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ニシノ要塞防衛戦9

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正直に一手足りない。昌晃の突貫力に純一の狙撃能力、二人ともこの3ヶ月の間でレベルアップしてはいるが、目の前の魔族を倒しきるにはあと一手足りない感じだ。


「糞、中衛の淳がいればな!!」


二人の指揮官的存在の淳がいないのが、やはり致命的と言えた。


「でも、やるしかないッス!」


狙撃銃で狙いを定め発砲。重苦しい発砲音が森に響き渡り、魔族の脚を止める。が、トドメの一発にはなりきらない。それに、一発撃つ度に迷彩を施し場所移動するのも手間がかかった。


「あぁ、あぁ、あぁ、良いですねぇ、戦っていますねぇ、殺し合っていますねぇ!!」


悦に入った声音、魔族は触手を伸ばし、正面の昌晃に襲いかかる。上下左右。変幻自在のそれは手を変え角度を攻撃を続ける。


「ふっ、はぁっ!!」


刀身に魔力を籠め、身体向上に魔力を籠める。頭上からの一撃をバックステップで回避、下段からの攻撃を日本刀で叩き落とし。左右からの触手をインステップで回避し。距離を詰めた所を素早い突き。


切っ先が閃き。再度魔族の喉元へ。が、予め予測していたのか、最小限の動きで回避して突きを交わし。


「中々どうして、コレはご褒美ですよ!!」


魔族がそう奇声を上げた瞬間。昌晃の腹部の辺りに魔力球が出現。すると魔力球はギュルギュルと収束し始め。


「ヤバい……」


昌晃がそう呟いた瞬間。


爆裂。ドンッという爆音が轟き。周囲の巨木すらも吹き飛ばす。


「フフフヒヒヒ、今のは中々の攻撃でしょう!!」


自分の攻撃を評価しながら、魔族が勝利を確信するかのように笑い声を上げ始める。




ダメージがデカすぎる。喰らった魔術を咄嗟に全て防御に回して防いだがそれでも昌晃は尋常では無い激痛とダメージを受けた。直撃の腹部には火傷の後と激痛。全身には裂傷と巨木などに打ちつけた打撲痕。そして。


「げぇ……」


と、血を吐き出す。


「勝負ありですかな?」


完全に勝利を確信した声音で魔族はゆっくりと優雅に昌晃へと接近する。勿論その間も純一からの援護射撃はあるが完全に防御に徹されると魔族をどうこうするには至らない。


チェックメイト……


二人の脳裏にその言葉がよぎった、まさにその時。



「………君達か、ボクのフランチェスカ率いる旅団の団員は?」



!?


いきなりの登場。最初に気付いたのは遠目に照準眼鏡を見ていた純一。ロングヘアーを後ろで纏めたイケメン風の男。


(いつの間に………)


照準眼鏡を覗きながら男を見ていると、不意に視線がかち合い、男がフッと微笑を浮かべる。


(こっちに気づいてる……魔族でも初見は掴みきれないのに……)


自分に気付かれた事に驚きを覚えながらも、純一は引き金に指をかけた状態で戦況を見守る。


何故かそうするのが最善に感じたからだった。



「誰でしょうねぇ?いきなり戦いに割ってはいる、無粋者は?」


チェックメイト寸前に横槍を入れられ魔族は多生の苛立ちを含みながら男にそう問う。しかし、男はそんな魔族など歯牙にもかけず、昌晃の横に立ち。


「君はフランチェスカの所の団員かい?」


問いかける。勿論満身創痍の昌晃は血を吐き出し息も絶え絶えだったが、何とか声を絞り出し。


「そうだ…」


と、声をだす。すると男は満足そうに笑みを浮かべ。


「そうかそうか、それは重畳、ボクは旅団ヒルティの団長、ランクSのラグナ・ラグーナだ」


片膝の昌晃に一方的にそうつげ、そして。


「後はボクに任せたまえ……そして、フランチェスカに伝えてくれ、ラグナな助けられたと」


優雅に昌晃に背を向け、魔族と相対する。その表情に一変の不安や怯えは無い。それを見て逆に魔族が表情を少し曇らせ。


「いきなり現れて後は任せろ、人間の最大ランクは態度までデカいと見える」


「態度だけでは無いさ……」


ラグーナがそう言った次の瞬間。不意に魔族の身体が後方に吹き飛ぶ。


「ゴフッ……!」


いきなりの事に反応の遅れる魔族。すぐさま触手を展開するも。


「遅いな……遅すぎる……」


そう言い残し、魔術を展開。巨木に激突したその時。ラグーナが肉迫し。


「終焉を……」


と、口走った刹那。魔族の右わき腹から右脚が何かに食いちぎられたように消滅する。


「ばっ……」


咄嗟の事に動揺する魔族。しかし、状況が現実を物語る。魔族が触手を使い距離をとろうとするが。


「逃がさないさ」


と、一言告げ。腰の細身の剣を抜刀。残りの四肢を切断し慈悲も無く蹴り転がす。


「うん、下級魔族程度じゃこの程度かなぁ……」


四肢の無い魔族を足蹴にラグーナは笑みをこぼす。その間も魔族は意識を集中させ四肢を再生させようとするも。


「再生かいそれは無理さ、何たってボクが再生を阻害したからね」


「…………」


「チェックメイトだね、下級魔族……」


と、ラグーナの手がかざされた瞬間。先ほどのように魔族の体が完全に消滅する。


「ふぅ………」


軽量の上等そうな甲冑を正しながら、ラグーナは吐息を漏らす。すると、今度は昌晃に視線を向け。


「魔族は消したよ、さっさと仲間を回収したら良い」


ラグーナはそう言うと一人優雅に歩き出し。


「ボクは先に要塞に行くからね、後は任せたよ……」


そう言い残し、森に消えていく。


「お、おい、後はってどういう……事だよ……」


ダメージの抜けきらない身体に鞭を打ち立ち上がる昌晃。そこに純一が駆けつける。


「何だったんスか?」


「Sランク…様だとよ」


「Sランクっスか?何処の?」


「ヒルティらしいぜ…」


「ヒルティ……シャリオでは聞かないッスね」


「多分王都だろ、Sランクらしいからな……」


昌晃がいなくなった辺りを見つめ、そう呟く。


「まぁ、要塞に戻れば嫌でも会えるっス」


「生きて戻れればな……」


魔族の脅威は去ったが未だに森の中は地獄の戦場だった。

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