明日、ヘアースタイル、カリスマ
「カリスマ性あふれるヘアースタイルってどんなだと思います?」
「アフロ」
「・・・・・・・・・・・・」
即答したぼくを、はなさんが何か異様なものを見る目で見てきた。
「何さ? チャンピオンのヘアースタイルだよ。天パじゃないよ? アフロだよ? あえてその髪型を格好いいといえる人は、そのカリスマを理解できる」
「えー・・・・・・」
はなさんには異論があるらしい。
「はなさんだったらどう思うの?」
「・・・・・・どう、と言われると難しいですね」
うむむ、とはなさんは悩みだした。
「そもそも、そこでぱっと答えが出なかったから、サンに聞いたわけでして」
ううん、とはなさんはまた悩みだした。
今日は、サークルの部室にいる。
外はそれなりに涼しいため、今日は窓を開けている。
日差しはそれほど強くないのもいい。
これで、風がそれなりのさわやかさで吹き込んでくれれば、言うことなしではあるのだが、さすがにそこまでは期待できず、部室に置いてあったサキュレーターを回している。
その部室の中、ぼくは放置してあった週刊漫画誌を読んでいたのだけれど、何かを見つけて読んでいたはなさんが発したのが、先ほどの問いだった。
「いえ。そこで聞きますけど、アフロ。格好いいですか?」
「アフロ自体が格好いいんじゃないよ? アフロが似合うのが、格好いいの」
「似合うのが・・・・・・?」
「そう。アフロが似合うには、カリスマが必要なんだよ。必然、アフロとはすなわち、カリスマ性あふれるヘアースタイルなのさ!」
ぼくはそう力説するけれど、どうにもはなさんには伝わりが悪い。
「ちょっとよくわからないですね」
「そっかあ。伝わらないかあ」
ちょっと残念ではあるが、
「まあ、何を格好いいと思うかは人それぞれだし、ぼくの格好いいがはなさんの格好いいと同じとは限らないしね」
「でも、よく考えると、単体で格好いいヘアースタイルって、なんか思いつきませんね?」
「・・・・・・そうだね。ヘアースタイルだけで格好いいヘアースタイル。・・・・・・なんだろう。思いつかないね」
なるほど、と考える。
「ドレッドヘア」
「あれ、頭洗えないらしいから不潔ですよね」
「ツッパリ」
「リーゼントって言いましょうよ」
突き出す男気、とかルビ振ったら楽しいだろうか。
「小学生の時、言ってた理髪店でツッパリを作ってるのを見たことある」
「マジですか?」
「マジ」
はなさんの驚きに、ゆっくりと頷く。
「漫画とかだとさ、ばっちり、というか、かっちり固まってるように見えたけど、割とふわふわしてるんだね。あれ」
顔の前の方へ突き出す前髪が見えたから、ツッパリと思ったけれど、
「でも結構決まってた思い出がある。おぼろげだけど」
「へー」
「一番驚いたのは、いつも会ってた気のいいあんちゃんだと思ってた店員さんが、そのツッパリさんとかなり仲良さげだったことだけど」
「あー・・・・・・」
今だったら、普通にビビったかもしれない。
小学生だったので、かっけー、とか思ってたけど。
「角刈り」
「・・・・・・本物は見たことないですねえ」
「ぼくも見たことない。木枠をはめて作るんだっけ?」
「さあ。絶対にしない髪型なので、調べたことないです」
「まあ、たしかに、ぼくもしない」
むむ、と考える。
「たしかに、よく考えると顔のないヘアースタイルって、なんかないね」
「顔があってこそ、ですよね。・・・・・・そう考えると、顔で似合う似合わないがあるってことでしょうか・・・・・・」
「かもねえ。ヘアースタイルって顔の輪郭の一部って感じだし、そこだけ見るってできないのかも」
「・・・・・・ちょっと面白いですね」
くすくすとはなさんは笑っている。
「・・・・・・ところでさ。なんでカリスマ性のあるヘアースタイルなの?」
「いえ。ここにクロスワードパズルがありまして」
はなさんが見せてくれた。
「・・・・・・すっごい手製感があるんだけど」
「手製ですよ。たぶん、ゴロキュー先輩の手作りですね」
「あー。あの先輩の」
「・・・・・・このクロスワード。ところどころに文字数制限のないワードがあるんですけど」
「それ、間違ってたらクリアできないのでは?」
「一応、間に入る文字とかで分かるようにはなってますけど、無駄に難易度上がってますね」
「・・・・・・うーん。変なゲーム作るなあ、あの人も」
賢いとは思うんだけど、クリアできなかったらどうするんだろう?
「ゴロキュー先輩、クリアできないゲームも平然と置いていくから」
「むしろクリアできないものをここに置いている疑惑もありますけどね」
あり得るなあ、と思いながらも、はなさんの持っている紙を覗き込んでみる。
「学食で一番人気のメニュー。ゴロキューが配信でやったゲームの本数。座右の銘。今日の運勢」
んー、と考えて、
「クリア不可能じゃない? このクロスワード」
「・・・・・・いえ、解くだけなら、なんとか・・・・・・」
はなさんは、ふざけた設問にも着々とマスを埋めていく。
「ぼくさ。クロスワードを全部埋めたことってないなあ」
「え?」
はなさんが顔を上げたので、ちょっと苦笑する。
「いや、クロスワードって、全部埋めなくても答え分かるでしょ? 答え分かった時点で大体解くのやめちゃって・・・・・・」
「埋めるのが楽しいか、解くのが楽しいか、の違いでしょうか」
はなさんは首を傾げつつも、マスを埋める作業に戻った。
「・・・・・・・・・・・・」
集中してるなあ、と思ったので、ぼくは少し離れて様子を窺うことにした。
埋まり具合を見る限り、そろそろ終わりそうではある。
真剣な様子でうんうん考えているはなさんを見ていると、どうやら終わりが来たようだ。
「・・・・・・・・・・・・はい。これで最後」
「お、解けた?」
「はい」
じゃーん、と見せられたクロスワードは、確かにすべてのマスが埋まっている。
「で? 解答なんだったの?」
「ええっと・・・・・・」
んー、とはなさんが文字を抜いて並べていく。
「・・・・・・・・・・・・うぶらぐら?」
「・・・・・・意味のない文字の羅列?」
「みたいですねえ・・・・・・」
結果を見て、はなさんは苦笑を浮かべて、紙を置いた。
んん、と伸びをして、
「いい時間です。帰りましょうか?」
「そうだね」
まあ楽しそうだからいいかと思う。
「明日ぐらいに、ゴロキュー先輩に解答を教えてあげましょう」
「先輩、喜びそうだねえ」
うぶらぐらうぶらぐら。
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