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プラカード、ミステリ、進む

 ぼんやりとしている。

 ちょっと日差しは強いけれど、風はそれなりで気持ちいい。

 日差しの当たる場所にいると大変だけれど、日陰なら気持ちよく過ごせるだろう。

 芝生とかあったら、昼寝に寝っ転がるのもいいかもしれない。

 とはいえ、今のぼくはそんなことはできない。

「うへえ」

 帽子をかぶってきてよかった。

 はなさんに渡されたものだけど。

 日向だと、日差しは強いのだ。

 日焼け止めも塗られた。

 世話を焼かれた、という感はあるけれど、この日差しだと必要だったなあ、と分かる。

 あとで、さすがはなさん、と褒めたたえておこうと思う。

「さーてと」

 手に持っていたプラカードを、気持ち高めに持ち上げる。

「どうなんだろうね」

 大変な仕事だ。

 やっていることは突っ立っているだけだけど、プラカードを持っている、というのが結構大変だ。

 普通に重い。

 それなりに長さがあるためか、結構な重さを感じる。

 辛かったら地面に置くこともできるけれど、それだとぼくの胸くらいまでしか高さがないため、ときどきは少し上に掲げる必要がある。

 それが、今日のバイトだ。

 プラカードを持って、イベントに来た人の案内をする。

 わざわざ専用の制服まで来ている。

 季節を考慮してか、半袖で薄手なのはありがたいが、それでもちょっと暑い。

 人が途切れたタイミングを見計らって、タオルで汗を拭き、水分を取る。

「なんか、人気のイベントなのかな?」

 ぶっちゃけ、はなさんが持ってきた短期バイトなので、具体的にどういうイベントなのかはよく知らない。

 仕事として、プラカードを持って、順路の一つに立っていてくれ、というのがバイトの内容だった。

 立っているだけで日当がもらえるのだから、ある意味楽な仕事だが、

「・・・・・・地味につらい」

 本当、地味につらい。

 休憩時間まで、あと一時間。


+++


「お疲れ様です」

「おつかれー」

 うえー、と机に突っ伏す。

 はなさんは、そんなぼくを見て苦笑している。

「辛いですか?」

「あっつい。・・・・・・別にまだ夏じゃないはずなんだけど」

「まあ、いい天気ですからね」

「はなさんの方はどうなの?」

「一応、屋根のあるところでの仕事、ですけど」

 んん、というはなさんの顔は、なんだかめんどくさそうだ。

「何の仕事?」

「受け付けですね。サンがプラカードで誘導した先で、受付。終わったら景品を渡すのも仕事ですが」

「・・・・・・・・・・・・結局さ、これ何のイベントなの?」

 質問してみたけれど、はなさんはふむ、と顎に手を当ててから、指を一本立てて、

「なんだと思います?」

 にこやかに聞いてきた。

「・・・・・・ぼくの持ってるプラカードには、なんかのゲームの名前。・・・・・・なんかソシャゲで見たことはある。やったことはないけど」

「らしいですね」

 なんかはなさんが、がんばってテストの答えを考える子供を見る目をしている。

「・・・・・・だから、ゲームに関連するイベントだよね?」

「まあ、イベントは、アートギャラリー。・・・・・・要は、そのゲーム内で使われているイラストとか、関連イラストとか、あとはグッズの展覧、販売をするイベントですね」

「あ。答えちゃった」

「まあ、プラカードをじっと読んでればなんとなく想像はついていたでしょう?」

「まあね。・・・・・・でも、結構人来てたよね」

「そうですね。それだけ人気のゲームなんでしょうね。アニメやコミックもあるみたいですし」

「名前は聞いたことあるけど、ぼくはやったことないんだよね」

「わたしもないです」

「・・・・・・・・・・・・なんでこのバイト取ってきたの?」

「先輩のススメですよ」

「あのひとかー」

 納得した。

 なんかこういう系統の短期バイトばかり集めてくる先輩が、サークルにはいる。

 ちょっと急にお金が欲しい時、聞けばとりあえずなんか仕事くれる、と評判だ。

 実際、ぼくも暇な時に仕事の斡旋を頼んだこともある。

「でも、ソシャゲねえ」

「聞いた話だと、元は家庭用コンシューマーゲームで、そこから何本か出てからソシャゲになったとか。そのソシャゲが結構ヒットしているらしいですね」

「・・・・・・あー。コンシューマーゲームの方はやったことあるかも」

「なるほど」

 ぼくは、ソシャゲになっていることは最近まで知らなかった。

「それでかー。なんかシャツにキャラ絵が描いてある人とか、同じキーホルダー付けてる人とかいるの」

「たぶん、ゲームのキャラクターなんでしょうね」

「楽しそうならいいんだけどさー」

 ぐて、と力を抜く。

「裏方は大変。ぼくは思い切り表だけど」

「あはは」

「はなさんは受付だっけ?」

「ええ。ちょっとしたゲームがありますから。その受付です」

「ゲーム」

「なんでも、ミステリ風に、謎解き、だとか?」

 内容までは、さすがに知らないらしい。

「で、クリアしたら景品。・・・・・・限定グッズ?」

「ええ。ゲーム内で使えるシリアルコード付きの何かだとか」

「へー」

 正直、やってないゲームの内容に関しては、あまり興味はわかないけれど、

「ま、バイトだし、しっかりしないとね」

「日射病なり熱中症になり、ならないようにだけ、気を付けてください」

「はーい」


+++


 プラカードを持って、やってくる人の列を誘導する。

 時々途切れはするものの、基本的にはひっきりなしに来る。

「ふーん・・・・・・」

 なんだか、いろいろ楽しそうにも見えるし、不思議な熱を持っているように見える人達だ。

 まあ、ゲームを楽しむために、こんなところまで出向いてくる人たちだしそれなりに熱があるのだろう。

 時々、ブースやゲームコーナーなど施設の場所を聞かれるから、簡単に行き先を教える。

 進む方向を指示するプラカードは、やっぱり少し重いけれど、たまに写真を取っていく人もいるから、あまり地面に下ろすわけにはいかない。

「もう少し」

 がんばろ、と思った。

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よろしくお願いします。

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