煮込みハンバーグ、朝弱い、安らぐ
朝弱い、とは思わないけど、ちょっと眠い。
あふ、とあくびをしたところで、はなさんが苦笑した。
「眠そうですね」
「起きたばっかりってわけじゃないけどね。なんか眠い。・・・・・・昨日の夜暑かったしさあ」
「まあ、そうでしょうね」
苦笑しながら頷いているあたり、はなさんもやはり昨日は暑かったのだろう。
「はなさんは平気なの?」
「エアコンと扇風機の合わせ技で眠る直前だけすごく涼しくしておけば、まあ、とりあえず大丈夫ですね」
「途中で寝苦しくなって起きたりしないの?」
ぼくは昨日寝汗で結構気持ち悪くて起きてしまった。
しょうがないので、途中で起きた後は着替えてエアコンで部屋を冷やしてから寝た。
とはいえ、そのおかげで睡眠時間がかなり中途半端なものになってしまい、今日は眠い、という事態だ。
「わたしは、あまり。まあ、わたしの部屋は夏は涼しいですから」
「そうなんだ」
「部屋の作りの問題なのか、夏は割と涼しいんですよ。・・・・・・冬は逆に暖房をつけていても寒いですが」
「それはそれで困るね」
夏は涼しくても、冬が寒いか。
「冬は部屋でも結構着込むことになりますね」
「となると、冬にはなさんの部屋に行くのはやめた方がよさそうだね」
ぼくが笑いかけると、はなさんも頷いた。
「まあ、わたしの家は一軒家ですし、リビングとかは普通に暖かいですから」
「そうだね」
ふう、とため息を吐いたところで、
「ぼくの部屋は、アパートで通気性悪いせいか、結構暑いよ」
「ですか。・・・・・・ああ、自分に当たらない範囲で風を動かすといいのでは?」
「風?」
「ほら、サキュレーターとか、そういうやつで」
「ああ。あの、ちっちゃい扇風機みたいなの・・・・・・」
ふむ、と考える。
「一台千円くらいで売ってますし、部屋の隅に置いてみては?」
「考えてみる」
「あとは、氷嚢とかで枕を冷やしてみたりしたらいかがです?」
「・・・・・・おー」
その手があったか。
「まあ、涼しくする手はいくらかありますし、きちんと眠れるようにがんばってください」
「眠るために頑張りたくないなあ・・・・・・」
ふふふ、とはなさんは笑って、
「講義が始まりますよ。寝ないでくださいね」
「がんばる」
+++
「眠い時に眠らないように頑張るって、かなり疲れるよね」
「あはは」
はなさんがぼくのぼやきに笑っている。
「むしろ、集中力がなくなる方が問題ですけどね」
「ほんと、眠い時ってなんにも集中できないけどね」
「ちゃんと睡眠時間は取らないとだめですよ」
「クーラーつけたまま寝るか」
「それはやめなさい。本当に風邪をひきますよ」
はなさんにたしなめられた。
確かに、クーラーつけたままだと普通に風邪をひくだろうけど。
「暑さはもうどうしようもないですからね。諦めて扇風機とかいろいろ使ってみましょう」
「はーい」
頷く。
いろいろ考える。
「安眠に使える何かを探すか」
「枕とかですか?」
「涼しい枕カバーとか、敷布とか売ってるじゃん」
「ああ。そういうのもありますね」
「涼しい服とかあるかな」
「汗をよく吸って、通気性のある服ですね」
どこかの量販店とかで買わないとなあ、と思う。
「アロマとかで、安らぐ匂いを探すとかはどうです?」
「アロマ。キャンドルとか、御香とか?」
「ちょっとしたポプリとかでもいいんですよ?」
「ぽぷり。匂い袋」
でも、
「匂いものはちょっとなあ」
「おや。いやですか?」
はなさんが首を傾げている。
「慣れてないし」
「なるほど。ではわたしが何か選んであげましょう」
はなさんが胸をぽんと叩いて、
「任せなさい」
「・・・・・・頼もしい?」
どうなんだろう。
とはいえ、はなさんの選んだものなら、ハズレはないだろうし。
「お願いします」
「ふふふ。まあ、いい感じのやつを選んであげますよ。今度の休みで何か探してきますから、楽しみにしておいてくださいね」
「うん。楽しみにしてる」
はなさんは、にこにこと笑っている。
「さて、と」
今日の講義は終わったし、
「ぼくとしては、今日は安眠したいので、何かおなかにおいしいものを買いに行きたいところ」
「あら? なんだったら、うちで食べますか?」
はなさんが誘ってくれたけれど、
「んー? いや、今日はやめとく」
「そうですか」
「うん。今日はちょっと何かじっくり作って食べる」
自分で作って食べたいな、とそういう気分だ。
「何かじっくり?」
「ちょっと手間かかるやつね。で、しっかりおなか一杯にする」
「ほうほう。・・・・・・候補は?」
「とりあえず肉」
「とりあえず、ですか」
「白いご飯に合うやつ」
「それはよいですね」
「ちょっと味濃い目かなあ? スープと合わせて、おなかが膨らむやつを」
ふうむ、と考えて、
「まあ、スーパーで考えるかな」
「わたしもちょっと行って何にするか考えますか」
「一緒に行く?」
「そうしましょう」
+++
はなさんとスーパーの中を歩く。
「はなさんはどうするの?」
「サンが肉にするというので、今日は魚の焼き物にします」
「おお。・・・・・・焼き魚ってあんまりおなかにたまらないんだよね」
「そうですね。・・・・・・なんでしょう? おなかに溜まりそうにないものほど、健康にはよさそうな気がしますね」
「あ、それは分かる気がする」
うんうん、と頷く。
いくつか見て、
「決めた」
「ほう?」
「ハンバーグにしよ」
「ハンバーグですか。いいですね」
ひき肉と、玉ねぎと、パン粉と、とカゴに入れていく。
「一手間加えてみましょうね」
「ん?」
ちょい、とカゴに付け足された。
「えっと、トマト缶?」
「ええ。わたしオススメ。コンソメとトマト缶でハンバーグを煮込んで、煮込みハンバーグです」
「ほうほう」
「あとは粉チーズとかもいいですねえ」
「うわあい。おいしそうな並び」
「作り方、分かりますか?」
「普通にハンバーグ作って、トマト缶流しこんで、焼く?」
「最後に煮込めばいいですね。お皿に持ったら粉チーズを」
「いいねえ。おなかすいてきた」
「ふふふ。出来たら、そうですね。写真撮って送ってください」
「わかったー」
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