前夜祭
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主人公三人の研修期間も後少しです
カイラス・クインスの一件、実は岬が人質にとられていた事に気づく関係者一同。それを考えるとクインスは意外と殺し屋としてはポンコツな所があったのかもしれない。
「まぁ、クインスはマリナちゃんがヴォバックの方に連行したし一段落ですわね」
あくる日の昼頃、お茶を啜りながらマリアがのほほんとそんな事を口にする。
「姉御、今回の件何で岬が巻き込まれたんだ?」
いきなりの一言。一瞬場の空気が凍る。しかし、マリアはさほど動揺せず。
「………今回の件に関しては此方の不手際ですの、弁解の余地はありませんの」
ただ一言。そして。
「そうであったとしても、岬の処遇はどうするんだ、バイトはやめさせるのか?」
矢継ぎ早な質問。だがマリアは動じることもなく。
「いいえ、首にはしませんの昨日話しあいましたが継続と言うことで……」
「なら、護衛は?」
「護衛……ありませんの……」
「はぁ!?そっちの落ち度だろが、それなのにバイトは継続、たけど護衛は無し?ふざけんのも大概にしろよ姉御!!」
バンっ!!とマリアの執務机を叩きつけ昌晃が怒鳴り声をあげるがマリアは冷静な表情を崩さず。
「ヴォバックならこんな事は少なくありませんの、一様こちらとしても最大限の配慮はしますが、それ以上はありませんの……」
「このっ………」
「まぁ、昌晃、落ち着いて」
「淳!!」
「まぁ、兎に角抑えて、少なからず気持ちは解るつもりですが、海堂さんもマリアさんと話し合って、納得した上で継続何ですから、マリアさんばかり責めては駄目ですよ」
柔和な表情を浮かべ努めて冷静に振る舞う淳。隣の純一も淳に賛同してか頭を上下にふっている。
「………だけどよ、俺らは行きがかりとは言え自分の意志でヴォバックに行って冒険者になった、しかし、岬は日本でこの事務所の事務員なんだぞ!?」
「だとしても、ある程度の説明は、マリアさんからあったと思いますよ」
淳としても昌晃をフォローしたい気持ちもあるのだろうが、それでも淳はマリアをフォローする。
「兎に角、海堂さんが頑なにこのバイトに固執するのは昌晃の事も少なからずあるんじゃないですか?」
「俺が原因?」
「全部とは言いませんが………」
自分が原因と言われ、一瞬だけ淳を睨むが直ぐに睨むのを止め。
「悪い淳……まぁ何だ、今回の件は俺も苛立ち過ぎた、姉御だっていきなりの状況だったんだ、反省するよ……」
少しバツが悪そうにしつつも昌晃はマリアにも頭を下げる。
「構いませんの、こちらの不手際は弁解のしようもありませんし……それに今回の件は既にギルドも動いていると思いますの」
「ギルドが?」
「えぇ、正直現状コチラとの扉を創れるのはギルド所属のSランク次元魔導士だけですの、しかもかなりの厳選された、だから今回の件はギルドとしても見逃せませんから………」
そこまで言ってマリアは言葉を区切る。
「となると唯一の手掛かりはクインスだけですか……」
全員が事務所の天井を見上げ一斉にため息をつくのだった。
「と、言うことはマリアさんはSランク次元魔導士っすか?」
と、不意に何かに気づいたのか純一がマリアに質問。すると、他の二人も視線を向ける。
「確かにそうですの……」
否定はない。
「マジかよ、姉御が…」
「次元魔導士ですか……」
「にわかにっすね……」
何時もと変わらぬ姿を見ながら三人は改めて疑惑の目を向ける。勿論向けるがそれもそこまで、三人は小さくため息を吐きながら。
「まぁ、コッチの世界にいる時点で信憑性はあるか……」
「確かに……今の状況がファンタジーみたいなモノですからね」
「信じたとしても損は無いッスからね」
三人はそう言って、数度頷いてから自らを納得させるのだった。
ヴォバック チルダ王国西方国境線
この日も国境警備隊の任務は、何時もと変わることの無いものだった。
チルダ王国西方の国とは友好関係に有り、それは数百年と続いている。それ故に西方国境警備隊の主な任務は、相手国の警備隊との共同での魔物討伐が主たる任務であった。
「今日の討伐任務は何隊だ?」
「確かボル隊長の第4隊です隊長」
「そうか、ボルも隊長になって日も浅い、経験をつむには良い機会だろうな」
同格の隊長らしき男はボルの名を口に出して笑みを漏らす。
「確かにボル隊長は副長の頃から任務に対して真剣な方でしたから」
兵士の男もボルを評価して隊長に習い笑みを浮かべる。
「しかし、最近はなんだ……魔物の量が増えたな……」
不意にではあるが隊長がそんな事を口にする。
「ですね……最近ではその影響か急遽隊長への格上げ任官も増えましたし、兵も増員ですからね」
「隊長に兵員、増えるのは良いが質を保つのも大変だな」
「……確かに」
隊長の言葉に頷く兵士。魔物の出現が増えると同時に隊長、兵士の質も問われる事となる。
チルダ王国西方国境辺境地
「………………………」
深い深い森の中。一人の黒ずくめが何かを唱え、その近くにいた別の黒ずくめが地面に杖を突き刺していく。
「ふぅ、これで最後かなぁ………」
「あぁ、ご苦労だったなミラーナ」
「別にぃ、私は基本肉体労働担当ですからねぇ、それよりもペシャール様の方は良いんですか?」
「そうだな、コチラも九割は終わっている…後は魔力を流し込むだけだ……」
「了解、なら生贄の出番ですねぇ♪」
ミラーナと呼ばれた黒ずくめはどこからか連れてきた男をペシャールの前に差し出す。すると男は黒ずくめの二人を睨み。
「貴様ら、俺をチルダ王国王都、トップ旅団の一角
ブラッドリのユベスと知っての事か?」
「ユベス・ミスド、Sランク魔導士で無尽蔵の二つ名を持つ魔導士だな」
「知ってて………」
「あぁ、コチラにも大切な仕事があるからな……」
「そうだねぇペシャール様」
目深に被って表情は読みとれないが、ペシャールと呼ばれた男に、おおよそ感情と呼べるような声音はなかった。
「さぁ、チルダ王国よ前夜祭と行こうか………」
ペシャールの言葉と共に、三人の前面の空間は静かに揺れ始める。




