第158話 加入と別れとヘタレと初心と
──飛空技師は駆り出される──
ネブルヘイナの物語もいよいよ幕引き──。
<〔Perspective:Kaqua〕>
「おっ、ようやくお目覚めか。おはよう寝坊助さん」
「──…っ! 魔物は…!? 魔物はどうなった…?!」
「ちょっ落ち着けよ…、目覚めたてで元気な奴だな…。安心しろ…オマエがもたらした勝機のおかげで、無事に魔物はこの世から消え去ったからよ」
「そうか…よくやった…」
無事に魔物討伐を終えた私達は、ひとまずこの場に駐足している。手当ても必要だし、気を失っている奴を運ぶのは骨が折れるからだ…。
「おい…これ…ロイスの奴はちゃんと生きてんのか…? あとメイドとカーリーはどうなった…?」
「オレ達なら後ろに居るよー」
「ロイス様も生きておりますよ」
アクアスとカーリーちゃんは、魔物の再生を妨害してくれたから生きていることは分かっていたが…2人揃って中々に大怪我をしていた…。
まあ深紫霧の爆発で巨木の上から地面に落とされたわけだしな…、むしろよく死なずに済んだもんだよホント…。
ロイスはまだ目覚めてないが…心拍数に異常はないし、多分死ぬことはないだろう。あの時ロイスが身を挺して私を庇ってくれなかったら…魔物討伐は今も続いていたかもな…。
「非戦闘員共は…?」
「この辺に傷に良く効く植物があるらしくて、ジルゥは今それを採りに行ってるよ、ニキの護衛付きでな。パークも行かせた、うるせェから」
何事もなければそろそろ帰って来る頃だろう。魔物との戦いの余波で、現状この場所の周辺には生物の気配がないし、まあ…大丈夫だろう。
「全員無事ならひとまず安心だな…。──しかし…流石に体中痛ェな…頭も痛ェ…。なんかコブできてんな…俺いつ頭打った…?」
「あー…それはだな…、ほら…前にオマエにお姫様抱っこで恥ずかしい思いさせられたろ…? だからちょ~っとやり返そうと思ってさ…寝てる間にお姫様抱っこをしてみたんだけど…思いの外オマエ重くてさ…バランス崩してそこの出っ張ってる岩にゴンッって…」
「何してくれてんだテメェ…」
「いや~逆にこっちが恥ずかしい思いをしたぜまったく…、穴があったら皆埋めたいくらいだ…」
「テメェが入れよ…何口封じしようとしてんだ…」
実際にお姫様抱っこやってみて分かった…素人が手を出していいものじゃねェわアレ…。よくアレスは私を抱っこできたもんだ…腕折れてた状態で…。
アレスがおかしいのか…私が軽いのか…──んー、ギリ後者か?
「ったく…、アイツ等が帰って来たら…ぼちぼち移動を開始するぞ」
「ハァ…!? もう…!? オマエ起きたてなのに…!? まだロイス目覚めてないのに…!? オマエせっかちさんだなぁ…」
「今は戦いの余波で付近に生物が居ないみてェだが…それもいつまで続くか分からねェ…。一度離れた生物が戻ってくれば…ここは嫌でも目立っちまう…。さっさと移動して…さっさとネブルヘイナから出た方が安全だ…、ロイス1人ぐらいなら偽竜種に乗せられるだろ」
「まあ…オマエがそう言うなら従うけどよ…」
普通にここで一泊して明日帰るつもりでいたが…こういう時は現役ハンターの指示に従うのが一番だろうし…体に鞭打って重い腰を上げた…。
ニキ達が帰って来たらすぐにここを発てるよう、手当てに使った道具とかを皆でまとめていると…葉の擦れ合う音を耳がキャッチした…。
“ガサガサッ!”
「…っ?! アレは…!」
「うげっ…私のトラウマじゃねェか…」
姿を現したのは飛布蛞の群れ…、しかも前に遭遇したのよりずっと大きな群れ…。ざっと100は居そうな規模だ…。
戦いで流れた血のニオイに引き寄せられたのか…いずれにせよマズいなこれは…。ただでさえヘトヘトだってのに…この数を相手取るのは普通にキツい…。
しかもアイツ等…してくるのが単純攻撃じゃねェのも厄介…。腕とか体に巻き付いて連れ去ろうとするから…戦いづらくてかなわん…。
「見逃してはくれなそうですね…」
「やるっきゃねェか…、全員固まって戦え…! 誰かが連れ去られそうになったら即座に救出だ…! 手を取り合って追っ払うぞ…!」
武器を手に取ると、飛布蛞共は一斉にこっちへ向かって来た。気持ち私に向かって来る数が多く見えるのは気のせいか…? 勘弁してくれ頼むから…。
「 “──…っ?! …っ!!” 」
「おっ…?! 何だなんだ…!?」
真っ直ぐこっちへ向かって来ていた飛布蛞共が…突然踵を返して四方八方に散っていった。
えっ…何…? 煽り…? 疲労困憊の私達をからかっただけの犯行…? そうやって油断させておいて、っと思ったが…散っていった飛布蛞共はそのまま森の中へ消えていった…。
本当に何しに来たんだよ飛布蛞共…、知性生種舐めんなよコラ…!
「──ぉーぃ…ぉーぃ…!」
「んっ? 誰の声?」
「カカさん…あそこ…」
「おーい! 若人達ー! わしが来たぞォー!」
「レビン酋長…!!?」
見間違いかと思い、目をゴシゴシ擦ってみるも…紛うことなきレビン酋長…。女好きで脚攣りがちなレビン酋長が何故こんな場所に…。
「何してんだよアンタ…つかどうやってここまで…」
「ワハハッ、お主等の戦いが見てみたくなってな、リクを使ってここまで来てしもうたわい! いやいや実に素晴らしい戦いだったぞオマエ達、ワハハハッ!」
そんなことの為にこんな危険地帯に1人で…、命知らず過ぎるだろレビン酋長…。よく死ななかったものだ…。
老人の怖いもの知らずは怖いぜホント…、結果オーライだけども…。
「お主等もこれから真っ直ぐ帰るじゃろ? わしだけが知っとる近道があるでな、そこを通って皆で帰ろう! 中宵頃には集落に着ける筈じゃ」
「そんなのあんのかよ…ってかやたら詳しいな…」
「そりゃわしはちょくちょく来とるからなここへ。わしの薬湯にはネブルヘイナで採れる素材が必要不可欠じゃからな、わしにとっては天然の畑みたいな場所よ」
「えっ…レビン酋長何者…?」
「老いぼれ♡」
そんなやり取りをしていると、何事もなくニキ達が戻って来た。案の定ニキは私達と同様のリアクションをした、まあ…でしょうね…。
まだ疑問は尽きていないが…とりあえず全員揃ったので出発準備を整える。邪魔な荷物をニキのリュックに詰め込み、ロイスをクギャの背中に乗せた。
その途中で脚を攣ったレビン酋長もクギャに乗せ…レビン酋長の案内のもと、近道を通ってトンネルを目指す。
どうか道中…猛獣に襲われたりしませんように…。
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
──宵 【曇り】
願いが誰かに届いたのか…マジで一切トラブルがなかった…。何なら1体として生物と遭遇しなかった、レビン酋長の近道スゲー…。
そのまま無事にトンネルへ到着、この場所からおさらばできると思うと、嬉しい反面…少しだけ寂しさも感じるのは…まあまあ長く滞在したからだろうか。
だが残りたいとは微塵も思わない不思議。さっさと出ようこんなとこから、律儀に私達の帰りを待っていたモーブゥ達と共に。
「そいじゃ、オマエともここでお別れだな。何だかんだ楽しかったぞパーク」
「ウン、ボクも楽しい日々だったヨ」
パークとは元々、魔物討伐までの間だけの関係だったからな…。全てが終わった今…もうパークと一緒に居る理由がない…。
「頭に乗ってるのが当たり前になってきてて、ついトンネルまで連れて来ちまったが…家まで帰りたいってんなら、後でアレス達かレビン酋長にでも送ってもらうといいぞ」
「──ネェ…おネェさん…。ボク…友達が死んじゃったカラ…ここに居テモひとりぼっちナンダ…。だからサ…ソノ…良かったラ…」
頭の葉っぱをへたらせながら、パークはモジモジしている。私は鼻から小さく息を吐き、こっちを向くパークの体をクルッと反転させ、脇を持って頭に乗せた。
「ったく…ウチは働かざる者食うべからずだからな? 私達について来るってんなら、キリキリ働いてもらうから覚悟しとけよ?」
「ウンッ! 全力でおネェさんノ頭を雨粒カラ守るヨ!」
「ほぼ無職じゃバカタレ」
本当に家に帰りたかったら図々しくも送ってけとか言うような奴だし、それがなかった時点で何となくこうなる気はしてた。
まあ孤独は何よりも辛いからな…出会ったのが運の尽きだと思って、コイツを頭に乗せ続けるとしよう。たまに湿気るコイツを…。
「どんどん仲間が増えてくニね、賑やかで楽しいニ♪」
「この調子じゃいずれナメクジとか仲間に加わりそうだな…」
「楽しいニね」
「塩かけてしまいじゃバカタレ」
「おい、オマエ等もモーブゥと偽竜種に乗れ、そろそろ行くぞ」
騒がしい新たな仲間を頭に乗せたまま、今なお時が止まったままの太古の森に背を向け、現代へと続くトンネルへと入った──。
──翌日 昼過ぎ 【晴れ】 <支度町 -マルベイ->
昨夜は川人族の集落で一夜を過ごし、色々とお土産を貰いながら今朝方集落を発ち、ついに最初の町まで戻って来た。
ロイスは今朝方に目を覚まし、魔物の討伐完了を伝えると心から安堵していた。改めて全員欠けることなく、全てが終わったのだ。
その後町へ戻ろうとしたが、カーリーちゃんも町まで来ることになった。明日この地を発つ私達を見送ってくれるそう、嬉しいね。
「やっと帰って来たぜ~! なんか普通の家々すらもが久々に感じるぜ…、長かったなぁ…背の高い木に囲まれる日々が…」
「本当に久々に肩の力が全部抜けたニね」
「凄まじい解放感で胸がいっぱいです」
何気なく道を行き交う人の姿を見てるだけで感慨深く思える…。それだけ今回は大変だった…、厄介な敵も増えたし…食獣植物とか混合獣とかに苦労したし…竜とも戦ったし…、マジで今回ハードだった…。
魔物も厄介なギミック持ちだったし…色んな意味で普通が存在しない冒険だった…。次は比較的穏やかな場所に行きたい…、どうせ魔物からは逃れられんが…。
「──おお~?! 皆ァ! アレスさん達が帰って来たぞォ!!」
ムルクさんの死で臆し、町に残った若青団ハンターの1人が私達を見つけた。彼が大きな声を上げると、どこからともなく若青団メンバーが集まって来た。
あっという間に周りを囲まれ、その騒ぎを聞きつけた住民達も続々と集まってくる。もはやプチお祭り騒ぎ…ちょっと戸惑う…。
「アレスさん…! 帰って来たってことは…魔物は討ったんすか…?!」
「ああ、ムルクのおっさんの仇は討った。双子町は魔物の脅威から脱した、もう安全だ…少なくとも今はな」
魔物が1体でも生きている限り…何が起こるかは分からないから…アレスの伝え方は正しい…。付近に魔物が居ない今は、安全だ。
だがアレスの言葉を聞いた住民達は歓声を上げ、私達を大いに称えた。そんな住民達の称賛の声に、迷わず笑顔で応えられたのは、ノッセラームでの派手な凱旋を経験したおかげかも。
「そうだ姐さん! 姐さんに見せたいもんがあるんだ。おーい、ちょっと道を開けてくれェ! そんで道は開けたままで頼む!」
「あ…姐さん…? 私のことかな…?」
「カカ様に話し掛けてましたし、そうなのでは…?」
「絶対私の方が年下なのにな…いいのかな…」
少し複雑だが…魔物討伐に貢献したことへの敬意は感じるから黙って受け入れる。そんな彼は、ダッシュでどこかへ行ってしまった。
しばらく住民達に笑顔を振りまいて手を振ったりしてると、路地から彼が出てきた。特に変わったところはないし、手にも何も持ってない。
「姐さん、ご覧ください! っというか再会を喜んでください! ではどうぞ!」
「おーいカカ~! なんかあんまり覚えてないけど、意識戻ったみたいだよ~! 魔物倒したんだってね、お疲れ~!」
そこには何事もなかったかのように立って手を振るミクルスの姿があった。それを見た瞬間…無意識に私は走り出していた…。そしてミクルスを抱きしめた…。
「オマエ…心配かけさせやがって…、1回斬られたぐらいで寝込みやがって…」
「そんな無茶な…常人は1回斬られただけでも致命傷だよ…? でもごめんよ心配させて…ボクならこの通り元気だから、もう大丈夫さ。──〝ジュルリッ…〟」
「うおおおっ…?! 何舌なめずりしてんだテメェ…! 感動をぶち壊しやがって…! 離れろ貴様…! 絶対ェ舐めさせねェぞ…!」
「1回! 1回だけ! 感動の再会を祝して1回だけ!」
「私にメリットがねェだろそれ…! うおォォ…! 離れろォォ…!」
ミクルスは無事に意識を取り戻したが、変態性だけ器用に喪失してくれてたら良かったのに…。舐める変態が息を吹き返してしまった…。
「それじゃ感動の再会も済んだことですし! 戦いから帰還した勇士達を祝う宴をやりましょう! 双子町の住民一同、皆さんの勝利と帰還を信じ、宴の前準備を既に整えてありますんで! 今夜は盛大に宴を開きましょう! 勇士達を称える聖宴を!」
「凄い熱量だね…」
「まっ、それだけのことを私達が成したってこったな。ありがたく祝われようじゃねェか、今日はしこたまウマいもん食ってやるぜ」
「じゃあ一舐め…」
「おう離れろ変態」
──翌日 昼前 【晴れ】
昨日は実に楽しい夜だった、ウマい料理たらふく食って…ウマい酒をめっちゃ飲んだ。中身のない話に花も咲かせた、実に最高なひと時だった。
まだ少し名残惜しいが…いつまでも居られはしない。まだ魔物は4体も存在している…まだまだ戦いは続いていく…。
そんな私は今、序口の森で採った夏の花を手にしながら墓地に1人でやってきた。この町を離れる前に、ムルクさん達の墓参りをして行こうと思ってだ。
住民に墓地の場所を聞き、教えてもらった場所へと足を運ぶと、そこには先客の姿があった。
「ようっ、オマエもやっぱここに居たのか。今朝からちっとも姿が見えなかったから、カーリーちゃんが探してたぜ? アレス」
「どこに居ようが俺の勝手だろうが…。反対にオマエはこんな場所で何してんだ…? 王都に帰るんだろ…? オマエ等を見送ろうって奴等が朝からごった返してたぞ…」
「出発前に墓参りでもしていこうと思ってな、あとオマエにもバイバイを言いに来たんだよシャイボーイ。──それ何してんだ…?」
アレスは墓石の前で何かを燃やしていて…白い煙が空高く上っている。まさかとは思うが墓石燃やそうとしてる…?
「薬草を燃やしてんだよ。薬草を焼いて出た煙は…死者の魂の穢れを浄化し…真っ直ぐ天国へと魂を誘ってくれる、らしい…」
「へェー、なんか素敵だなそれ」
「オマエこそその花なんだ…? 皮肉か…?」
「なわきゃねェだろ…ドーヴァには献花っていう、死者に〝四面華〟を捧げる文化があんだよ」
春の花・夏の花・秋の花・冬の花──これ等は正確には花びらの名前だ。
四面華は茎に4つの蕾がある花で、季節ごとにそれぞれの花を咲かせる。そして季節が移ろうと、花は再び蕾へ戻り、次の季節の花が咲く。
四面華は寿命が長く、最低でも数年間咲き続ける特殊な花。そんな四面華は〝輪廻の花〟と呼ばれることもある。
「亡くなった死者が…廻り廻っていつの日か…再びこの地に生まれてきますように──そう願うのがドーヴァ流の墓参りだ」
「悪くねェな、それも」
ドーヴァとリーデリアが手を組んで冥福を祈ったんだ…きっとムルクさん達は、薬草の煙で迷うことなく天国へ昇り…いずれ再びこの地に還ってくることだろう。
「そんじゃ、私はもう行くぜ。見送りには来てくれねェのか?」
「別に今生の別れでもねェんだ、必要ねェだろ」
「かァ~…ドライな男だねぇ~、共に戦った仲間を気持ち良く送り出してやろうとは思わんのかね…。まあオマエっぽいっちゃオマエっぽいけどさ。んじゃここでバイバイだな、ありがとよアレス…オマエが居てくれて本当に助かった、じゃあな」
「──今生の別れじゃねェんだ…困ったことがあったらいつでもまた来い、そん時はまたオマエ等に力を貸してやる。またな、カカ」
「…っ! おうっ! またな、アレス!」
▼ ▽ ▼ ▽ ▼
「あっ! カカ様~、どこに行っていたんですか…? どこにも見当たらないので…探しに行こうかと思ってましたよ…」
「悪い悪い、ちょっと個人的な用があってな。──っで? オマエ等は2人は本当にいいのか?」
「うん、せっかくアツジ大陸に来たわけだし、ボクは気ままにあちこち見て回ろうと思ってね。あと飛空艇はやっぱり苦手だからね…」
「僕はもう少しこの町に滞在してから元居た町に戻ることにするよ。これ以上君達に迷惑は掛けられないからね」
「別に気にしなくてもいいってのに…」
だが2人がそう言う以上…無理に引き留める理由もない。2人ともここでバイバイだ、ミクルスは全てが終わって国に帰る時に連れ帰るけど。
「そんじゃ私達はそろそろ行くよ。ロイス、カーリーちゃん、力を貸してくれてありがとう! 一緒に戦えて良かった!」
「こちらこそ、楽しい日々だったよ」
「魔物病から助けてくれたこと、オレ一生忘れないから。いつか必ず恩返しするから、それまで魔物に殺されないでね」
2人と握手を交わし、住民達の歓声に背中を押されながら飛空艇に乗り込んだ。少しずつ離陸していっても尚、住民達の声は止まない。
王都へと向きを変え、高度を上げながら飛空艇は少しずつ前進を始めた。さらば双子町…川人族の集落…さらば…ネブルヘイナ大森林──。
<〔Perspective:Loiz〕>
「やっぱり墓地に居たんだアレス、もうカカ達行っちゃったよ?」
「知ってるわ…墓地からでもアイツ等の飛空艇は見えるからな。それにわざわざカカが別れを言いに来たしな」
「ヘェー、そうだったんだ。──伝えた? 自分の想い」
「あっ? 何の話だ…?」
「だって好きでしょ? カカのこと」
「ハァ…!? オマ…何言って…?! そんなわけねェだろ…! ってか何でそう思ったんだよ…?! 俺は別に…アイツのことなんか…」
分かり易ー…子供ぐらい誤魔化すの下手だなぁ…。流石は彼女いない歴=年齢の男…、何なら恋したことのない歴=年齢だった男…。
モテないわけじゃないけど…強さを追い求めて恋愛をまるで経験せずに育ってしまった哀れな男…。幼馴染として少し不安だったけど…ここまで恋愛下手とはね…。
「カカ達と一緒に行けば良かったじゃないか、カカなら拒まなかったと思うよ?」
「それはできねェ、俺にはやるべき事がある。魔物が消えたとはいえ…ムルクのおっさんが居なくなったことで…今双子町は不安定だ…。だから俺達若青団が礎にならなきゃならねェ…! なのに他の連中は腰抜けばかり…だからみっちり鍛え上げてやらなきゃならねェ…!」
「うんうん、そうしなきゃ安心してカカ達と一緒に行けないもんね」
「そういう意味で言ってねェ…!!」
この様子じゃ告白もしてないんだろうなぁ…。アレスとカカって性格が結構似てるから…相性も良いだろうなって思ってたんだけど…。
まあカカも好意に気付けないぐらいには恋愛に対して初心っぽいし…どっちもどっちかな…、そういう点でもよく似てる…。
ヘタレ・ミーツ・初心の恋は先が長そうだね…。
「まあ…次会う時が楽しみってことで…。そういえばカーリーが明日帰るらしいから、集落まで送ってあげようよ」
「そりゃ構わねェが…マジで勘違いすんなよ…?! 俺は別にそんなんじゃねェからな…! 好きとかじゃねェからな…!」
「ハイハイ、ソウデスネー」
「おい…!!」
──第158話 加入と別れとヘタレと初心と〈終〉
ネブルヘイナ大森林編・完──!




