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ニシノ要塞防衛戦3

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「魔族がいるのは確定ね……」


壁門上、作戦室から移動した各幹部達は全面の森に発生した異常な魔力量とそれに伴う転移を確認して、魔族の存在を結論づける。


「このタイミングかよ……」


「ゲオルグ、ウチの部隊はどの位要塞に残ってるかしら?」


「まさか、救出に向かう気か?」


「あの状況は不味いわ……」


「しかし、君はこの要塞にいる虎の子Sランクの一人だぞ……」


既に歩き出したフランチェスカ、それを追うゲオルグ。周囲の視線などお構いなしだ。


「冷静に……」


「ゲオルグ、残留部隊は?」


冷ややかな視線。普段の温和な彼女からは想像も出来ない、旅団長としての一面。それに気圧されながらも。


「お、落ち着け…残留部隊はジョガーの第一部隊だが……」


「そう、ならジョガーに出撃準備をさせて……」


「フランチェスカ、軽挙妄動は……」


「何度も言わせないで、私は仲間の窮地を……」


そこまで言ってフランチェスカの前に総隊長が立ちはだかる。


「イーグレット君、その出撃は許可出来ん」


「何故……と、聞くのは野暮かしら?」


「野暮……か、確かに現状、敵に包囲された友軍は絶望的状況と言えるだろう」


「なら、Sランクの私が救援に出るのが筋では?」


フランチェスカが最もな事を口にする。しかし、総隊長は首を左右に振り。


「それが魔物達の目的だとしたら?」


今度は総隊長が質問で返す。そして、少しの沈黙の後。


「確かに、魔族の関与が確定的な今、Sランクを釣り撃破するのが目的、そう言えるかもしれない……」


そこまで言って口を紡ぐ。


「なら、解ってくれんかな?現状出撃している部隊には酷かもしれんが、Sランクはそれほどまでに貴重なのだよ」


総隊長はフランチェスカの肩を叩き、壁門上、前面の森が見える場所に戻るように指示する。

勿論、今彼女がそれを拒否して出撃しても誰もが彼女を責める事は出来ない。しかし、その先に待つ未来を予想したときフランチェスカに出撃と言う二文字を躊躇させた。


それは自分かこの出撃でもし死ぬことがあれはニシノ要塞の向こうの街や村、そしてシャリオも只ではすまないのだから。


「………ごめんなさい」


旅団長とは感情だけでは動けない立場でもあった。




ニシノ要塞前面森林区


「おいおいおいおいおいぃぃぃぃ!!」


研修とは言え現状の異常さは嫌と言うほど認識出来た。その証拠に先程まで逃げの一手だった魔物達が一点攻勢に転じたのだから。


「どの位危険か言うっすか?」


と、純一。それを見て昌晃がコクリと頷き。


「霊園の墓石の上飛び回るヤツくらい危険やぞ!!」


純一のドヤ顔。戦闘中とは思えないほど弛緩している。


「まぁ、色んな意味で危険やけど、現状と比べるかそれ……」


「確かにっすね……」


森の中。巨木に背を預け、て二人がほんの少しだけ休息をとる。それにしても状況は最悪。どうやら敵の増援が会ったようで、先程から魔物の攻勢が激しさを増している。


「他の旅団員は?」


「さぁ、現状まだ声が響いてますから戦闘中だと思いますけど……かなりやばいんじゃないっすかね?」


腰の水筒に手をやり喉を潤す。そのままタオルハンカチで汗を拭き、エージェント風の黒スーツの襟を正し。


「さて……行きますか……」


ため息と共に銃化した魔導石のスライドを引く。弾丸を薬室に籠め。視界の悪い森を走り出す。走り出すと同時に現れたのはゴブリンの強化版、アーマドゴブリン。鉄の鎧を装備したゴブリンで強さも若干ゴブリンを上回るだけ、その程度ならば二人の敵ではない、木々からの奇襲だったが着地したところを銃撃。


昌晃の拳銃弾はゴブリンの装甲を貫き。純一の散弾はゴブリンの頭部を兜ごと吹き飛ばす。


「ショットガン、パ無いな!?」


「確かに、対人戦には向かないっすね……グロ耐性ないっすから…」


ゴブリンの頭部か吹き飛んだ死骸を見て餌づいたポーズをとる二人。勿論その間も襲撃は続く。


「質より量で押すつもりか!!」


更に数十のオークが接近。身長二メートルを越す巨躯を武器に、森のスペースを埋め尽くす。


「くぁぁ、デケェんだよボケッ!!」


魔力で作成した拳銃弾を浴びせ、昌晃か暴言を吐く。浴びせた先から死体の山が築かれるが、それを魔物の物量が上回る。


「キリが無いっすよ!」


次第に数に押され始め、純一達もジリジリと後退を始めるが。



後方からも来るぞ!!


どこからともなく聞こえた声を耳にして足を止める。


「純一!?聞こえたか?」


「ヤバイっすね、この状況どうやら数で包囲してるみたいっすね……」


森で見通しが悪く先の状況も解らない、解っているのは現状増援の期待は薄いと言うことだけ。


「全問の虎校門の狼っすかね……」


「今言った漢字違うのな……」


純一の言葉に補足する昌晃。周囲ではいつしか友軍の悲鳴が多くなりはじめていた。



某所


(……ペシャールか?)


「あぁ、どうやら上手くいったみたいだな?」


(ウム……人間共の兵が森に進撃したのを確認して転移、包囲している)


「そうか、しかし奴らには切り札がいるからな、油断はするなよ」


(解っているは、そのために我が同胞を送り込んだ……)


「仲間?」


(…あぁ、我には劣るが戦い方如何では奴らの最大戦力にも匹敵する同胞をな……)


どこからともなく聞こえてくる呻きにも似た笑い声。それを耳にしながらペシャールと呼ばれた黒ずくめの男は切り立った崖からジッと戦場を見下ろし。


「そうか、ならば魔族様のお手並み拝見だな」


そう言ってペシャールは口元に笑みを張り付かせるのだった。

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