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ニシノ要塞防衛戦 1

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「魔導士隊、魔術攻撃準備!!」


壁門の上。そこに正規兵、旅団員、その魔導士が入り乱れ、統率者の号令で一斉に魔術の詠唱にはいる。目標は接近する五千の魔物。全員が範囲魔術を発動させ、目標を定めていく。


「いいかぁ、範囲魔術の後、壁門から戦闘部隊が出撃魔物を蹂躙する、そのためにも後方支援は必要だ確実に敵を減らせ!」


統率者の手が城壁の外側、魔物側に向けられた瞬間。様々な属性、様々な色が明滅して、魔術攻撃が始まる。



「おぉ、始まったなぁ、いつものヤツ!」


壁門前に整然と並ぶ正規兵の後方、無法者の集団の様に、雑然と集結する様々な旅団の旅団員。その一人がそんな事を口にする。



「と、何時もこんな感じなんっすか?」


と、それを近くで聞いていた純一が、近くにいた希望の翼の旅団員に質問する。


「まぁな、何時も魔導士の魔術攻撃で派手に始まるからな………」


と、旅団員の男がそう言った瞬間、耳をつんざく破裂音や爆音が壁門の向こうに響き渡り、先程と変わらない地響きが辺りを襲う。


「こ、コレは想像以上っすね……」


何時も通りの狙撃銃を握りしめながら、壁門上の魔術光を見やる純一。その間も魔術攻撃は続けられる。


「集団戦か………」


と、あっけらかんとした純一とは別に日本刀を握り締める昌晃は、何故か落ち着かない様子だ。


「珍しいっすね昌晃?」


「な、何がだよ!?」


「緊張してるっすよ?」


ニヤリと口元に不適な笑みを浮かべ、日本刀を握り締める手を指差す純一。差された昌晃は少しばかり動揺して。


「こ、コレはアレだよ!!」


「アレ?」


「武者震い………」


「またまたぁ、緊張してるんっすよね!」


「いや、だから………」


「おい、研修君達!!」


と、昌晃と純一のやりとりに水を差すのは先程の希望の翼の旅団員。と、声をかけられたと同時に、魔術攻撃の音が一切しなくなり。




開門っ!!


壁門の衛兵が絶叫のような声をあげ、同時に壁門が開放される。


先ずは正規兵。


後方に各旅団。


そして、魔物の討伐戦が始まる。



「正規兵、各旅団員へ深追いは禁物!魔術支援の範囲内をしっかりと把握しろ!」


どこからともなく声が挙がり、上がった直後今度は正面最前列の正規兵が次々と戦闘状態へと突入する。

絶叫、絶叫、怒声、罵声。声にならない声が戦場を覆い尽くす。それは戦闘の開始の合図ともとれた。


「旅団フローダ各員!正規兵の右翼を回り込め!」


「フローダに遅れるな!野郎共、左翼から森に回り込め!!」


「支援範囲外に気をつけろ!!」


目まぐるしいぐらいの動き。色々な意味でパーティー規模の動きしか経験したことの無い昌晃と純一は、一瞬とは言え戦場の雰囲気にのまれてしまう。


「研修!俺達は正規兵の後詰めだ、張り付くぞ!」


各旅団が戦場を駆け回り始める。ある旅団は両翼から魔物を、ある旅団は遊撃隊と化しはぐれを狩っていく。そんな中後詰めとなった希望の翼にはまだ槍働きの機会は訪れない。


「ヤバいな……!」


「た、確かに、これは何時も以上っすね……」


前面正規兵の動きと声を聞きながら、二人は初の戦場の空気を感じる。兎に角、ヤバイ。この一言しか出てこない。


「ヤバイヤバイ……何じゃこりゃ……」


「グダグダとは違う、何か形容しがたいグチャグチャの感じっすよ!」


昌晃と違う方向を直視しながら戦況を見守る純一。現状はどうやらこちらの優勢のようだ。


「正面、ゴブリンの集団!!」


「前衛、槍構え!!」


ゴブリンの突進を槍衾で迎撃。最初の激突で先頭のゴブリンが次々と串刺しになっていく。


「さあ、来るぞ!!」


正規兵指揮官の男が、馬上から剣を構えそう言った瞬間、槍の串刺しになったゴブリンを飛び越え、後続が襲いかかって来る。


「槍隊後衛突けぇぇぇ!!」


前衛の隙間を縫い後衛の槍隊が飛び越えてきたゴブリンを串刺しにする。勿論それでも更にその後方のゴブリンが波状攻撃で突進を続けて来る。


「抜剣!!」


指揮官が声を荒げ槍隊の後方の剣士隊に抜剣を促す。そして。


「蹴散らせぇぇぇ!!」


怒号と怒声。そしてゴブリンの雄叫びを混じらせて戦場が戦場へと化していく。


ゴブリンの首が跳ね飛び。正規兵の喉元にゴブリンの石槍が突き刺さる。

乱戦が乱戦を呼び。互いに次から次ぎへと戦力を投入する。


ウォォォォォ!!


戦場を埋め尽くす声を聞きながら。後詰めの旅団員達は戦闘準備を始める。


「研修君達、そろそろ敵の新手が来る準備をしとけよ!」


希望の翼の旅団員の男が昌晃と純一に戦闘の準備を促す。


が。


ナンダコレ………


頭の中に疑問を問う声。昌晃は正面の惨状を見て動揺混乱してしまう。確かにこの3ヶ月任務で旅団員が怪我をするシーンは見てきた。しかし、目の前のそれは昌晃の想像をはるかに越えていた。


そして。


「昌晃、大丈夫ッスか?」


そう言って、純一が肩を叩いて来た次の瞬間。


ゴェェェッ…


胸の焼ける感触と共に吐いてしまう。


「昌晃!?」


いきなりの事に純一が昌晃の背をさする。だが、それでも吐き気は止まらない。すると。


「おい、大丈夫か研修君の片割れ?いけるか?」


見かねてこちらに声をかけてくる。が、しかし。


「新手だハーピーとオークの集団、後詰め旅団は戦闘準備!!」


後詰めの旅団員が叫ぶその瞬間、旅団員達が各々の得物を手に正規兵の脇を駆け抜けていく。


「糞、ビビり過ぎだ俺は!!」


吐き気を何とか抑え、昌晃が声を荒げる。勿論近くでは純一が狙撃銃でハーピーを狙撃していく。


「昌晃、無理は……」


「無理じゃねぇんだよ、やるんだよ!!ビビってられるか!」


自分の頬を張り。口元を拭い。


「純一、行こうぜ!!」


日本刀を握り締め、走り出す。純一も狙撃銃をショットガンに形状変化させ後に続く。


ニシノ要塞防衛戦、1日目が始まる。

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