廃校の戦い
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校舎をぐるりと囲む木々を見ながら周囲への影響を考える。勿論考えるのはマリナ。
「ヤッパリ違うわね……」
「違う?」
「ヴォバックと……あっちなら正直戦闘の影響を考える必要も無いし……」
「まぁ……確かに」
校舎の外を歩きながら、二人は周囲を見やる。周囲には廃校をぐるりと囲む生け垣。それでもそれ以外は何もなく、戦闘が行われれば多少なりとも影響が出るかんじだ。
「兎に角、周囲の住宅街に影響がでないようにベストを尽くさないとね……」
マリナはそう言って淳の一歩前にでる。
「そう言えばゲオルグさんとクリスちゃんはこなくて良かったんですか?」
真っ当な質問。するとマリナは。
「まぁ、うちもお家事情が厳しくてね、人気の割に人材不足なのよ」
「なる程……」
何故か納得の淳。その間も二人は校舎を見ながら進み続ける。
廃校舎教室
廃校舎と言ってもまだ1ヶ月。それ程廃れている訳でもなく、教室には生徒用の机が整頓され並べられている。そこには椅子に縛り付けられた岬が。
「アナタなんなの!?」
毅然とした言葉。しかし、声とは裏腹に身体は震えている。すると、そんな岬を教壇で眺めていた男は。持っていたナイフを弄びながら。
「なんなの……と来たかよ、まぁ大魔導士様の小間使いでもコッチ側の人間か……たかが知れてるな…人質の価値があるかも怪しいか」
と、溜め息を吐き薄ら笑いを浮かべる。
「大魔導士って……まさか店長のこと?」
「答える義理はない」
岬とは相反して男の態度は冷めたものだ。
「まぁ、俺としては……」
と、男がその先を喋ろうとした刹那。
「へぇぇ……コレはコレは、まさかこの魔力量はヴォバックからの刺客かよ……」
そう言って、男が口元に冷たい笑みを浮かべる。
「このクインス様に刺客二人か……」
自らをクインスと呼んだ男は持っていたナイフを腰のホルダーに直し立ち上がる。
「喜べよ娘、このカイラス・クインスは戦いに卑怯な手は使わねぇ、それにお前は大魔導士との交渉材料だからな!」
そこまで言って言葉を句切るとスッと音もなく教室を後にする。
廃校舎内
下駄箱を通り抜け校舎内へ、右手には体育館の入口があり左には正面を向けば左右に伸びる廊下と階段。
現状変わった様子は無い。とりあえず廊下にでて一階から捜索を開始。
「不気味ですね?」
学校と言うくだりだけで、その感想が口をつく。一歩一歩、静寂な廊下に二人の足音が響きわたる。
「それにしても、本当にヴォバックとは何もかもが違うわね、この大きさでコレが一般の学校なの?」
「そうですよ、ここは私立の女子校でした」
「信じられない、こんな造りチルダ王国なら士官学校か貴族学校の規模でもおかしくないわよ」
「はぁ……そうなんですか?」
「えぇ、日本は教育の水準が高いのね」
「まぁ、何とも言い難いですが低くはありませんね……」
周囲を警戒しつつも淳とマリナの会話は続く。やれあれは何だのやれはどう使うのだと。マリナの興味は尽きない。
「はぁ、見れば見るほど日本の教育水準の高さが見て取れる」
「まぁ……はぁ……」
マリナの感嘆の声にとりあえず相槌をうつ淳。表情は複雑そうである。
「それにしても、相手の動きか無いですね……」
と、話題を変えようと淳がそう言うと、マリナは少し表情を曇らせ。
「動いてるわよ……」
そう言って、淳を手を出して制止させる。と。
「おいおいおいおいぃぃ、誰かと思えば希望の翼、麗しのマリナ・レイヴァンスさんじゃないですか?」
と、中央階段らしき場所から男が一人降りてきて、マリナを見るなり声をあげる。
「殺し屋、ナイフ使いのカイラス・クインス…」
姿と胸元のナイフホルダーを確認して、マリナが名前を口にする。
「おぉう、正解だよレイヴァンス、ナイフ使いのカイラス・クインスだ、まぁ俺が用があんのはアンタの姉、マリア・レイヴァンスなんだけどなぁ」
そう言ってクインスは胸元のホルダーに手をかける。が、まだ戦闘行動は起こさない。
「アナタが私に用が無くとも、私はアナタに用が
あります……」
「ほぉう、そりゃあまぁ何だい?」
「アナタの捕縛と背後関係です」
剣を構えマリナがそう告げる。クインスはそれを聞いてニンマリと笑みを浮かべ。
「ははぁんそうかよ、だがよ、そう簡単にはいかねぇよ!」
刹那、クインスが手に掛けていたナイフを投擲。目にも止まらぬ速さでマリナに飛来するがそれは想定内の事、難なく回避し前方に体重をかけ一足飛びに駆け出す。
「おほぉ、そんな格好で色っぽいねぇ!」
クインスがナイフを構えてマリナを迎え撃つ。
ギィィィィン!!
鈍い音が響きわたると共に、クインスはナイフの軌道を変えてマリナの剣戟をいなす。と、そのまま両者は交錯し、最初とは逆位置に。勿論攻防がそれで途切れる訳もなく、両者素早く身を翻すと今度はクインスが武器の小回りを利かせて攻撃。
鋭い突きがマリナを襲う。
「ははぁっ!こんな狭い所じゃ満足に剣も振るえねぇかぁ!?」
地の利は我にあり。クインスが水を得た魚の様にナイフの突きを繰り出し続ける。
「一方的たぁこの事かねぇ!」
口元に笑みは浮かべるが慢心は無い。流石に殺し屋。
現状隙は皆無だった。




