魔力量
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殺し屋カイラス・クインス、冒険者ランクBクラスの上位。近接戦闘だけならばAランク相当の逸材。
しかし、逆に魔術の才能は近接戦闘と違い凡才であると言われていた。
勿論語られていただけではある。
「おぉ今余所見はいただけないなぁ!」
何度目かの交錯。何度目かの剣戟をおこなった直後、クインスの言葉と共にマリナの足元が小爆発。ダメージこそ無いものの意識を逸らすには効果は絶大。そしてこのクラスになると。
「隙だらけだ!」
懐に潜り込んだクインスの一撃がマリナの腹部を襲い、鈍痛と共にマリナは廊下を数度転がる。
「くはっ……!!」
転んだ先で何とか体勢を立て直すものの、腹部を襲う鈍い痛みは、なかなかにマリナを掴んで離さない。だがクインスはそれ以上の追撃は行わず一度距離を取り直し、マリナを観察。それは後ろに淳がいたこともある。
「マリナさん!?」
「油断……では無いわね、完全に地の利と近接戦闘の実力差ね」
ゆっくりと剣を構え直し正面クインスを睨みつけるマリナ。だが睨みつけられてもクインスは表情を変えることもしない。
「流石はAランク、Bランクな俺とは違いますなぁ!」
マリナを見下す様にクインスが言葉を発する。その間も口調とは違い視線はマリナのダメージ具合を値踏みしているかのようだ。
「………ランク以上ね……」
悔しいが事実。歯をギリギリと食いしばり、マリナがその表情を悔しさに歪ませる。
「まぁ殺し屋ともなると実力は隠さないといけないからな、冥土の土産に教えてやる、俺は………」
と、口元をニヤリと歪ませ。
「アンタと同じAランクだよ!」
あっさりと秘密を口に出すクインス、が現状この場ではあまりにも不利。マリナはしっかりと実力差を直視して相対する。
「そうですか、そうですか……因みに僕は研修で冒険者ランクはありませんよ」
と、クインスが行動を起こした刹那、それと合わせるように、いきなり淳が動き始め。
パンッ!!
と、一発の発砲音が廊下に響く。
「!!?」
咄嗟に身を翻し。クインスは発砲音から距離をとる。と、今まさにクインスの飛び込んだ場所に何かがえぐり込んだ痕が出来ている。
「あら?ヤッパリ当たりませんか……」
すると、淳がすっとんきょな声をあげて、手に持った何かをクルクルと回す。
「貴様……」
「いやですねぇ、当てるつもりでやったんですが、流石に手練れだと上手くいきませんね……頭に入る情報を、考えてから行動に移しても」
ニコニコとしながら涼しげな表情の淳。その表情はどこかさめた感じを受ける。
「おめさん、本当に研修かよ?」
不意のクインスの言葉、言って頬を冷や汗が流れる。
「ん?僕ですか?えぇ、正真正銘研修ですよ、希望の翼所属の……」
口元に笑みを浮かべ、手に持っていた拳銃をクインスに向ける。
「どうやら、魔導石には色々と使い方があるようで……」
と、言った瞬間淳の手にあった拳銃はサバイバルナイフに変わる。
「このように色々と形状を変化出来るようです」
そう言って、更にサバイバルナイフを拳銃に変化させる。が、それを見ていたクインスは。
「普通は……一度変化した魔導石はそんな風に形状変化はしないんだよ……」
ナイフを握り直し腰を沈める。クインスは何時しかマリナではなく、魔導石を自分の好きなように操る淳を警戒し始める。
「…………」
淳の後ろ、剣を握り締め戦闘姿勢をとるマリナも淳の魔導石に驚きを隠せなかった。
「はてさて、戦闘再開ですかね?」
何時しかマリナと淳が前衛後衛をこうたいし、あまつさえクインスとの攻守さえもひっくりかえさんとしていた。
パンッパンッパンッ!!
拳銃の発砲音が一階廊下に響き、それと共に弾痕が刻まれる。勿論その全てを回避するカイラスではあるが表情に余裕は無い。
「クソッ!!」
吐き捨て舌打ち、クインスは中々に攻撃をかいくぐれずに距離をつめられずにいる。
「それにしても凄いですね、魔導石から流れてくる情報がどんどん身体に馴染んでいきますよ!」
流れてくる情報、それを自分の知識と技術に変換し続ける淳。その表情は何時しか緊張ではなく余裕すら見て取れる。
「有り得ない……」
淳の動きを見てそう呟くマリナ。そう、それには理由がある。通常、魔導石から情報を得るにはその知識の流れを制御吸収する為に、自身の魔力が必要になる。勿論、簡単な操作や用途程度なら魔力もそれ程必要にはならないが。今の淳は戦闘、しかも冒険者ランクAクラスの手練れと戦っているのだ。
そう考えれば今の状態がどれほど異常なことか安易に想像できる。
だが淳はそれを、薄ら笑いを浮かべ対応。見ているだけでも膨大な魔力のやり取りが想像できる。
「仲間としてみててもゾッとする魔力量ね……」
正直な感想。たぶんそれは敵として相対しているクインスはもっと強く感じているはず。廊下で所狭しと攻防を繰り返す二人。
まだ勝負の行方は知れない。
千鳥 淳 冒険者としての鮮烈なデビュー戦




