ニシノ要塞防衛戦 ヴォバックへ移動
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7月最終週 地球側事務所
今日から大学初の夏休み。楽しい思い出とひと夏の出会いが。
「あると良いなヴォバックで………」
どこか遠い目、というよりは寝ぼけ眼で昌晃は朝6時の空を見つめる。
「遠いですよ、昌晃……」
勿論淳も。
「……………ッスね」
そして、純一も。
「ちょっと、たかだか朝の6時ですのよ、何寝ぼけてますの!!」
ちなみにマリアはそんな三人にご立腹。
「姉御………せめて夕方の6時にしようぜ………」
「何を仰いますの……ヴォバックでは今もシャリオに続々と増援の正規軍や旅団が集まっていますのに、シャキッとなさいな!!」
「ですが………」
「ですがもしかしも無いですのよ、さぁ!!」
まだ、二十歳過ぎ位だろうマリアが、三人のお袋さんに見えるのは何故だろう。そうどこかで思いながらも。
「マリアさん……あんまり朝からカリカリすると………」
「すると………?」
「老けますよ………」
「淳、寝ぼけて毒を吐かないでくださいまし!」
と、未だ遠い目の淳を怒鳴りつる。そして、大きくため息をつき。
「さぁ兎に角、無駄話はここまでにしてシャリオのギルド事務所に行きますわよ」
呆れながらもどこか真剣に、マリアは自信の小さく纏めた荷物を持ち上げ、ヴォバックとのゲートになっている、何の変哲もない扉に手をかける。
「さぁ、行きますわよ!」
7月最終週、夏休みの始まり。
そして、昌晃達にとっては冒険者としての忘れられない約2ヶ月となる。
チルダ王国西方国境某所
深い森の奥のその一角。誰にも気付かれない様な場所。鬱蒼とした森がいきなりえぐり取られ、数百メートル四方の原っぱの中央にそれはあった。
屋敷。
華麗や煌びやかという表現はし難い、それでも威圧感や迫力と言った言葉で表現出来るそれは、何故かそこに建っていた。
「ペシャール様?」
と、そんな屋敷入り口。豪勢な扉の前に、二つの黒ずくめ。
「………どうかしたのかミラーナ?」
呼ばれた長身の黒ずくめは、感情の籠もらない声で相手に何事かと聞き返す。するとミラーナと呼ばれた多分女性であろう黒ずくめはペシャールとは正反対の抑揚のある声で。
「現在、魔物の軍勢はニシノ要塞に接近、近日中に城塞に張り付き、攻城戦を開始するとのことですよぉ」
と、あっけらかんとした口調で報告する。
「そうか………引き続き監視を頼む……」
「はいはいはぁ~い、それとぉペシャール様ぁ?」
「……ん?」
「どうやらぁそろそろぉ、旅団の冒険者にSランクが入ってくるらしいんですけどぉ~」
そこまで言って黒ずくめのミラーナと呼ばれた方が、ペシャールに上目遣いを使って何かの許可を求める。勿論フードを目深に被っているため表情は読み取れない。
が。
「まぁ、程々に……な」
「はいはぁ~い、了解ですぅ~」
と、ペシャールはそれ以上何も言わず一人屋敷の中へと入っていく。
…………
屋敷に入り皆が想像するような光景が広がると思わせ、しかし、ペシャールの入ったそこには何もなかった。ただ言えるのは。
闇。
一面に広がる漆黒の闇だけだった。
「…………」
(ペシャール……か?)
闇の中、頭の中に直接響く声に意識を集中しペシャールはどこでもない場所を見つめる。
「どうやら、身体の定着は上手くいってるようだな……」
(まぁな、まだ完全ではないがこちらの軍勢が要塞を陥落させる頃には定着するだろうな……)
「そうか……」
闇の中、どこにいるかもわからない誰かに頭の中で語りかけながらペシャールは会話を続ける。
(現状はどうだ………)
「順調そのものた、だが……」
(だが………何だ?)
「少々奴らの増援の中にやっかいなクラスが混じりそうなのでな、その時は不完全でもでてもらうぞ……」
(ふむ…まぁ我が軍団が敗れる事は無いだろうが、もしそうなれば………な)
闇の声はそう言って静かに笑う。勿論それを聞いてもペシャールはニコリともせず。
ただ。
「任せたぞ……」
と、それだけ伝えその場を後にするのだった。
チルダ王国 シャリオ ギルド事務所
扉の先は魅惑の異世界。
では無く。地球以上の喧騒でした。
「何かごった返しっすね」
扉をくぐり抜け、最初の光景に純一が声を上げる。いつもはもっと広く感じるホールが今日は人人人で溢れ返っているからだ。
「旅団関係の方々でしょうね」
「だな、なぁ姉御……姉御?」
と昌晃が最後に声を上げ、マリアに何かを聞こうとしたとき、そこに姿はなく。
「私は支部長に会ってきますの、三人は希望の翼の拠点にいってくださいまし!」
そう言って投げキスとウインクを一つ、マリアは喧騒の中に消えていく。
「行っちゃいましたね……」
「だな……」
「仕方ないっすね、ロックフリー酒場にいきますか?」
そう言って、これまた三人も喧騒を掻き分け外へむかうのだった。
ギルド支部長室
「すまないなレイヴァンス……」
「構いませんのよ、でも私が転移させないといけないなんて、相当逼迫してますのね……」
呆れた訳では無いがそれでもマリアは余裕を崩さない。
「まぁな、正直ニシノ要塞の総隊長は良くやってくれている……が、如何せん敵が多すぎる……」
自身の執務机に手をつけ、歯を食いしばる。勿論それを見ていたマリアは。
「そのためのSクラス投入なんですのよね?」
と、一様支部長の顔をたてるかのようにSクラス投入の功績を伝える。
「そうだな……」
言われて自嘲気味に笑う支部長。
「まぁ良いですの、それよりも部隊の転移順を教えて下さります?」
「あ、あぁ、そうだな第一陣は……_」
と、話題を切り替え、二人は今後の予定を折衝し始める。




