おやすみなさい、黒幕、秒殺
ゲームの電源を切る。
時計を見れば、いい時間だ。
「うあー」
久々にゲームだけをやる日を過ごした。
ほぼ半日分。ひたすらにゲームをプレイする。
たまにならこういうのはいい、と思う。
ぼくはそれほどゲームをやりこむ方じゃない。
一ヶ月以上やらないこともある。
一日の中で二時間以上やれば長いことやった方だ。
ただ、たまーに、こうやってやめられない日も来る。
「・・・・・・んー」
ぐぐぐぐ、と伸び。
コントローラを片付けて、
「おなかすいた・・・・・・」
さすさす、とおなかをさする。
「・・・・・・・・・・・・これは、どうするかな?」
いい時間だし、何かを食べるには遅すぎる気もする。
ただ、おなかが空いているおかげで眠気がない。
「・・・・・・・・・・・・なんか食べよ」
コンビニに行こう。
そう思った。
+++
「・・・・・・あれ?」
気が付くと朝だった。
コンビニで軽い食事を買って、食べて、シャワーを浴びて、歯を磨いた、ところまでは覚えている。
で、朝だった。
「・・・・・・おや?」
スマホを見る。
「・・・・・・うわあ」
いい時間だった。
+++
「遅刻ぎりぎりですね」
「うん。ぼくもまさかこうなるとは思わなかった」
頭をかいて苦笑する。
「昨日は、日付変わる前に寝たんだけどねえ。・・・・・・なんか気が付いたら、朝だった」
「寝てたら、そりゃ気が付いたら朝なのでは?」
「いや、それがさあ。おやすみなさいとするまでもなく、ベッドに入った覚えもなく、いつの間にか寝てた」
「・・・・・・それ、ちゃんとベッドで寝てました?」
「ううん。床で寝てた」
毛布をひっかぶっていただけ、ぎりぎりましだったかもしれない。
おかげで体はすごく痛いけれど。
「風邪ひきますよ?」
「うーん。ちょっと風邪気味かも?」
少し鼻がぐすぐすする気がする。
「サン・・・・・・」
はなさんがすごく心配そうな顔をしている。
「うーん。徹夜したわけでもないのに、まさかこうなるとは、って感じ」
「何してたんです?」
「ゲーム。・・・・・・朝起きて、なんとなく最近買ったRPGをやりたくなってさ。ずーっとやってた。寝る前まで」
「休憩なしで?」
「うん。途中でやめるにやめられなくて。気が付いたらエンディング見てたよ。日付変わる前に終わってたのは運がよかったかもしれない」
「RPGなんてそんなものかもしれませんけど」
はあ、とはなさんがため息を吐いた。
「駄目ですよ? ゲームばっかりしてたら」
「ぼくも、すっごい久々に一日のほとんどをゲームで使ったよ」
あはは、と笑う。
「サンは、あまりゲームしないですよね」
「好きなんだけどね。目が疲れるから」
「目が悪くならないように、気を付けないとだめですよ?」
「本当にね」
眼鏡は悪いとは思わないけれど、裸眼の方が楽だし。
「部屋は明るくして、離れて見る、と」
「大事なことですね」
はなさんもうんうん、と頷いている。
講義が始まった。
+++
講義も終わり、喫茶店でぼくとはなさんはお茶をしていた。
「それで? ゲームはどうだったんですか?」
「面白いよね。ストーリー考える人とか、良くあそこまでひねって考えるよ」
「ひねってたんですか?」
「ストーリー自体は王道だったと思うんだけどね。ちょっとひねってた」
「へえ?」
「黒幕が誰なのかが分からなくて、結構隠してるんだけどね」
「あー。黒幕」
ボスっぽいキャラは結構出てくるけれど、結局黒幕は正体を終盤まで隠していた。
「黒幕の正体が主人公のお父さんとかそういうオチでした?」
「ううん。それはさすがにありきたりだと思ったんじゃない?」
さすがにそれはなかった。
「何回か同じボスに負けちゃってさ。経験値稼ぎに雑魚狩りしまくってた。むしろそのせいで時間かかったともいえるけど」
「経験値稼ぎ。作業ですね」
「攻略サイト見て、一番効率のいい場所っていうのを周回してた。結構レベル上がった。それでもかなりぎりぎりな勝利だったけど」
ラスボスでもないのに、やたらと苦労した。
「アイテムをたくさん使ったんでしょうねえ」
「・・・・・・・・・・・・」
視線を逸らす。
「?」
「いや、一番いい回復薬がレアでさ。結局使えなかった」
「エリクサー症候群ですか」
「貯めちゃう。・・・・・・使わないアイテムなんて飾りにもならないのに」
まだラスボスじゃないから、と使わなかったのだけれど。
「ラスボスになっても、ああいうのって使うの惜しくなるのはなんなんだろうね?」
「できるだけ効率よく使おうとして、ぎりぎりになるまで耐えるとかですか?」
「そうそう。で、痛恨の一撃を食らって負けるの」
あははは、あるある、と笑う。
「まあ、なんとか勝ってみるとさあ。それ以降の雑魚が結構楽」
「あら」
「レベル上げ過ぎて強くなり過ぎた、っていう感じ」
「あらまあ」
雑魚をばったばったと倒せるのは爽快だったけれど。
「・・・・・・・・・・・・ボスの強さ。調整みすってたんじゃないかなあ、と思う」
「というと?」
「強いボスにはやたらと苦戦したんだけど。そこでレベル上げすぎちゃったのかなあ?」
ラスボス戦。
「・・・・・・・・・・・・割と秒殺って感じだった」
「あら」
「絶対、途中のボスの方が強かった。・・・・・・そういうストーリーだったのかもしれないけどね」
「でも楽しかったんでしょう?」
「いいゲームだったよ」
やりこみ要素はまだまだあるけど。
「しばらくは、ゲームしないかなあ」
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