パソコン、動物、アイスクリーム
「あっつぅ・・・・・・」
汗がじんわりとにじみ出る。
まだ夏本番、というわけでもないだろうに、この暑さは何だろうか。
「暑いですね」
はなさんも、汗をぬぐいながら答える。
「今日は風がないからかなあ」
「そうですね。日差しも強いですし」
「あー。・・・・・・あつい」
半袖のシャツでも普通に暑い。
「建物の中行こう。外はだめだ」
「そうですね。日差しがなくなれば、まだましでしょう」
大学の建物の中は、外に比べればずいぶんと快適だ。
空調がしっかりと効いているからだろうか。
「建物の建材とかが特別だったりするのかな?」
「かもしれませんけど、単純に空調がしっかりしているだけだと思いますよ?」
とにもかくにも、外よりはまし。
「ちょっと不思議だよね」
暑さから逃れて落ち着くと、ふと疑問がわいた。
「何がですか?」
「夏になったらさ、これぐらいは平気な暑さじゃない? この季節だとやたら暑く感じるけど」
「ああ。それは分かる気がします」
うん、とはなさんも頷く。
「たぶん、季節感の問題なんでしょう。この時期だったらこのくらいの暑さと、体が認識しているから、それ以上に暑くなると余計に暑く感じるという」
「そういうもの?」
「夏は暑いものと、体が覚えているので、夏は暑さが平気になるんですよ」
「そういうものか」
ふう、とため息を吐いて、ハンカチで汗をぬぐう。
「・・・・・・こう暑いとさ、汗が面倒だよね」
「そうですね」
「文字書いてるとレポート用紙が手にくっつくとか」
「パソコンのキーボードを叩いていたら、汗でしっとりと机が濡れていたとか?」
「あー。あるある」
思い当たることはたくさんある。
「この季節になってくると、チョコレート製品はろくに持ち歩けなくなるし」
「溶けますからね」
「家で冷蔵庫に入れておかないと」
「冷えたチョコは、それはそれでおいしいですけど」
「チョコが溶けるのは口に入れてからでいい」
「まったく同意ですけどね」
はなさんもくすくす笑っている。
「何はともあれ、今日は暑い」
「何か飲みますか?」
「いや、アイスクリームを買いに行こう」
「ほう」
決めた。
「この時期だからこそ、ちょっと高めなアイスを買う!」
「なるほど。いいですね」
「でかサイズなアイスはこの季節にはちょっと重い。ちょっと高めなアイスなら、ちっちゃくてちょうどいいと思うの! おいしいし!!」
「ちょっと高め。・・・・・・予算はいかほどで?」
「・・・・・・・・・・・・五百円だ!」
「それはさすがに高すぎですよ」
「だね。三百円くらいでいいか」
「二百円でも十分な気はしますけどね」
おいしいアイスクリーム。
「あー、でも、なんだろう。コンビニアイスじゃなくて、店で売ってる機械で巻いたソフトクリームが食べたいかも」
「なるほど。あれですか」
「コーンがいい感じの」
「底の方にフレークが詰まってる」
「スプーンで食べるのもよし」
言ってる間に、どんどん食べたくなってきた。
「店で売ってるソフトクリームってちょっと固いしさ」
「しょうがないとはおもいますけど」
「でも、どうせなら柔らかいソフトクリームが食べたい。・・・・・・学食にないかな?」
あんまり外は歩きたくないので、近場で食べられるところを探す。
最悪、大学内のコンビニになるかもしれないけど。
「ここの学食にはないですけど、ほら、大学内の喫茶店」
「あっちにはあるの?」
「ありますよ。この間メニューで見ましたから」
「なるほど。じゃあ、行こう」
「外、暑いですけど」
「・・・・・・・・・・・・できる限り、建物内を伝って行こう」
「日陰を探しながらですね」
+++
はなさんと一緒に喫茶店にたどり着く。
「お。売ってる」
食券を買って、ソフトクリームをもらう。
「わざわざ台がついているとは」
針金で作ったような細い金属の輪の台に、ワッフルコーンのソフトクリームが立てられている。
プラスチックのスプーンを持って、テーブルについて、向かいに座るはなさんに、二つのうちの一つを渡す。
「はい。はなさん」
「ありがとう。サン」
はなさんが席を取り、ぼくが二人分のソフトクリームを買ってくる。
役割分担だ。
周りを見れば、やはり暑いのか、冷たい飲み物や、ぼく達と同じようにソフトクリーム、アイスなどを食べている学生がいる。
「あー。冷たくておいしい」
「ですねえ」
しばらく二人でソフトクリームを食べる。
「・・・・・・アイス。冷凍庫に常備する時期が来ただろうか」
「そろそろいい季節ですしね」
「夏場になったら、ファミリーサイズのアイスを入れておこうか」
「一人で食べるんですか?」
「イケる、と思う」
「おなか壊さないでくださいよ?」
「・・・・・・・・・・・・コーヒーフロート」
「ふむ」
「・・・・・・・・・・・・冷たいアイスに、あえて熱いコーヒーを合わせるとかどうだろう」
「どうだろうって、普通においしそうですけど」
「じゃあ、熱いコーヒーでコーヒーフロート」
「すぐ溶けるでしょう。それ」
「だからおいしい」
「いえ。別々にしましょうよ。コーヒーが冷たくたって溶けるんだから」
「それもそうか」
むむ、と考えて、
「・・・・・・コーヒー買ってくる」
「じゃあ、わたしの分もお願いします」
「まかされて」
新しい食券を買って、ホットコーヒーを手に戻る。
「はい」
「ありがとうございます」
ソフトクリームで冷えた口に、熱いコーヒーで温める。
「・・・・・・あー。贅沢感」
「言いたいことは分かります」
店内は快適な温度で、アイスとコーヒーで体もいい具合な温度になっていると思う。
「もうちょっと休んでいく?」
「もう少しすれば、日も沈み始めますし、暑さも落ち着くでしょうから」
「だねえ」
ゆっくりする、というのも大事だ。
「そういえば、日程決まりそうだよ」
「ああ。バーベキューですか?」
「うん。今度の三連休の真ん中の日曜日。どうかな?」
「いいですよ」
「よし。それで決まり」
楽しみだね、といえば、楽しみですね、と返ってくる。
「・・・・・・夕方過ぎだから、涼しいといいけど」
「もうすぐ夏ですから」
「エアコン使うかなあ?」
「暑さに負けますよ?」
「む」
「暑さに慣れれば、夏も過ごしやすくなりますし、できるだけエアコンは使わないように」
「・・・・・・・・・・・・はあい」
「今の時期なら、窓を開けて扇風機を回すだけでだいぶ違いますから」
「むう」
暑さに負けたっていいじゃない。人間だって動物だもの。
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