう」
純一が、他の二人に中衛からの指示を伝える。すると、他の二人は頷きながら歩く速度をジワリと緩める。
「てかさぁ、あのアギバとか言うヤツダルくない?」
不意に前衛を歩いていた一人、エマが不満を口にする。
「まぁ、そう言うなよエマ、相手はBランク旅団でも古株旅団だからな」
「それでも合流していきなりリーダー面じゃない!」
「まぁ、そう言う性分なんだろうさ……」
エマの肩を軽く叩くと、ジトモ自身も軽く頭を横にふりため息をつく。どうやらジトモ自身もアギバの態度には思うところがあったようだ。しかし、それでも彼や彼女がアギバに正面向かって反抗しなかったのは格下旅団故の性なのかもしれない。と、その時、アギバと共に中衛にいた片腕を失ったパーカスが一行にストップをかける。
「何だ、どうかしたのか?」
あからさまに不服そうな表情を浮かべ、何事かと問うアギバ。それを見てパーカスは指を立てて口にあて。
「静かにしろ………」
そう言って耳をすます。
………
…………
………………ギ…
「魔物だ、数は不明だがかなりの数がいる」
パーカスが忠告した瞬間、一行に動揺がはしる。が。
「お、落ち着け、先ずは回復士と魔導士を中央に、魔導剣士は前後に別れて………」
アギバが多少の動揺を見せながらも、気丈に指揮をしようとするが、他の面子は言われるより先に展開を開始する。
「は、ザマァ……」
してやったりと、昌晃。純一も苦笑しながらもガッツポーズ。それを見ながら旅団スティールの面子も後方へと走りだす。
「アギバだったな?ここからはAランク下位の俺が仕切るぞ!」
片腕を無くしながらも、パーカスが自身の魔導石を武器化、そのまま、後方の旅団スティールの面子の指揮に回る。
「アギバ、お前は中衛で戦況を見極めろ!」
パーカスがそう言った刹那。森の茂みからゴブリンとオークの集団が現れ戦闘状態になる。
「範囲監視!!」
集団の真ん中に配置された魔導士の一人が広範囲の索敵魔術を発動。一瞬の硬直の後。
「皆さん、距離は離れていますが、四方から更にゴブリンの集団、その数200!!」
「聞いたか、相手はゴブリンでも数にモノを言わされれば不味い、薄い所を突破するぞ!!」
パーカスがそう言って指示をだす。すると、索敵魔術を使っていた魔導士が直ぐに敵の穴を探し方向を示す。示されれば後は前衛を任された昌晃と純一かそこに向かって走り出し。
「まぁ、現状はこうするしかないな……」
「確かに、状況が状況っスから、その場その場で出たとこ勝負っスね!」
そう言って、戦闘を開始する。昌晃も日本刀から拳銃に魔導石を変化させ、迫り来るゴブリンに発砲。迫るゴブリンは打ち抜かれてそのまま地面に転がり込む。
「てか、ショットガンって、えげつねぇなぁ!」
「そっスか?俺としては接近戦闘で日本刀で相手斬るのもどうかと思うっスけどね……」
「てか、今は拳銃だけどな!」
発砲を続けながら、昌晃が純一に拳銃を見せアピールする。
「まぁ、蹂躙してる時点でどっちもどっちっスけどね………」
ポンプアクションのショットガンをスライドさせ発砲、その動作を続けながら純一が皮肉を言って苦笑する。
ズドンッやパンッ、聞き慣れない爆発音を聞きながら、中衛にいて援護を続ける面々は昌晃や純一を見て驚愕の表情を浮かべ。
アレが希望の翼の研修。
と、心中で呟く。確かにそうだ、研修とはまだまだヒヨッコの事、そのヒヨッコが正規の旅団員以上の働きをしているのだ驚かずにはいられない。
が、当の二人はそんな事を思われているとはつゆ知らず、正面のゴブリンに挑んで蹴散らしていく。
が、その時、昌晃達の目の前に思いもよらぬ苦難が立ちふさがる。




