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僕らの青春  作者: はるきち
第一章 高校一年生編
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9/10

#8 放課後の寄り道

高校生活が始まって二週間。


最初は長く感じていた一日も、最近ではあっという間に過ぎていくようになった。


授業を受けて、昼休みに友達と話して、放課後になれば帰る。


そんな毎日。


ただ、最近は少しだけ変化がある。


「湊、帰ろ!」


放課後。


乃愛がいつものように俺の席までやってきた。


「今日はどこか寄ってく?」


「寄り道?」


「うん!」


乃愛は楽しそうに笑う。


「高校生になったんだから、ちょっとくらい寄り道してみたい」


「別にいいけど」


「本当?」


「ああ」


「やった!」


乃愛が嬉しそうに笑う。


その笑顔を見ると、断る理由なんて最初からなかった気がしてくる。


「じゃあ、どこ行く?」


「んー……」


乃愛が考える。


「駅前のカフェ!」


「いきなり女子っぽいな」


「女子だもん!」


「それは知ってる」


「もう!」


乃愛が軽く俺の肩を叩いた。


「じゃあ決まり!」


---


「ここ、前から気になってたんだ」


駅前の小さなカフェ。


店内は落ち着いた雰囲気で、放課後ということもあって学生の姿も多い。


「何にする?」


「私はこれ!」


乃愛がメニューを指差す。


「季節限定のパフェ」


「甘そうだな」


「美味しそうでしょ?」


「まあ」


「湊は?」


「コーヒー」


「高校生なのに?」


「高校生でもコーヒーくらい飲む」


「苦くない?」


「慣れれば」


「じゃあ私も一口飲んでみたい」


「いいけど」


注文して、窓際の席に座る。


「なんかこういうのいいね」


乃愛が店内を見回す。


「何が?」


「放課後に友達とカフェ」


「まあ、確かに」


「高校生って感じ!」


「また青春か」


「だって青春でしょ!」


「陸みたいになってきたな」


「ひどい!」


二人で笑う。


しばらくして、注文したものが届く。


乃愛は嬉しそうにパフェを食べ始めた。


「美味しい!」


「よかったな」


「湊も食べる?」


「いいのか?」


「うん」


乃愛がスプーンを差し出す。


「ほら」


「……」


俺は一瞬固まった。


「どうしたの?」


「いや……」


「食べないの?」


「食べるけど」


スプーンを受け取る。


「……美味い」


「でしょ?」


乃愛が笑う。


その笑顔が、なんだか妙に近く感じた。


「じゃあ、コーヒー一口」


「はい」


今度は俺がカップを渡す。


乃愛が一口飲む。


「……苦い」


「だろ?」


「これ大人の飲み物だよ」


「大げさだな」


「湊、よく飲めるね」


「慣れだよ」


乃愛は苦そうな顔をしながらも、なぜか笑っていた。


---


店を出ると、夕方の風が吹いていた。


「楽しかった!」


乃愛が言う。


「そうだな」


「また来ようね」


「ああ」


駅へ向かって歩いていると、乃愛が突然立ち止まった。


「湊」


「ん?」


「ちょっとだけ寄りたいところがある」


「どこ?」


「こっち」


乃愛に連れていかれたのは、近くの公園だった。


「公園?」


「うん」


「何するんだ?」


「ベンチに座るだけ」


「それだけ?」


「それだけ」


二人でベンチに座る。


夕焼けが街を赤く染めていた。


「綺麗……」


乃愛が空を見上げる。


「そうだな」


「こういう時間、好き」


「俺も嫌いじゃない」


「……ねえ、湊」


「ん?」


「高校生活って、長いと思う?」


「どうだろうな」


「私は短い気がする」


「始まったばかりだぞ」


「だからこそ」


乃愛は小さく笑った。


「三年間って、あっという間に終わっちゃうかもしれない」


「……」


「だから、いっぱい思い出作りたい」


「この前も言ってたな」


「うん」


乃愛は少しだけ俺を見る。


「湊と一緒に」


胸の奥が少しだけ熱くなる。


「……ああ」


俺は頷いた。


「いっぱい作ろう」


「約束ね」


「約束」


小指を差し出される。


「……何?」


「指切り」


「子供かよ」


「いいから!」


俺は苦笑しながら小指を絡める。


「約束」


「約束!」


乃愛は嬉しそうに笑った。


---


翌日。


「おはよう!」


教室に入った乃愛は、いつも以上に機嫌がよかった。


「おはよう」


「昨日楽しかったね!」


「ああ」


その会話を聞いていた美咲が、すぐにこちらを見る。


「昨日、二人でどこ行ってたの?」


「カフェ」


「二人で?」


「うん」


「……へえ」


美咲がニヤニヤする。


「デートじゃん」


「違う!」


乃愛が即座に否定する。


「ただの寄り道!」


「二人きりで?」


「……うん」


「それを世間ではデートと言います」


「違うってば!」


乃愛の顔が赤くなる。


花音も二人を見ながら微笑んだ。


「楽しそうでよかったね、乃愛ちゃん」


「うん!」


その笑顔を見て、花音も嬉しくなる。


けれど――


胸の奥には、また小さな痛みがあった。


「……」


私は、どうしてこんな気持ちになるんだろう。


花音は自分でも分からなかった。


---


昼休み。


俺たちが昼食を食べていると、陸が突然言った。


「そういやさ、今度の体育の授業、男女混合でやるらしいぞ」


「そうなのか?」


「ああ。高瀬先生が言ってた」


「何するんだろうね」


翔太が聞く。


「たぶん球技じゃない?」


陸が答える。


乃愛が俺を見る。


「湊と同じチームになれるかな?」


「先生が決めるだろ」


「一緒がいいな」


「まあ、なれたらいいな」


「……うん!」


乃愛が嬉しそうに笑う。


その時。


「天野さん」


隼人が話しかけてきた。


「一ノ瀬くん?」


「この前の話だけど」


「あ……」


乃愛が少し困った顔をする。


「まだ返事、してなかったよね」


「うん」


「急がなくていいよ」


隼人は優しく笑う。


「ただ、俺は本気だから」


乃愛が黙る。


俺も何も言わなかった。


隼人はそのまま席へ戻っていく。


「……」


俺は隼人の背中を見る。


以前なら、ただのクラスメイトだと思っていた。


今は違う。


隼人が乃愛を見るたびに、少しだけ気になる。


そして、それが何なのか。


俺はもう、薄々気づき始めていた。


---


放課後。


「湊、帰ろ」


「おう」


いつものように二人で学校を出る。


「ねえ」


「ん?」


「昨日の約束、覚えてる?」


「もちろん」


「よかった」


乃愛が笑う。


「これからも、たくさん思い出作ろうね」


「ああ」


「高校一年生なんだから!」


「まだ始まったばかりだぞ」


「だから、これからだよ」


乃愛は前を向いて歩く。


俺も隣を歩く。


まだ恋人じゃない。


だけど。


一緒にいることが、少しずつ当たり前になっていく。


そして俺は、そんな日々を――


いつの間にか、大切だと思い始めていた。

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