第157話 殺意に朽ちて枯れて
──飛空技師は駆り出される──
策を以てして掴め勝利──!
「っで…? オマエの策ってのは何なんだ…? 全てはオマエの腕に委ねられるみてェだけど…私達は黙って静観してりゃいいのか…?」
「いや、オマエ等には最も重要となる〝締め〟を任せることになっちまう…要はトドメだ。俺が全身全霊をもってあの野郎に攻撃を仕掛け…千載一遇の勝機を作り出す…! だが俺はそこで戦線を外れることになるだろうから…最後の仕上げはオマエ等に託すぞ」
「いいとこどりは嫌いじゃねェが…オマエは大丈夫なんだろうな…? 戦線離脱を強いられるようなことをすんだろ…? 言っとくが…玉砕覚悟の特攻作戦なら乗らねェぞ…?! 魔物を討てても…オマエが死んじまったら勝利とは呼べねェ…!」
「んなこたァ分かってる、死ぬ気なんざこれっぽっちも無ェよ。信じろ、俺もオマエ等を信じて全力を尽くす…!」
具体的な内容は分からんが…信じると言われたからにはこっちも信じる他に手はないな…。策に乗ると言ったのも私だし…腹括るか…。
それに結局一番大事なトドメは私達の仕事だし、雑念は捨て去って集中しないとな。こんな常識外れな戦いをさっさと終わらせてェ…!
「俺は少し気を研ぎ澄ます…その間魔物の気を惹いててくれ」
「おう任せとけ…! そっちこそ任せたぞ未来の一等星…!」
「ああ…! 他の2人にも伝達頼む…!」
ロイスは比較的近くに居るし、ニキの下半身もその少し向こうに見える。一体どうやったらそんな見事に土に突き刺さるんだ…? 神に愛されてんなぁ…。
「ロイス…! 大丈夫か…?!」
「何とかね…、まったく酷い目に遭ったよ…身体中が悲鳴を上げてる…」
「そんな貴方に朗報だ、アレスが千載一遇の勝機を巻き起こしてくれるそうだ…! 体に鞭打ってでも心を奮い立たせる価値はあるぜ…?!」
「アレスが…? そっか…それなら弱音を吐いてる場合じゃないね…! 例え骨が折れようと…アレスの期待に応えないと…!」
手を貸し、ロイスは立ち上がった。ロイスも心の底からアレスを信じてる、これで失敗に終わったら許さねェぞアレス…。
後は面白くも土に刺さっているニキのもとへ行くだけだが…ここで再び魔物に動きが…。十八番の霧弾攻撃の準備をし始めた…。
「マズいね…どうする…!? 一旦後ろの森まで逃げた方が…」
「いやそれじゃ集中してるアレスに狙いがいくかもしれねェ…! ロイスはニキのとこに行ってくれ…! 魔物は私が惹きつける…!」
「ちょっ…!? カカ…?!」
魔物の目線が向くように地面を叩いて軽く土煙を上げ、そのまま魔物に向かって前進する。狙い通り魔物は私を向いた、さァ…こっからは賭けだぜ…。
「 “バゥルルーーンッ…!!” 」
雄叫びと共に大量の霧弾が浴びせられた。まともに喰らえば…さっきのダメージと合わせて瀕死になっちまうだろうが…私を舐めるなよ…!
集中豪雨のように飛んでくる霧弾だが…その全てが真っ直ぐ私に向かって来るわけじゃない…。幾つかの霧弾は軌道が逸れてる。
それを見極め…避ける必要がある霧弾だけを正確に把握する…! 限界まで感覚を研ぎ澄ませ…! 〝音〟に集中する…!
聞き分けろ〝音〟を…! より大きな〝音〟…近い〝音〟…迫ってくる〝音〟…、それを意識じゃなく無意識で聞き分けろ…! 動きの無駄をこそぎ落とせ…!
目を見開き瞬き一つせず、無慈悲に降り注ぐ霧弾を避けていく。今はまだ順調に避けれているが…霧弾が降り注ぐ時間は途方もなく長く感じる…。
しかも土に墜ちた霧弾が土煙を巻き上げ…段々視界が悪くなっていく…。いくら〝音〟があっても…視界不良の中じゃ避け続けるのは難しい…。
「ぅぐっ…?! クソ…!」
ついに左肩に霧弾を受けてしまった…、それを皮切りに一発一発と被弾が増えていく…。どれもこれも眩暈がしそうなほど重く痛い…。
だが…こんなもんで私の心は折れない…! 被弾したって関係ない…! 骨にヒビが入ろうと…目に血が入ろうとも…!
アレスが必ず勝機をもたらしてくれる…その希望だけを心に灯して必死に攻撃を耐え続ける…。飛びそうな意識を無理やり繋ぎ止める…。
「──割り込み御免ニ…!! 痛でででっ…! やっぱ…痛いニねコレ…!」
「…っ! オマエ…?!」
「ニキなら…大丈夫二よ…! ニキの頑丈さを…舐めてもらっちゃ…困るニ…! ロイス…! 今のうちニ…!」
「うん…! カカ、ここはニキに任せて一旦下がろう。潰れるにはまだ早いさ…僕等にはまだ役目が残ってるだろう…?」
「ハァ…ハァ…、そうだな…脇役はこの辺で退場するとすっか…。まだ度肝抜かれる主役が控えてっからな…」
<〔Perspective:Alaes〕>
ムルクのおっさんには…思い返せば色々と不自然なところがあった…。何度も狩りをしているところを見学したが…たまにあの人は説明がつかない事を成してた…。
硬い甲殻の生物や…大岩…果てには鉱物さえも剣の一振りで両断してた…。ガキの頃はただただそれに目を輝かせてたが…腕を磨いてみてよく分かった…、あんなのは普通じゃねェんだと…。
パンサー野郎との戦いを終えてからずっと…ムルクのおっさんから掛けられた言葉の…忘れた部分を探してた…。
ずっと思い出せそうで思い出せない…喉元に引っ掛かってるようなモヤモヤを抱いてた…。だがようやく思い出せた…あの時の言葉…。
“「──いいかクソガキ、この世にはな、2種類の強さがあんだ。1つは〝敵を倒す強さ〟、もう1つは〝敵を殺す力〟だ。この違い分かるか?」”
〝敵を殺す力〟…確かにムルクのおっさんはそう言ってた…。〝倒す〟と〝殺す〟…正直俺にはまだ違いがそこまで分からねェ…。
ハンターの主な仕事は護衛と依頼された生物の狩猟…。狩猟ってのは生物の命をいただく行為だ…それは今までもやってきた…。
倒すも殺すも…ハンターの俺にとってはそこまで違いがない…。だがムルクのおっさんは…そこに明確な線引きをしている…。
きっとそれがムルクのおっさんの強さの秘密…──俺にもできる筈だ…ずっとあの人の背中を追って来た俺になら…。
何度も我儘言って仕事について行って…あの人の強さを間近で見てきただろ…。再現できる筈だ…再現性があるのが技な筈だ…!
俺に足りねェのが〝敵を殺す力〟ってんなら…ありったけの殺意を剣に込めてやる…! 柄から切先に至るまで…次の一振りに俺の渾身の殺意で魔物を斬る…!
今アイツ等が死に物狂いで魔物の攻撃を引き受けてるが…信じると決めた…心配はしねェ…。俺はただ…濁りない純粋な殺意だけを研ぎ澄ます…!
「オラニャアア…!! 耐え切ってやったニよ…! 魔物畜生めザマァ見やがれニ…!」
「 “バゥルルーーンッ…!!” 」
「だからと言っておかわりはご遠慮いただきたいニ…!!」
あの攻撃を何とか耐え凌げたみたいだが…魔物は間髪入れず次の準備をし始めた。──させねェ…! ここで決めてやる…!
「〝斑千風〟…!!」
超加速で魔物の方へと接近するが、そのまま足元に潜り込んだりはしない。進行方向にはぶった切ってそのままになってる天尾がある。
今更脚を攻撃したって戦況は好転しねェ…、天尾を踏み台にしてもっと上を狙う…! その為にはもっと速度が要る…!
「〝斑王剋風〟…!!」
パンサー野郎の時は反対方向に使ったから…速度に大した変化はなかった…。斑千風の加速中に同じ方向へ更に超加速すれば…速度は比にならねェ…!
天尾を踏み、思いっ切り魔物へ向かって飛んだ。魔物はアイツ等に夢中でまるで見ていない…この攻撃は防げないだろ…!
殺意を乗せろ…! 殺意を込めろ…! 今の俺が出せる一振りに…! あのクソったれをぶっ殺す一振りに…!!
「〝絶朽奈神〟…!!!」
「 “バゥルルゥーーンッ?!” 」
自分でも制御し切れない速度で魔物の喉元へ突っ込み、出せる全ての殺意を込めた一振りで魔物の首を両断した。
そのまま制御できない体は奥の巨木まで飛び…体を強く打ち付けた…。今までに蓄積したダメージと…物凄い速度が生んだ負荷が合わさり…意識が遠のいていく…。
後は…頼んだぞ……オマエ…等…──
<〔Perspective:Kaqua〕>
“──キーン…!”
「〝絶朽奈神〟…!!!」
「 “バゥルルゥーーンッ?!” 」
「マジか…?! アイツ化け物じゃねェか…」
凄まじい一撃だ…あんなぶっ太い首を一振りで両断するとは…。あまりに凄かったせいか知らんが…無関係なのに〝音〟が聞こえた気がしたぜ…。
アイツの方が悪魔の使いに相応しいんじゃねェか…? ──なんて悠長に考えてる場合じゃねェな…! 間違いなくこれが千載一遇の勝機…!
ズシンッと地面に落下した魔物の生首、今なら簡単に水晶体を狙える…! 魔物は突然のことに困惑してやがるしな…! まさに千載一遇だぜ…!
すぐさま生首に向かって全速力。時間との勝負だ…再生されちまう前に何としてもトドメを刺さなきゃならねェ。
だがそう言ってる間にも…胴体側の断面からウニョウニョと触手の様なものが蠢き始めている…。頭部側の断面と接着しようとしてやがる…。
“──バァン! パキパキパキッ…!”
“──ビュンビュンビュンッ…!!”
断面が活発に蠢き始めた矢先、突如断面が凍り付き、幾本もの矢が突き刺さった。誰の仕業かは言うまでもない…助かるぜ援護組…!
「 “── クギャギャーー!!” 」
援護組の手助けに続いて、今度は上空から急降下してきたクギャが頭部側の断面を何度も何度も爪で斬りつけている。
素晴らしきお膳立てだ、ここまでされたら是が非でも仕留めねェと…皆に合わせる顔がねェな…! やってやらァ…!!
「 “ブゥルル…!” 」
「それは効かねェって言ってんだろ駄馬がァ…! 〝震速捌き〟…!!」
魔物は苦し紛れの舌攻撃で私の進撃を阻止しようとするが、散々霧弾攻撃を浴びせられた後じゃぬるいぬるい…!
的確に舌を弾き、どんどん前進していく。もう少しで生首まで到達する…もう勝利が目前に転がっている。なのに…
“──キーン…!!”
頭に響く不吉な音色…、顔を向けると…私に向かって迫ってくる深紫霧の塊が視界に飛び込んできた…。
そういやそうだ…魔物はついさっきまで次の霧弾攻撃の準備をしてやがった…、首を斬ったってそれまで集めた深紫霧の塊が消えるわけじゃない…。
ヤベェ…避け切れねェ…、今までみたいに霧弾としてならまだ分からなかったが…塊のまま丸ごとは…無理──
希望が消えかかった瞬間、何かに背中を強く押された。勢いよく前に押し出され…体勢が崩れて地面の上を転がった。
すぐに顔を上げて…何が起きたか理解した…、さっきまで私が居た場所にロイスが居たから…。
「ロイ──」
直後ロイスは深紫霧の塊に呑み込まれた…。私は…歯を食いしばって立ち上がり…魔物への進撃を再開した。
立ち止まってる暇はない…今はロイスの心配をしている時じゃない…! 繋ぎ止めてもらった想いを無駄にはしない…!
何度弾いてもひたすら妨害してくる舌を弾き続け、ついに頭部のすぐそばまで接近した。あとは額の水晶体に短剣を突き刺すだけ…。
衝棍から右手を離し、短剣を腰から抜き取ったが…右手を離したことで回転が遅くなり…舌が胴と脚に巻き付いた。
「──ハッ…これで止めたつもりか…?! 残念だったな…ここまで近付いた時点で…! テメェはもう詰んでんだよ…!!」
右腕を大きく振りかぶり、短剣をぶん投げた。投げた短剣の軌道は僅かに水晶体の上を飛び越してしまうが、それでいい…問題ナシ…!!
「仕上げは頼んだぞ…!!」
「任されたニ…!!」
密かに胴体側から頭部の後ろ側へニキが回り込んでいるのは見えていた、アイツがどういう意図でそう動いたのかも理解した…!
ただ負傷した状態で短剣を投げた際のコントロールだけが不安だった…、だから確実に届けられる位置まで近付いた…! 近付けた…! 皆の協力のおかげで…!
「決めろニキ…!!!」
「オラニャアアアアアアアッ!!!」
“──ピシィ…!!”
ニキの怪力で振り下ろされた短剣は、容易に刃の根元まで突き刺さり、水晶体全体に亀裂が入って勢いよく砕け散った。
直後恒例の耳を劈くような咆哮と…これも恒例となる深紫に光る衝撃波が発生した…。当然すぐそばに居た私達はぶっ飛ばされた…。
毎度のことだが…倒した後にダメ押しの追加ダメージ与えてくるのやめてほしいな…。もうこっちはいつでも気絶できるってのに…。
巨木の下までゴロゴロと地面の上を転がされ…ようやく衝撃波が止んだ。一応魔物の方を向くと、真っ黒に染まった魔物の体は早くも崩壊が進んでいた。
双子町の人々を苦しめ…ネブルヘイナに巣食いし生ける災いが今…黒い灰と化して餓鬼月の空に消えていく──。
-古原大の森-
<〔Perspective:Schala〕>
戦いに敗れても…まだ私達の使命は終わっていない…。負けたって命さえあれば…何度でも立ち上がれる…、神の為に身命を尽くせる…。
しかし人数はかなり減った…。先の戦い以前から数名の教徒が行方知れず…、先の戦いではカフルをはじめ…15名が殉職した…。
行方不明の教徒達もきっと…ネブルヘイナの猛獣達にやられてしまっているのでしょうね…。もう私を含め17人しか居ない…半数以上が天国へ昇った…。
だからこそ諦めるわけにはいかない…、命を落とした教徒達の為にも…何としても不敬者共を天に召さねば…。
「──瘴魔司教…先ほど偵察班から…観録北西に深紫の光を見たという報告が入りました…」
「そうか…恐らくは奴等だろう…。まだ魔物と戦闘中か…それともたった今し方魔物を討ったか…、いずれにせよ…俺達は出遅れたわけだ…」
「いかがなされます…?」
「魔物が既に討たれていたとしても…連中は総じて深手を負っている筈だ。すぐに移動はできまい…〝有羽蟲類〟の教徒を現場へ急行させ、息のある者を皆殺しにしろ…!」
有羽蟲類は私含め10人…、全員まだ完全に傷は癒えていないし…瘴魔司教も来られない…。相手も手負いでしょうけれど…果たして私達だけで敵うかしら…。
──いいえシャラ…やるのよ…! たとえ誰1人殺せなくとも…瘴魔司教達が現場に到着するまでの時間稼ぎは有効な筈。
私達が命を落とすことになっても…きっと瘴魔司教ならば手負いの不敬者共を皆殺しにしてくださる…、私達の死は無駄にはならない…。
全ては…神の予定調和を守る為に…!
“──ガサガサッ…!”
「…っ! 全員止まれ…!」
有羽蟲類達に指示を出そうとした矢先、進行方向にある茂みが揺れ始めた。ガサガサと草を掻き分けて…何かがこっちへ近付いて来る…。
また見たこともないような異形の化け物でも現れるのかしら…。これから不敬者共に奇襲を掛けようというのに…無駄な体力は消耗したくない…。
“ガササッ!”
「──何だ貴様は…? 何者だ…?」
「わしか? ワハハハッ! 見ての通りただの老いぼれよっ!」
猛獣でも飛び出してくるのかと思いきや…現れたのは川人族の老人だった。その辺で拾ったであろう木の棒を杖替わりにするほどの老人。
「ただの老人がこんな場所で何をしている…? ここがどんな場所か知らない筈もあるまい…。答えろ…ここで何をしている…?」
「わしは若人達の戦いを観に来ただけじゃよ。いやはやしかし、実に素晴らしい戦いじゃったわい! 昔を思い出して心が奮えてしまったわ、ワハハッ!」
「まあいいだろう…。ならばもう一つ問おう──我々に何の用だ…? 観戦を終えたのなら、戦い疲れているであろうその若人達のもとへ行けばいいだろう…。ここへわざわざ何しに来た…?」
「いやいや、本当はそうしたかったがな…お主等が妙に殺気立っておったから、何事かと思っての。ち~っと様子を見に来たのよっ!」
何とも不思議な老人だわ…。明朗で敵意をまるで感じないのに…まるでこっちの狙いを見透かされているかのような…。
「ここは全域が危険地帯だ…殺気立ってもおかしくはあるまい」
「まあそうじゃな、かく言うわしも道中は殺気立てておったしの。じゃがお主等のは随分と方向を指しとるでな、嫌でも気になってしもうたわい」
「…? 何をわけの分からないことを…」
「そうか分からんか、お主等も若いのォ、ワハハハッ! そしたら単刀直入に要件だけを述べるとするかの。──このまま…何もせずに帰りなさい、黙って真っ直ぐにな」
「──嫌だと言ったら…?」
「老いぼれが何故木の棒を持ってると思う? 悪ガキを躾ける為じゃ…ワハハッ…!」
まさか…瘴魔司教と戦うつもり…!? なんて愚かな…勝てっこないわ…、老人に何ができるというの…!? あまつさえ木の棒で戦おうだなんて…。
「我々の邪魔をするならば…老体であっても不敬者…! 後悔するなよ…?!」
「後悔っ! 経験豊富な老いぼれによく言うわっ! ワハハハッ!」
「減らず口もそこまでだ…! 〝深淵の痕〟…!!」
瘴魔司教は一気に距離を詰め、目にも留まらぬ速さで鞘から剣を抜き、そのまま真横に剣を振り抜いた。
けれど瘴魔司教の剣は虚しく空を切った…。あろうことか老人は…真横に振られた剣を跳んで躱してみせた…。老人とは思えない身のこなし…。
「──〝枯来振り〟…!!」
老人は持っていた木の棒で瘴魔司教の頭部を叩いた…。その衝撃で木の棒はへし折れ…瘴魔司教は地面にうつ伏せで倒れた…。
「瘴魔司教…?! 瘴魔司教…?!!」
何度呼び掛けても応答はない…。そんなバカな…、まだ全快していなかったとはいえ…木の棒の一撃で瘴魔司教がやられるなんて…おかしいわ…!?
「うむ、中々筋がいいな、若さ故の勇ましさもヨシ。だがまだまだ青二才じゃな、こんな老いぼれにやられるようではの、ワハハハッ! ちっと剣借りるぞい」
老人が剣を手に取ると…突然雰囲気が大きく変化したかのように感じた…。決して表面化しない…内に秘められた何かが…顔を出したように思えた…。
「さァてっ、残されたお主等はどうする? この子を担いで大人しく帰ると言うのならば、わしもこれ以上乱暴なことはせん。じゃが…それが聞けんのなら覚悟せねばならんぞ…? わしに剣を振らせたら…ただじゃ済まんからなァ…!」
間違いなく…この老人は只者じゃない…、ひょっとしたら…このネブルヘイナに存在しているどの生物よりも…。
──けれど…私達の想いは決して揺らがない…! 私達の想いは常に神の御心と共に…! 誰が立ち塞がろうとも…使命を全うする…!
「ランルゥ教徒一同──神に代わり…この不敬者をあの世に送ります…!!」
「ワハハハッ! やはり若さとは眩しいなっ! よっしゃ、まとめてかかってきなさい! 人生の大先輩が胸を貸してやるわいっ!!」
──第157話 殺意に朽ちて枯れて〈終〉
3体目の魔物討伐、完了──。




