ニシノ要塞防衛戦 シャリオ草原の戦い
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「はぁ~、アンタが相手?」
淳の言葉に対して黒ずくめが呆れた様に声をあげる。
「はい、勿論アナタが諦めて帰ってくれるなら話は別ですが?」
苦笑しながら淳はゆっくりと遠慮がちに視線をむける。が、その目は真剣そのもので冗談の類は含まれていない。
「………研修って相手との力量差も解んないの?それとも自殺志願者のつもりぃ~」
言いながら黒ずくめは地面に倒れるマリアを踏みつけ。
「まぁ……いいやぁ~どうせ残った時点で殺すの確定だしぃ~」
「そう…ですか…でも、残ったから殺されるつもりは毛頭ありませんが……」
いつもの口調。しかし、その内二ジワリと怒りを滲ませ。
「その汚い脚、どけましょうか?」
ゾクリと背中を刺すほどのプレッシャーを浴び、黒ずくめは破裂音と共に攻撃を受ける。
「!?」
先程も受けたいきなりの攻撃、咄嗟に危険を感じ黒ずくめは後方に飛び退く。
「変な形の魔導石………」
フードの奥。警戒感を露わにしながら、黒ずくめはスッと戦闘態勢をとる。
「やっぱり避けられませんか?」
スーツの襟を正し、淳が黒ずくめに再度問う。
しかし。
「バっかじゃないの、死ぬのはアンタ……命乞いしても………殺す!!」
強烈な言葉を吐き出し黒ずくめが飛びかかってくる。勢いなんて言葉は生易しく。全てを弾き飛ばす程のスピードで淳に肉迫。マントから取り出したナイフを突き出す。
「くっ……」
呻きながらもバックステップで攻撃を回避。勿論黒ずくめも更に追いすがり追撃を加えてくる。
「きゃは、ちょっとぉ~この程度でくたばらないでよ、何たって大魔導士の騎士様なんだからさぁ~」
「それはそれは……まぁ期待に添えるように頑張りますよ!」
身を最小の動きで。そのまま淳は魔導石を拳銃に変換して、更に発砲。超至近距離でありながら相手は。有り得ないスピードで眼前の弾丸を回避。何事も無かったかのように自分のターンへと引きずり込む。
突き突き突き
回避されても気にもとめず、黒ずくめは余裕の笑みを口元に貼り付けナイフを突き出す。
だが。
それは淳も同じように見えた。
「攻撃が単調なのは、アナタも同じなのでは?」
「はん、言ってくれるじゃん、なぁら!」
突き出したナイフをさっと横に薙いで変化をつけ、一瞬の間を利用して十メートル程後方に飛び退く。
勿論、追撃とばかりに淳も狙いを付けて発砲するが。強固な魔力防壁がそれを阻む。
「てかさぁ~、コッチわぁ~、まだ魔導武器すら使って無いわけぇ~、この意味わかるぅ~研修君に!?」
未だに余裕の黒ずくめ。多分その下は汗すらかいてはいないのだろう。すると、手に持っていたナイフを。
投擲。ビュッと風切り音が響き何の躊躇いも無く淳へ。いきなり事に多少なりとも反応が遅れた淳。だが、その一瞬が。
「甘いしぃ~研修!!」
死角から潜り込まれ、拳銃を持つ右手首を掴まれると、そのままグイッと黒ずくめの方へ引きずられ。為すすべ無くバランスを崩し。
「ダッさ!!」
罵声と共に右わき腹に鈍痛。魔術衝撃だった。
「くっ……!!」
衝撃に表情を歪める淳。黒ずくめはそれを確認して歯を見せ笑みを浮かべると。動きの止まった身体に更に三発の魔術衝撃を打ち込む。
流石に防御が遅れ、無防備に攻撃を受けるとマズいと思った淳は、追撃分の攻撃に対してギリギリで防御障壁をはる。そして衝撃。鈍痛が身体を突き抜け一瞬の吐き気を感じたその時。掴まれていた手首を離され、壊れた人形のように地面を転げる。
「ダッサ、ダサダサ!!今の攻撃位反応してよぉ!」
嘲る笑みを浮かべ、黒ずくめが見下した態度をとる。
(今のは……なかなか……)
数十メートル転がり、転がりきった所で草原に倒れ込みダメージを確認する。
(一様……致命傷ではありませんが……)
それでも痛みが抜けず、ジンジンする痛みを無理やり意識の外に押しやり、立ち上がる。
「まぁさぁ、今ので終わってたら何のためにいるのか解らなくなるよねぇ~、それにアンタかイーグレットの代わりするんでしょ?」
相変わらずの上から目線と余裕の口調。淳以外なら確実に怒りを露わにするであろうそれを涼しげに微笑を浮かべ。
「………ですね」
それだけ言って、スーツの埃を払い、黒ずくめに相槌をうつ。
「…………てかさぁ~、アンタおされてるのに冷静だよねぇ?」
淳の態度が気に入らないのか黒ずくめが少し苛立った声をあげる。
「…はぁ、まぁなんです、相手のペースに別段合わせる必要は無いですし……」
今度は膝の埃を払う。
「だぁかぁらぁ、実力差!!」
「はぁ、ですからまだ解りませんよ……」
黒ずくめの言葉に続けるように言葉をかぶせた刹那、意表を突く飛び出しと共に今度は淳が飛び出す。勿論武器は。
「剣と盾!?」
黒ずくめにとって不可思議な飛び道具が、何時もの見慣れた武器に変わっている。だが、淳にとってはその意表だけで十分だった。
咄嗟に反応が遅れ黒ずくめが飛び退くが、淳の切っ先がフードを切り裂く。ダメージには至らないがフードの下の素顔が白日に晒される。
「うっ……」
フードが裂かれ素顔を晒したのは高校生くらいの少女だった。
「油断……マジあり得ないんですけどぉ」
虚を突かれたとは言え少女にとっては屈辱意外の何物でも無かったのだろう、今まで張り付いていた笑みが消えている。
「それにしても案外面白くなってきたじゃん、アンタの魔導石ってなに何か細工してんの?」
「細工?」
「当たり前じゃん、魔導石は一度とった形状を変えることは無いんだから、それがコロコロ変わるなんてさぁ、アソコで寝てる大魔導士様の細工ぅ?」
淳の武器を指差し、少女は更にマリアを指差す。どうやら魔導石が形状を変えるのが相当に変わっているようだ。
「いえ、コレは受け取った時からこういった仕様ですよ」
淳にとって当たり前のそれを構えなおしながら、少女にそう答える。
「へぇ~、まぁいっか、アンタ殺してそれを見てみれば良いんだからさ!!」
再度少女の攻撃が始まる。




