ニシノ要塞防衛戦6
閲覧、ブックマークありがとうございます!
引き金を引いて、爆発音が轟き、硝煙と共に焼けた薬莢がスライドから飛び出す。そして飛び出した弾丸は魔力を帯び魔族の展開した魔術障壁を。
易々と砕き突破、しかし、魔族も簡単にはやられない、身体捻り回避を試みる。が、やはり必中距離弾丸は肩口に突き刺さり肩から腕を吹き飛ばす。
「グッッ!!」
呻き声を上げながらも、すぐさま純一を捕まえようと、生き残った腕を伸ばしにかかるが、その時には圏外へと飛び退く純一。
「うはぁ、怖いッスねアレだけのダメージですぐに動くんスから!」
無駄でも一撃は持つ巨木に身を隠す純一。様子を見ながら時計をみる。
後二分半
背中にびっしょりと嫌な汗をかきながら、意識を集中する。
「かなりのダメージのはずっス、欲を言えばてっ………」
「糞がぁぁぁぁぁ、人間の分際でぇぇぇ!!」
「撤退なんてないっスよねぇ……しかも怒髪何とやらッスね……」
森に響き渡る魔族の咆哮。空気すらも震わせる声。純一の手が恐怖で震える程だ。しかし、仕事はこなさねばならない昌晃が回復するまで後二分半、何としても魔族を足止めしなければならない。
が、深手を負ったはずの魔族が、不意に笑みを浮かべると。何とも表現し難い音を響かせ、肩から先の腕を再生させる。
「…………かなり魔力を食うんだかね……」
表情は未だに苦痛の表情だが口元には笑みか張り付いている。余裕から来ているのだろうか、だが今の純一にはそれを推し量る事は出来ない。
ただ。
「バケモンっスね……」
巨木の陰、一言そう呟くのだった。
とその時、純一の気配察知が正面の魔族とは違う気配を感じ取る。魔力の感じから魔物ではない。となると旅団員か正規兵、正直、援軍なら有りがたいが今の相手を考えると不安もある。
「一人……二人……」
純一が気配の数を感じとった瞬間、その方向から無数の火球が飛来。そのまま魔族へ着弾する。勿論流れ弾も。
「うひゃあ!!」
とばっちり。魔族を捉えなかった数発が純一の方へ、流石に巨木と言えども相手は火球、着弾と同時に巨木が燃え上がる。たまらず純一も他へと走り出す。
「ちょちょちょ~仲間ならちゃんと狙ってくださいッスよぉ~!!」
着弾と同時に火球から火柱、普通の人間なら丸焼きどころではない。風で流れる熱波を腕で庇いながら純一は安全圏へと逃げる、そのつもりが現れた人物に視線が釘付けになる。
「スプーン、次弾の準備しろ!!」
「はい!パーカスさん!!」
純一が釘付けになるのも頷ける。現れたのは希望の翼の団員最近Aクラス下位魔導剣士に昇格したパーカスとBクラス中位に昇格した魔導士スプーンだった。
が。
いくら援軍と言ってもこの二人では正直、本当に正直に役不足だった。すぐさま足を止め。
「パーカスさん!!スプーンさん!!相手は魔族です、距離をとってくださいっス!!」
声の限り叫んでみる。すると、すぐにパーカスがこちらに視線を向けて。
「研修か!お前らこそ逃げろ!!」
逆にパーカスがこちらに、逃げるよう忠告してくる。しかし、純一からすれば現状やっと微小とは言え戦力が増えたのだ、ここは力を合わせて撤退したほうが賢い。
のだが、パーカスにその気は無いようで。
「この、糞バケモンがぁよくも仲間を!!」
怒声を上げ、魔導石の剣化した刀身に魔力を宿す。勿論身体向上もしているようで体の周囲にうっすらと魔力のオーラが漂っている。
「ほぉ……」
パーカスを見て魔族がほぉと感心した声をあげる。
「コレはコレは、さっきが見たことの無い武器使いでしたからアナタを見ると安心しますね」
純一の武器の事だろう。銃火器が無い世界で純一が魔族相手にぶっ放しまくったのだ、相手からすればストレスだったのだろう。その点パーカスの武器はこの世界の武器、見慣れたものに安心出来たのだろう。
「パーカスさん!!」
と、その時後方で魔術を発動させたスプーンが大声をあげ退避を促す。どうやらかなりの魔術のようでスプーンの付近からかなりの魔力を感じる。
「私の最大魔術、中級最大火力!!」
正面にかざした手、そこに炎が集まり回転をかけて収束。熱波が辺りを焦がし、それだけで魔術の威力が伺える。
「紅蓮!!」
スプーンがそう叫んだ瞬間。炎の収束体は一斉にその威力を解き放たれて魔族へと襲いかかる。
周囲を焼き空気を焼き、全てを灰燼に帰すかのようなそれは、純一ですら圧倒的な威力に見えた。
「これが中級魔術……」
まだ上級、超級があると解っていても実際みる中級の火力は凄いの一言に尽きる。
しかし。
「…ふむふむ、中級魔術ですか、これはこれは…中々の威力に精度、しかし」
そう言って魔族が再生した片腕を突き出した瞬間。シュボッ、そう音をたてて炎がその姿を消す、後に残ったのは何事も無かったように立つ魔族。
「私を焼き消すには火力が足りませんな…」
ニマァと笑みを浮かべ、余裕とも取れる言葉。逆に渾身の魔術を捻り潰されたスプーンは呆然としている。が、それを機ととったパーカスが剣を構えて突進。身体向上の掛かった身体は通常の数倍のスピードで魔族へと襲いかかる。
「ウォォォ、魔族がぁ!!」
未だに構えすらとらない魔族。視線は魔術を放ったスプーンの方に向いている。
「がら空きだぁぁ!!」
体勢を低く、下段から魔力を帯びた剣が魔族に。
「ふむふむ……中々どうして」
と、完全に回避不能に思われた瞬間。魔族の視線だけがパーカスに向き。
交錯。
ほんの瞬き一回分程の時間だったが、パーカスが剣を振り切り、魔族の背に抜け出した瞬間。
腕と剣が森をスローモーションの様に舞う。
そして。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
パーカスの絶叫が森に響き渡るのだった。




