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ニシノ要塞防衛戦2

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駆ける。


泥臭く、と言う表現が一番しっくり来るほど泥臭く昌晃が戦場を駆ける。すぐ後ろでは背を守る様に純一がショットガンで応戦している。


ドンッ、シャコンッ!ドンッ!


ポンプアクションのショットガン。魔力で弾丸を形成するために、易々とは弾切れを起こさない。純一は四方に意識を向けながら昌晃の援護を続ける。


「じぇぇぇぇいっ!!」


迫るオークを一刀の元に斬り捨て。返す刀で更に迫るオークを斬り伏せる。上空から襲いかかって来るハーピーは純一のショットガンが至近距離で迎撃。散弾の攻撃が蜂の巣にしていく。


「乱戦だな!」


手を休めずに周囲に視線を巡らせる。周囲では四人一組や二人一組になった旅団員たちがオークやハーピーと激戦を繰り広げている。


「クリスちゃんやパーカスさん、スプーンさんは大丈夫っすかね?」


と、不意に三人の名を口にする純一。それを聞いた昌晃は。


「まぁ、大丈夫だろパーカスさんは近接戦闘ならかなりのモンだしスプーンさんも最近は全体を見渡す視野も出来てきてるるらしいし、それにあのクリスのジャリがいるんだ、そう易々とはくれないだ……ろっ!!」


そこまで言って再び刀を振るう。と、オークの深緑の血が宙に舞う。


「それよりも、今は目の前に集中だ!!」


戦場は未だに敵味方入り乱れて乱戦状態。そのために一息すら入れる暇がない。


「にしても、エグいなこれは……まだ吐き気がするよ……」


乱戦、特にゴブリンと正規兵の戦闘が凄まじく、互いに食いつぶし会うように戦闘を行っている。


「ギルドの任務とは訳が違うな、姉御はコレが言いたかったのかもな……」


未だに胃の吐き気と戦いながら、日本刀を振るう昌晃。周辺にはオークとハーピーの死骸が積み重ねられていく。


と。


「魔物が引いていくぞ!!」


そう誰かが声をあげる。その証拠に、何かに操られるかのように魔物達が要塞前面の平原から森の中へと撤退していく。


「糞が、追えっ!!」


戦場の雰囲気と興奮し高ぶった感情から誰かが追撃の声をあげる。だが森に入るのは防衛側にとっては無策としか言いようがなかった。


が、しかし。


「追え追えっ!!」


「追撃だ!!」


予想以上に敵の撤退の速さと、魔物達の安易さにコチラ側の兵士達は興奮した意識を抑えられず。



ここで押し返せれば……


と、言う根拠の無い幻想にかられる。


「まて、これ以上の追撃は不要だ!!」


正規兵指揮官が馬上からそう告げるが。統制のとれない幾つかの旅団が森へと突入。それを見た末端の正規兵達も我も我もと森へと進入を開始する。




城壁上


「ど、どうなってる、何故森に!」


「糞、このままじゃ射程外だ!」


「それ以前に森で姿が見えず支援魔術を放てません!!」


城壁上で味方を見守り支援魔術を放っていた正規兵、旅団員達が前方の行動を見て混乱する。


「兎に角、後退の信号弾を放て!」


指揮官らしき男が部下にそう告げる。




前線


「くそ、どうなってんだよ!!」


完全に暴走しているとしか言いようがなかった。前線、誰かが追撃を口にした途端にこの体たらく。何時もならこんな深追いあり得ないのだが今回は違っていた。


「昌晃、正規兵本隊も森に進撃を開始してるっすよ?」


「あぁ、どうなってんだよ……」


前線の暴走が理解の範疇を越えてしまい、ただ事の成り行きを見ているしかない二人。その間にも森の中では怒声を含んだ友軍の声が響き渡る。


「兎に角行くしかないだろ……」


日本刀を肩に担ぎ、昌晃と純一は友軍に続く為に森の中へと入っていくのだった。



ニシノ要塞 作戦室


「馬鹿な、アレほど深追いはするなと言い含めたはずだぞ!!」


伝令からの状況報告を聞き。ニシノ要塞防衛隊、総隊長が激怒の声をあげる。


「確かに……森に入ってしまったら魔術支援が出来なくなる……」


「だが、何故無理な追撃を………何時もなら考えられない」


会議参加の正規軍、各旅団幹部達が首を傾げる、が。


「多分……今回はコチラ側を釣るのが目的では無いかしら?」


と、首を傾げる中、希望の翼団長のフランチェスカが言葉を発する。


「釣る?」


直ぐに反応したのは総隊長。だが、フランチェスカの言葉を理解したのは、同じく旅団フローダの団長ゼスだった。


「そうか、その為に今回はワザと、魔物共の数が少なかったのか!?」


「絶対にとは言えないけど、ここ数ヶ月間の魔物の統制された動きを見れば、あり得ないとは限らない……」


「そうなると……誘き出された前線軍は……」


「かなり不味い状況じゃ無いかしら」


「くそ、なら増援を……」


「送るのは無理よ、そうでしょゲオルグ?」


と、フランチェスカが、同旅団副団長のゲオルグに声をかける。すると、ゲオルグは思案した後、ゆっくりと首を縦に振り。


「団長の言うとおりだ、今まで要塞防衛にあたっていたメンバーは解ると思うが、増援に出す余剰戦力は無い……」


解っていても言い出し辛い言葉。だが、これまで防衛戦に参加していたメンバーなら現状は理解てきた。


今、この状態で戦力を割く事が出来るほど余剰戦力が無いことを。


「くそっ……」


誰ともしれない言葉が、半ば絶望に包まれた作戦室に木霊するのだった。



ニシノ要塞前面森林


「純一!!」


「了解っす!!」


両者共に武装を火器へと変更し、迫る魔物と戦闘を繰り広げる。


周囲では各旅団、正規軍が各々に追撃戦を繰り広げ統制すらとれない状況に陥っていた。


「何か森に入ってから更に状況が悪化してねぇか?」


周囲に視線をやり昌晃。


「確かに、指揮官の姿も見当たらないっすからね」


既に森での追撃戦が始まって十分以上。魔物共は散発的に戦闘を行っても、その殆どが森の奥へと撤退を続ける。


「何かヤバイ空気だな……」


現状をそうとらえる昌晃。しかし、それは他の兵士や旅団員達も同じく次第に違和感を覚え始める。が、そんな違和感を感じ始めたとき、違和感が違和感ではなくなり。



地獄が始まる。

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