ニシノ要塞防衛戦7
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「ぁぁぁぁぁぁっ!!腕、うで、うでがぁぁぁぁぁ!!」
血溜まりを作りうずくまるパーカス。激痛が正常な思考を奪う。パーカスは既に戦意を無くし無くなった腕を押さえうずくまっている。
「ふむふむ、やはり人間はこうでなくては、絶叫は甘美……そして、最高のスパイス……」
口元に笑みを湛え。魔族は自身の指に付いたパーカスの血をなめ上げる。
が、その場の誰一人としてパーカスを救出に行けない、行けないでは無く、現状不可能に近い。理由は至極簡単、それはパーカスの前に魔族がいるからだ、そのために迂闊に近づけない。
「ヤバいッスね………」
距離を取り、再びショットガンに戻した魔導石を握りしめる純一。何時しかスプーンもこちら側に来ている。
「時任君、久しぶりだね、それにこんな状況で…」
未だにうずくまっているパーカスに視線を向けてスプーンが謝罪を口にする。しかし、今はスプーンから謝罪が欲しい訳ではないし、謝罪などする必要が無い。
「気にしないで下さいっス……」
魔族から視線を放さず、一言スプーンに告げてやる。コレで少しは冷静になるだろう。が、依然としてピンチには変わりない、しかも、今度は負傷したパーカスが向こうにいるのだ、現状撤退など考えられるわけが無い。
「まさにまさにってヤツっスね」
汗が頬を伝い、背に寒気が走る。緊張、恐怖、言いようの無い感情が純一を包み込む。だが今はそんな感情に包み込まれている場合ではない、純一は一度生唾を飲み込み意を決し。
「スプーンさんは、この場で牽制をお願いするッス」
「牽制!?」
「はい、昌晃が後一分程回復にかかるので、その間は俺が前衛を務めるッス!!」
親指を立てて純一。しかしスプーンは
「でも、君は研修だよ、A級のパーカスさんがあんなになったのに、私も!!」
「スプーンさんは牽制ッス、それに魔導士は前衛じゃ厳しいでしょ?」
「でも……!!」
その時、不意に純一がスプーンを蹴り飛ばす。とっさの事にスプーンも驚愕の表情を浮かべるが、次に自分達のいたところに視線を向けると、いきなりの行為に納得。
「まぁ、そちらの作戦会議に何時までも付き合うのは何ですから!たまには意表ですかな」
手を触手のような鞭に変化させ魔族が純一達を強襲、既にパーカスに興味が無いのか、純一に対し集中的に攻撃を始める。
「さぁさぁ!!」
触手と化した両腕を振るい接近。身体向上と勘でそれを紙一重にかわしながら、ショットガンを二連射。散弾のそれを魔族は触手を素早く盾にして防ぎ、そのまま突進。だが、純一も素早く左右に体をふりながら更にショットガンを発砲。
「流石に至近距離だと厄介ですね……」
どうやら攻撃と防御、両方を行うと隙が生じるらしく、魔族の触手盾が損傷している。
「が、そこまでですがね」
口元に笑みを浮かべ、魔族は盾では無い触手を、再接近したときに攻撃では無く純一の捕縛に使う。
「!!!?」
咄嗟、反射的に攻撃と思い身体を回避させようと捻ったが、触手は回避の軸足を掴み上げる。
「うぉっ!!」
いきなりの事態、浮遊感に逆らえず気付いた時には背を地面に強打、一瞬の呼吸困難と共に再びの浮遊感。純一は逆らう事も出来きず、かなりの勢いで巨木に叩きつけられる。
「ぐはっ……!!」
叩きつけられた時には背中に衝撃が走り、激痛と共に地面へ。何とか意識を保ちながら魔族へと視線を向けるが。受けたダメージが大きく、すぐには動けない。
(く、コレはやばいっスね……戦闘不能なダメージじゃ無いっスがそれでも)
心中で身体のダメージを分析しなから、何とか片膝をつこうとした矢先。更に追い討ち。今度は顎を蹴り上げられて後方に吹き飛ぶ。
「ぐぅぅぅ……!!」
咄嗟に魔導石かオートガードを展開した為に大事には至らないが顎を蹴り上げられて、脚にきてしまう。
立ち上がれない。
「ふむふむ、ガードの硬さから魔力量はかなりのモノですが、戦闘はまだまだ……経験不足ですか?」
一歩、更に一歩。純一へと歩きながら、魔族は様子を伺ってくる。ヤバいそう解っていても満足に身体を動かす事が出来ない。
(…こう言う時の回復士ッスか……)
今更ながらに純一の頭に回復士の大切さがよぎる。だが、今は後悔だけではどうしようもない、そう思いながらも何とか視線だけは魔族に、そう思った矢先。
「炎連弾!!」
女性の叫びにも取れた声と共に、魔族に火球が襲いかかる。
「ほぉ!!」
飛び交う火球を楽しそうに眺めながら、火球を触手で叩き落とす魔族、その表情には余裕すら見てとれた。
「やっぱりこの程度じゃ……」
更に火球を展開し発動。無駄と解っていてもこのまま魔族の好きにさせる訳にも行かない。スプーンは自身の得意とする魔術を切れ間なく発動させていく。
「炎連弾!!」
再び発動。火球が無数に木々を抜い焼きながら魔族へと飛び交う。が、流石にそれにあきてきたのか。
「芸がありませんね……」
と、残念そうな表情でそうつぶやいた瞬間。
「グフッ……」
魔術を発動し、再び詠唱に移ろうとしたスプーンを吹き飛ばす。まるで鈍器で殴られたように身体を九の字におられ、スプーンは木々の合間を縫って数十メートル転がっていく。
「スプーンさん………!?」
何とか声を絞り出すものの、純一の言葉が彼女に届く事はない。絶対絶命。既に魔族に相対する戦力はここにはなかった。
「クッソ、やっと復活したのに……純一大丈夫か?」
「昌………晃……」
倒れる純一の横に立ち、昌晃が気休め程度の回復薬を手渡す。
「うぅ……苦……」
「良薬なんとやらだろ?」
純一の反応に昌晃が答える。勿論正面には魔族が余裕の表情で昌晃の登場を見つめている。
「さぁて、リターンマッチと行きますかぁ!!」
日本刀を肩に担ぎ、空元気を見せる昌晃だった。




