大攻侵!!
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チルダ王国西方国境
「「「わぁぁぁぁ!!」」」
「糞っ、増援はまだか!?」
「ボル隊長、我が隊の損耗率が3割を超えました!!」
「友好国側の警備隊は!?」
「善戦はしていますが、こちらと同じかそれ以上の損害かと………」
「……解った、貴様は情報を常に集め続けろ!」
ボルはそう言って兵士を走らせると、自分も腰に下げていた水筒に口を付け一息つく。
「異常じゃないか……」
いきなりの侵攻。それも魔物の組織だったモノと来ている。しかも数も把握は出来ていないほど。
「みんな、後方の警備隊から増援はもう少しだこらえろ!!」
激を飛ばしかろうじて士気を保つボル。しかしこの行為もそろそろ限界に来ている。
「くそっ、目に見えたモノが欲しい……」
解ってはいてもなかなかに来ない増援。それでも今は増援が来るまで持たせるしかなかった。
西方国境警備隊拠点 ニシノ要塞
「総隊長、前線の第四隊より増援要請です!!」
「………」
「総隊長!?」
援軍要請の伝令を伝え、指示を待つ伝令兵士、しかし総隊長と呼ばれた男は城壁の上、その先の第四隊がいるであろう場所を見詰めながら黙して沈黙を続ける。
「総隊長………」
指示を請うため、更に声をかけようとした時。
「援軍は出せん……」
「はっ?」
「援軍は出せん、今すぐ前線に撤退指示だ、絶対防衛戦をこの要塞に移す、そのかわり第3隊と第5隊を撤退支援に出せ!」
事の甚大さを感じた総隊長は、全てを要塞に集結させる。
「後はシャリオに伝令、Bクラス以上の旅団に応援要請だ!!」
「りょ、了解ですっ!!」
総隊長の指示、それと共に伝令兵が走り出す。
「…………」
伝令兵のいなくなった後、無言で先を見つめる総隊長の男。
まだ、その眼前に魔物の気配は無い。
前線第四隊
「魔物、先鋒に増援、数は数百!!」
「数百だと!?」
「はい、敵は先鋒を押し出し、こちらを包囲するようだとの事です!」
「魔物共め……こうも組織だった動きをするとなる頭は魔族のモノか……」
「魔族……ですか」
「あぁ、仮定の話だがな……だがこうも組織だった動きを見るとあながちな……」
ボルはすぐ目の前の戦いを睨みつけながら仮定の話を口にする。が、今は目の前の戦闘に集中しなければならない。
「後方の魔導士に火力支援だ!」
「了解!!」
ボルの指示に護衛兵が反応、上空に魔力弾三発を打ち上げ、最後に敵方向に魔力弾を放った瞬間。何とも言い難い音が耳をつんざき、ボル達の遙か頭上を魔術による火力支援が通り過ぎる。
ドンッドド……ズズゥゥゥッ!!
正面森が土煙をあげ、上げた直後に爆炎が立ち上る。それを見たボルは一時逡巡し。
「第四隊!敵に包囲される前に一時後退する、近くの仲間を援護しつつ逐次後退だ!」
「隊長!?」
「今は耐えろ、包囲されかかり、隊の損耗率も三割だ、士気もかなり怪しい……俺の責任で後退する!」
ボルが悔しさに歯を食いしばると、副長の男が上空に魔力弾を二発放つ。撤退の合図だ。
「隊長、前方から敵の突撃来ます!!」
「よし、第四隊、出来うる限りの戦闘を避け撤退!!魔導士隊が追いつかれないように他の部隊は護衛に!!」
撤退を開始する兵達の背を見ながら、ボルは周囲を見て逃げ遅れがいないか確認。その後ボルも森を走り始める。
「討伐任務が一転討伐される側か……皮肉だな……」
倒れる仲間の亡骸を見ながらボルは皮肉を呟くのだった。
グギギ……
グギャグギャグギャ……
シジャァァァ……
小さくはあるが背に迫る魔物共の声。そしてそれを耳で聞きながら、必死に撤退を続ける、第四隊。
既に撤退の開始から一時間程。包囲こそ免れてはいるが落伍者が相次いで出始めている。
「くそっ、ガスの野郎がやられた!」
「あぁ、ウェルがぁぁぁぁ!!」
「走れ、走れ、捕まるぞ!!」
隊の最後尾、殿の兵達が遅滞戦闘を行いつつ撤退を続ける。と、その時ボルの護衛兵士が側面に敵影を見つける。
「隊長、右側面に敵、ゴブリン集団、数は50!!」
「ゴブリンだと、構わん蹴散らせ!」
殿、右側側面の部隊が迎撃にあたる、所詮はゴブリンであるため、今の殿にいる精鋭達の相手にはならないが、それでも少なからず撤退の速度が遅れる。
「隊長、今度は左側面、同じくゴブリン集団!!」
「くそ、いよいよ足止めかよ!!」
解ってはいても歯がゆい、ボルは速度を緩めずに走りつづける。
「ゴブリンは出来うる無視しろ、兎に角今は走れ!!」
木々を踏み倒し、第四隊は森を疾駆する。
ニシノ要塞
「第三隊、各班長は人員の最終確認急げ!!」
「第五隊も遅れるな、四隊が全滅するぞ!!」
要塞、その城門前。二部隊合わせ千人の人員が出撃の最終確認を行う。
「いいかぁ、確認を行いながら良く聞け、これより隊は現在状況不明の第四隊の救出撤退支援に向かう、報告では魔物の大部隊がいるとの事だ、全員気を引き締めて任務に当たれ!!」
胸に第三隊の隊章を付けた男が、全員に行き届く声でそうつげる。勿論、それを聞いて一瞬のざわつきはあるものの動揺する人員はいない。
「いいかぁ、我らはチルダ王国西の要、魔物に敗れることは許されん!!」
おぉぉぉぉぉぉぉ!!
第五隊の隊長の檄で城門前の兵士が声をあげる。
「さぁ、同朋を救いに!!」
我らチルダ王国西の要!!
兵士達の声と共に、城門がゆっくりと開かれる。




