ニシノ要塞防衛戦 不慮の転移
閲覧ありがとうございます!
ヴォバックにおいて転移とは最も優れた移動手段である。しかし、転移は通常の魔導士には使用出来ず、時空魔導士のなかでもほんの一握りしか使用する事が出来ない。
勿論使用したとしても魔力の消耗が激しく、日に二・三回が限度である。
だが現在この場にいる大魔導士マリア・レイヴァンスは違った。彼女はその余りある魔力を発揮し。先ほどから数回に渡る軍団規模の転移をおこなっている。
「ふぅ、流石にこの私でも複数回の大規模転移は堪えますの……」
額に汗を浮かべ、マリアは次の詠唱にかかる。が、それを見ていたフランチェスカは。
「マリア、いくらの貴女でも休憩をはさみましょう、後は私たち希望の翼だけなのだから……」
心底心配して声をかける。しかし、かけられた本人はゆっくりと額の汗を拭い。
「大丈夫ですのよフラン……結局のところ私の出番はここまでですの」
「それでも……」
「フランは変わりませんわね、昔から人の心配ばかり……でもそれが人を引きつけますのね」
「マリア……」
「任せなさいですのよ、これでも大魔導士と呼ばれた女ですの、それに………」
そこまで言って一瞬だけバランスを崩すマリア、やはり数度の大規模転移は堪えるようで、言葉と表情のギャップが大きくなり始める。
「やはり間をおきましょう!」
身体の疲労度を鑑みて一度詠唱を中断させようと歩み寄ろうとするが。その瞬間旅団全員の周囲が薄ぼんやりと発光を始める。
「さぁ、問答の時間はありませんのよ、フラン後は任せましたの……」
疲労の表情に精一杯の笑みを張り付かせ。詠唱の最終段階。
と、その時。
「アンタらが素直にニシノ要塞に行かれるのは、正直困るんだけどねぇ~」
どこか現れたのか黒ずくめ。目深に被ったフードからは不適な笑みが張り付き。
トスン……
不意にマリアの腹部に何かが突き立てられる。
「大魔導士様も、大転移の詠唱中は無防備みたいだねぇ~」
黒ずくめが口元の笑みを更に深く刻む。が、転移魔術は既に魔力を流しきった後で転移状態へ、その証拠に魔力光は更に輝きを増す。
「大……魔導……士レイヴァンスを……舐めないで欲しいですわね……」
今度は阻止に失敗した黒ずくめを嘲る様に勝ち誇った笑みを浮かべるマリア。腹部からは血が流れ、地面に倒れ込む。
「この、糞ビッチがぁぁぁ!」
転移の魔術光が最高点に達しようとしたとき、黒ずくめのもう一本あったナイフが振り上げられる。
「マリア!!」
「姉さん!!」
「姉御!!」
「マリアさん!」
「フラン……アナタは……要塞に絶対に必要な存在ですの……だからいくですのよ!」
今まさにナイフが振り下ろされた瞬間、マリアが声を上げ、魔術光は収縮する。
(大魔導士と呼ばれてもこのザマですの……)
心中で呟き目を閉じ覚悟を決めた時。
パンッ!!
破裂音が草原に響き渡る。
ニシノ要塞周辺
魔術光が全員の視界を奪い、次に収まったとき。希望の翼のメンバーは。
「どうやら……座標指示を失敗したみたいね……」
冷静に状況を分析したのはフランチェスカ。直ぐに周囲の団員に点呼をとり無事を確認する。そして。
「研修生の3人も無事かしら……」
そう言って、団員とは少し区分の違う三人に語りかけてくる。が。
「団長さんよ、何で姉御を見捨てた!」
いきなり食ってかかる昌晃。だが、反論したのは。
「いい加減にしなさい、藤堂君!」
マリナだ。マリナはフランチェスカの前に立ちはだかる。
「何でだよマリナさん!姉御がやられたんだぞ!」
「そうであったとしても大局を見なさい!今は要塞防衛が最たる任務なの」
「だけどよ!」
「聞き分けなさい!!」
昌晃の言葉を一蹴、それ以上の問答をきる。
「なら……」
「昌晃、ここまでっすよ」
マリナに食い下がろうとする昌晃を、純一が止める。確かにこんな所で何時までも問答するわけには行かない。
「糞っ………」
まだ納得出来ずに舌打ちする昌晃だった。
シャリオ草原
魔術光が完全になくなり、そこに残ったのは瀕死のマリア、黒ずくめ。
そして。
「アンタだれぇ~?」
弾かれたナイフを眺めながら、黒ずくめはフードの下の口元の笑みを消す。
「まぁ、無理だけどぉ~、出来ればイーグレットが残ってくれるとねぇ~、てかさぁ、アンタどこの三下なの、コッチのリストに載ってないって事は希望の翼の団員じゃないでしょ?」
「はぁ、団員ではありませんが一様研修生をさせてまらってます」
「研修?はぁ~?馬鹿にしてんの?」
「馬鹿にはしてませんが、研修では不満ですか?」
黒ずくめの不満に苦笑いを浮かべ軽く頭を下げる青年。
「不満なんてレヴェルじゃ無いでしょ、たまんないよ、戦力を削れないじゃぁん、研修残すなんて捨て駒じゃぁん!!」
だだをこねる黒ずくめ。それをじっと直視しながら青年は少しだけ表情を曇らせる。
「何?何か文句ある?」
黒ずくめが青年の態度に苛立ちを見せる。すると、青年は。
「すいません、団長はお忙しいので、役不足でしょうが僕……」
軽く頭を下げて微笑。そう、そこにいたのはスーツを着た地球で言うエージェント風の青年。
「千鳥 淳がお相手致します」




