パンケーキ、めった刺し、最高峰
「やほう。はなさーん!」
できるだけ、明るく高いテンションであいさつをすること。
「なんですか? その無駄に高いテンション」
「無駄に高いとな! そんなことはないさ!!」
厳しいことを言われてもくじけない。
ぴしっとポーズを決める。
「・・・・・・・・・・・・」
じっと見つめられた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ポーズを決めたまま、反応を待つ。
「・・・・・・サン?」
首を傾げられたところで限界だった。
「疲れた。このテンション疲れる・・・・・・」
肩を落とし、ぐったりとした声が出た。
「・・・・・・・・・・・・一体、何を始めたんですか?」
とても不思議そう、というより、なんだかかわいそうなものを見る目が混じっている気がする。
「いや、今日はなんか朝起きた瞬間にどっと疲れを感じて、ここは無理やりにでもテンション上げていかないとだめだな、と」
「その考え方についていけません。・・・・・・何があったんですか?」
「うーん。・・・・・・あのね?」
「はい」
「パンケーキって、あるじゃない?」
思い出しつつ、答える。
「ちょっと前に、スーパーに行って晩御飯どうしようかなって考えてた時に、ホットケーキミックスを見つけてしまい」
「しまい?」
「つい買ってしまった」
ふむ、とはなさんが唸る。
「ホットケーキミックス。・・・・・・不思議と、名前を聞くだけで甘い匂いが・・・・・・」
「分かる。ていうか、するよね?」
「不思議とイメージしやすい匂いですよね」
「そう。パッケージを見たら、なんか忘れられなくなり」
「・・・・・・ほう」
「買ってしまった」
「そういうこともありますよね」
うんうん、とはなさんも頷いている。
「ただ、晩御飯にするにはどうかな、と考えてちょっと置いておいたんだけど、昨日ちょうどいい具合に休みだったから」
「ほうほう」
「作りました」
「作りましたか」
胸を張ってみる。
はなさんは苦笑している。
「ホットケーキミックス。卵。牛乳」
「牛乳?」
「水でもいいけど、ぼくは牛乳入れるのが好き・・・・・・。ちなみに、入れる液体をジュースにしたりしても味が変わっておいしいと思う」
「ほう。今度試してみましょう」
「・・・・・・で、話を戻すけど」
「はい」
パンケーキの話だ。
「・・・・・・普通に焼いてたら、結構な量になっちゃって」
「ああ。ホットケーキミックスって、一袋って大体二、三人前くらいの分はありますよね」
「そうなんだよ。フライパンサイズで四枚」
皿に積みあがっていた。
「単純に食べてると結構飽きるね」
衝動的に食べたい、と思ったからだけでは、ちょっと量が多かった。
「ジャムとか生クリームとか用意してたけど、なんだかんだちょっと飽きたね」
「あらら」
「とはいえ、余らせるのもどうかと思ったから、ほぼ一日かけて食べた」
夕食も結局パンケーキになってしまった。
「なんか、途中で腹立ってきて、フォークでぷすぷすめった刺しにしたりしてたけど」
「食べ物で遊ばない」
「うん。ぼろぼろになってしまって申し訳なくなったので、ちょっと食べ方を変えようと思って」
「?」
「ボウルに余ったパンケーキをちぎって入れて、余ってた生クリームとジャムと、あとついでに冷蔵庫に余ってたヨーグルトも混ぜて入れて、冷凍庫に入れて一時間」
「おや?」
「半分凍ったアイスみたいな感じになったので、それを晩御飯にしました」
「あら。なんだか言葉だけ聞くとおいしそうな・・・・・・」
「いや、なんかうまく固まってなかったし、むやみやたらと冷たいし、ぼろぼろぐちゃぐちゃな感じで、決しておいしかったとは言えないかなあ・・・・・・」
「あらまあ」
「ボウルから直で食べてたから、正直、食べにくかったし、ちょっと失敗したかなあ、と思った」
「なるほど」
「もう少し固まってれば、皿に逆向きにひっくり返すとか、できてもよかったかも?」
「なるほど」
「甘さがすごくてさ」
「それは、まあ、そうでしょうね」
「塩気のある料理も一緒だったら、もう少し何とかなったかな」
結構甘ったるさが口の中に残っている。
「まあ、とにかくね、その甘さとかがなんか寝て起きても口に残ってる感じでさ」
うへえ、と口を横に伸ばしてうめく。
「お茶でちょっと流してはみたんだけどね。なんか気分がすぐれない感じ」
「そうでしたか。それで、最初のあのテンションに繋がった、と」
「もう、無理やりでもテンション上げていくしかないかなあ、と」
ははは、とはなさんが笑った。
「ちょっとおかしな結論に着地しましたね」
「あはは・・・・・・」
言われても仕方ないかなあ、と思う。
「まあ、あんな変なテンションになることもなかったよねえ」
「まったくですよ」
はなさんの言うことももっともだし、
「そういうわけで、ぼくは今日は極めてローテンションです」
「はいはい」
はなさんも適当に流すことにしたみたいだ。
「お昼前には復活する、はず」
「はいはい」
+++
昼前。
「・・・・・・お昼ご飯。どうしようかな」
「どうします?」
「こうね。口の中の甘ったるさを吹っ飛ばす、がつんとした肉がいい!」
「なるほど。では、そういうところに行きましょう」
「・・・・・・焼肉とか食べたいね」
学生のお財布に直撃する昼食ランク最高峰とは思うけど、
「普通に牛丼とかでいいかな?」
財布の中身を見て、ぼくははなさんにそう提案する。
「わかりました。わたしもそれでいいですよ」
「うん」
牛丼は、普通においしかったです。
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