文面、BB弾、詐欺
拾った。
小さくて、黄色い玉。
指先分くらい。
「・・・・・・BB弾?」
大学の構内に、なぜこんなものが落ちているのだろうか。
「・・・・・・んー」
いやまてよ、と思う。
そういえば、ぼくの家の近所でも、なんでか知らないけどBB弾って結構落ちてたような気がする。
「・・・・・・まあ、誰かが近所でぶっ放したんだろうけど」
サバゲーマニアか、あるいはエアガンの試し打ちか。
ばねで発射するおもちゃを持っている友達もいたし、たしか何かの戦隊もののロボットのおもちゃに、BB弾を発射する機構を持っているものもあった気がする。
「・・・・・・でも、なんで大学に?」
ふむ、と拾ったBB弾を手に考える。
「サン? どうかしたんですか?」
「はなさん」
はなさんが声をかけてきた。
はなさんは、ぼくが持っているものに見て、
「BB弾?」
指先でつまむように持っている小さな黄色い球だ。
「誰かが大学の構内でサバイバルゲームでもやったのかな?」
「どうでしょう? これだけ小さい球ですし、それに、サバゲー研究会、とかいうサークルもあった気がしますから、そこのでは?」
「こぼしたとか?」
「ここ、建物の影になってますから、試し撃ちをしたとかかもしれませんよ?」
「なるほど」
まあ、大体そんなところだろうと思う。
「それに、落ちているのも一発だけでみたいですし、おそらく研究会のものじゃないかとおもいますよ?」
「? なんで?」
「ああいうゲームをちゃんとするところは、使った弾は全部回収する、と聞いたことがあります。回収できないところでやるときは、放っておけば自然にかえるものを使うとも」
「あー。一発して落ちてないのは、掃除したときに見逃したから、ってことか」
「そういうことですね」
なるほどなあ、と頷き、ぼくはBB弾を近くのゴミ箱に捨てた。
「サバイバルゲームかあ」
腕を組み、ううん、と唸る。
「興味あるんですか?」
「ううん? ぜんぜん。テレビゲームならまだしも、現実でやる気はない!」
思い切り首を振って否定する。
「田舎の方だとさ、たまに道にBB弾が落ちてるの。なんでだと思う?」
「え? 田舎っていうと、山とかですか? サバイバルゲームですか?」
「違うの。畑とか田んぼに来る鳥とか動物に向かって打つんだよ。実銃ほどは危なくないけど、ビビらせるにはちょうどいいから」
「あー、なるほど」
「とはいっても、やっぱり弾が飛んでいくし、危ないから、あんまりやらないようになったみたいだけど」
「でしょうね」
はなさんと歩きながら、話をする。
「BB弾っていうと、近所のお祭りの夜店で、BB弾を撃てる鉄砲とか売ってたなあ」
「こっちのお祭りでもありますよ? わたしは買ったことありませんが」
「小学生のころは、持ってるとヒーローだったけどね」
懐かしい、と思う。
「みんなで代わる代わる撃って、BB弾全部なくなって、なんの役にも立たなくなるまでが一連の流れだった」
「それはそれは・・・・・・」
はなさんも苦笑している。
「ま、そういう話はいいや」
「?」
話を切り替える。
先日からしている話の続きだ。
「鍋の話をするべ」
「鍋」
「そそ。この間言ってたじゃん?」
「ああ。みんなでお取り寄せした食材で鍋するべって?」
「そ、それ」
うんうん、と頷いて、
「とりあえず、適当にやろうぜ、と」
「夏も近いのに、鍋ですか」
「バーベキューにする?」
「うーん。・・・・・・どっちがいいでしょうね」
「じゃあ、夏だしバーベキューにしようか」
正直どっちでもいい。
真の狙いは別にある。
「湯原さんの娘さんと友達になりたい」
「言ってましたね。そんなこと」
「いや、まあ、連絡先は交換してるんだけどね?」
「いつのまに・・・・・・」
「いやあ。この間、バイト先に湯原さんがやたら若い娘さんと一緒に来てさあ。・・・・・・その時に知り合った」
「それ、もはや友達になっているのでは?」
「うん。まあね」
それはそう思う。
「ただ、はなさんとか、ナオさんも友達になりたいでしょ?」
「まあ、それはそうですね」
「ちなみにね、こんな人」
一緒に撮った写真を見せる。
「・・・・・・・・・・・・詐欺では?」
「わかる」
湯原さんのおっさん顔と全く似ても似つかない娘さんの美人っぷり。
「奥さん。相当美人だったんだろうね」
「そうなんでしょうね」
「ちょっと話したけど、あっちもはなさんやナオさんと会いたいって言ってたし」
「あらまあ」
「お父さんはお人好しなので、友達は選ばないとダメなのよって、ファザコン全開なこと言ってた」
「病んでません?」
「いや? 大丈夫じゃないかな?」
うん、と頷いて、
「さっさと大学で再婚相手探してこいとか言ってたし、多分そこまでじゃないよ」
「それはそれですごいことをいう娘さんですね」
「美人だけどかっこよ、な感じだったよ。ぼくは仲良くなれそうと思った」
しっかりしている、というのが感じられた。
はなさんも大人っぽいけれど、あちらはもっとしっかりしているように感じた。
「なんだかんだ、苦労した人だろうし」
「そうでしょうね」
ちょっと遠くの大学に言っている、という話だったが、週末などに会いに行ける程度の距離だそうだ。
聞いたところによれば、せいぜいで電車に揺られて二時間ほど、と言っていたし、
「会おうと思えばいつでも会える距離」
「なるほど。となると、ますます親睦会が重要ですね」
「ねー」
どうしようかな、とも思う。
サークルの先輩たちを何人か誘ってみるのもいいかもしれない。
あの人たちも、湯原さんとはあまり話せていないから、話してみたいと言っていたし。
「・・・・・・・・・・・・というか、湯原さんを勧誘したのって誰だ?」
「あー。そういえばそうですね。わざわざ年上のおじさんを勧誘するとか。誰でしょう?」
「思い当たらないんじゃなくて、何人か思い当たるあたり、うちのサークルの先輩方はやっぱり濃いよね」
「ですねー」
あはは、と笑う。
「まあ、ちょっと誘い文句かけてみよっと」
「あら」
「どうせなら、湯原さんに黙ってセッティングして驚かせてみよう」
「向こうはのってくれますか?」
「ノリはよさそうだったから、多分平気」
「それは楽しみですね」
「ね」
どうせなら、しっかりと招待状でも作ろうか。
文面をどうしようか、などとはなさんと話し合いながら、ぼく達は家路についた。
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