不透明、暴風警報、柔軟剤
「今日はさ。・・・・・・天気が悪いよね」
「そうですね」
はなさんと窓の外を見て、
「・・・・・・風つえー」
窓ガラスががたがたと揺れている。
空の上の雲の流れが速い。
木々はざわざわと揺れているし、結構な風だ。
「雨が降ってないだけ、まだましですけどね」
はなさんも外を見ながら言う。
「雨が降ってたら、全身ずぶぬれだね。傘とか意味なさそう」
「というか、傘なんて差したら風で持って行かれるか、よくて傘が折れますよ」
「あー」
たしかに、街路樹が結構しなっている。
さっきこの建物に入るまででも、飛ばされるかも、と思ったくらいだ。
「・・・・・・これ、夜になったら雨降ってくるね」
「台風じゃないのが不思議なくらいですね」
天気予報では、台風とは表示されていなかったけど。
「暴風警報は出てたね」
「かなりやばめですね」
うーんとはなさんが考えている。
「今日は、本当にはやめに帰った方がいいですね」
「そして家で一人の時に停電とか起きるんですね。知ってます」
なんかそうなる気がした。
だけどはなさんは苦笑して、首を振る。
「・・・・・・台風でもなければ雷が鳴っているわけでもないんだから。大丈夫ですよ」
「まあ、そうだね」
でもなあ、と窓の外を見る。
「風の強い時の外の音って、なんか不安になるよね」
「それは分かります」
うんうん、とはなさんは頷いて、
「こういう日は、さっさと寝てしまうのが一番です」
「でも、こういう日だからこそ、テンションも上がるよね」
「・・・・・・子供じゃないんですから」
なんかたしなめるみたいに怒られた。
「明日は雨かなあ・・・・・・」
「そうなりそうな気はしますね」
「洗濯物。部屋干しかな」
「生乾きになりそうですが」
「季節的に、結構蒸し暑くなりそう」
「エアコン、つけますか」
はなさんと言い合いながら、窓の外を見ていた。
+++
洗濯機の洗剤入れに、洗剤と柔軟剤を入れる。
あとは自動で洗濯してくれる。
便利。
結局あの後、どこかに寄ることもせずに、ぼくはアパートに戻ってきた。
はなさんも同じように家に帰って行った。
まだ夕方にもなっていない時間だったので、洗濯機だけ回してしまおうと思った。
「・・・・・・んー」
夕食は、冷凍食品のチャーハンにしようか。
インスタントの卵スープがあるし、合わせればちょうどいい感じになるだろう。
まだ、夕方には少し早い。
何をしようかな、と思ったところで、
「・・・・・・」
はなさんから、電話がかかってきた。
「やほ。はなさん」
『調子はどうですか? サン』
「ちょっと暇を持て余してる。夕食には、まだ早いから」
『サンもですか。わたしもですよ』
くすくすとはなさんの笑い声がする。
「ちょっと、おしゃべりしようか」
『そうですね』
腰を下ろして、壁に背中を預ける。
「はなさんは、夕食どうするの?」
『ちょっと時間があるので、カレーを煮込んでます』
「わあ。いいなあ」
『サンはどうするんですか?』
「冷凍食品のチャーハン。あと、卵スープかな」
『シンプルですけど、そちらもそちらでおいしそうですね』
「そうだけど、ぼくもはなさんのカレー食べたい」
『わたしのは無理でしょうが、カレーならレトルトでもいけるのでは?』
「あー、あったかなあ」
『チャーハンがあるなら、その上にかけてしまいなさい』
「かれーちゃーはん・・・・・・。味濃そう」
『濃いですよ。おなか一杯になりますよ』
ふふふ、と笑い声が漏れている。
なんだか、はなさんのにこやかな顔が見えた。
「・・・・・・やってみようかな」
『はずれはないですから。大丈夫』
「うん。そうだろうね」
『・・・・・・』
ちょっと、はなさんが黙った。
『やっぱり、風の音がすごいですね』
「はなさんの方も?」
『ええ。いまも結構がたがたごうごうと。・・・・・・ちょっと心配になります』
「あんまりうるさい時は、ヘッドホン付けるしかないかな、と思うよ」
『まあ、そうですね。・・・・・・これだけうるさいと、眠る時も気になるかも』
「そういう時は子守歌だ」
『自分で?』
「いや、動画配信サイトを覗けば、よく眠れるがうたい文句の音楽がいくらでも落ちてるし」
『実際、あれって眠れるんでしょうか?』
「・・・・・・・・・・・・んー」
どうだろうか。
「寝落ちするのは確かだけど、途中で別の動画に変わった瞬間に、広告の音で起きちゃったことがある」
広告は、こちらの気を引くためか、結構大音量で鳴るから、びっくりするのだ。
『あー。そういうのはいらないですね』
「あれだったら、ぼくが枕元で、はなさん、とささやき続けるよ」
『逆に怖い』
「あれー・・・・・・?」
くすくすと笑い合う。
はなさんと話すために、耳に受話器を押し当てているため、外の音も気にならない。
話し声はゆったりとしていて、眠くなりそうな気はする。
「・・・・・・・・・・・・あ」
そうやって、しばらく話していて、ふと声が漏れた。
『どうしました?』
「おなかすいた。晩御飯つくろう」
『・・・・・・そうですね。結構長話してしまいました』
はなさんの声。
「じゃあ、はなさん。また明日」
『ええ。また明日』
通話を切る。
そうしたところで、ごうごうと、外の音が聞こえて、
「・・・・・・あ、洗濯物」
とっくのとうに終わっている。
取り出し、部屋の中に入れた干し台を利用して干していく。
部屋は手狭になってしまったが、
「エアコンを、除湿で」
ピッピ、と操作しておく。
「晩御飯にしよっと」
レトルトカレーと、冷食チャーハン。
どちらも温めるだけだから、準備に十分もかからない。
「・・・・・・なんか、飲み物も、と」
カレーなら、と牛乳をコップに入れる。
ガラスのコップに、不透明な白い液体。
「・・・・・・いただきます」
今、はなさんもカレー食べてるのかな、と思う。
カレーチャーハンは美味しかった、と、またあとではなさんに電話しよう。
そう思った。
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