強制終了、ひつじ、コンビネーション
「・・・・・・・・・・・・寝れない」
こういう日もある。
なんとなく寝付けない日。
ぼくとしては、さっさと寝てしまいたい。
明日は普通の平日で、朝一から講義がある。
はなさんは席を取っておいてくれるだろうし、遅刻したら心配をかけてしまう。
だから、しっかりと寝てしまいたくて、だけれど寝付けない。
眠気がない。
目がさえる。
「・・・・・・うあー」
布団をはねのけるように起きた。
「眠くない!」
仕方ない。
後で後悔するのは分かっているけれど、
「ゲームしよう」
いっそ、起きていてしまえ!
時計を見る。
夜、二時。
「一応、二時間以上は布団被ってたんだなあ・・・・・・」
しみじみと思う。
眠れないまま、それだけの時間を過ごしていたのだと思うと、
「すごい無駄な時間を過ごした気がする」
テレビの電源を入れ、ゲームの電源を入れる。
「・・・・・・あー。何やろ」
なんだかんだと眠気がくるかもしれないし、すぐにやめられるゲームがいい。
RPGはなし。ストーリーが気になって眠れなくなる。
アクションか、シューティング。
「・・・・・・アクションでいいか」
それほど派手に動かないゲームなら、眠気も来るかもしれない。
ゲームを起動する。
キャラクターを操作し、画面の端から端まで走らせる。
横スクロールタイプのアクションゲームだけど、キャラクター自体はゆっくりと動くし、BGMも静かでゆっくり目な曲だ。
この曲だけでも眠れるかもしれない、と思いつつ、キャラクターを動かしていく。
出てくる敵はボタン連打で勝手にコンビネーションが発動するので、爽快に蹴散らしていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
無言だ。
無言でひたすらにボタンとレバーを操作する。
眠い頭だから、むしろ無心だった。
普段なら、もう少しゆっくりと進めるだろうに、勢いに任せてぼくはキャラクターを前進させる。
「あー・・・・・・」
なぜか、さくさくと進んでいく。
ぼくとしては、本当適当に進めているだけなのだが、なぜか死なない。
「ふしぎ」
だらだらだらだらと、ゲームを進めていく。
何度かやっているゲームだから、展開は知っている。
眠気が強くなってきた気がする。
「・・・・・・んあ!」
一瞬、意識が落ちた。
「・・・・・・・・・・・・寝れる?」
いや、無理だ。
なんか、今の一瞬の寝落ち未遂で、目が覚めてきた。
「・・・・・・うあー」
もはや眠れる気がしない。
ぼくは、ひたすらにコントローラーを操っていった。
+++
「・・・・・・で、寝不足だと」
「寝ればよかったと思ってる。中途半端に眠るよりは、徹夜の方が楽なのかもしれないけど」
はなさんの呆れの混じった視線が痛い。
「はなさんは、そういう不意に眠れなくなる日、とか、ないの?」
「ありますけど。そういう日はとにかく布団で目を閉じます」
「寝れなくない?」
「起きるよりは疲れが取れますよ。目を開けないのが、大事です」
「そうなんだ。・・・・・・はなさんなら、本でも読んでるかと思ったけど」
「それやると確実に徹夜するので、やりません」
やれやれと横に首を振っている。
「あ、経験済みですか」
「そうですよ。翌日が本当に辛くなりますから」
徹夜かあ、と考える。
「ぼくはね。一日の徹夜くらいなら、まあ、逆にありかな、と考えます」
「あら?」
「テンションが上がって元気になるからね。・・・・・・翌日起きられなくなるけど」
「徹夜は本当につらいですから」
「・・・・・・ぼくねえ。正月に紅白とか見るためにひたすら起きてたら、翌日丸一日マジに爆睡したことある。・・・・・・年越しして、昼過ぎに寝たら、翌日の夕方だったんだ」
「あー」
あの日は本当にびびった。
こんなに寝っぱなしでいられるんだなあ、というのは、結構発見だった。
「はなさんは眠れない時ってどうするの?」
「どうもしません。目を閉じていればいずれ寝ます」
「・・・・・・強者感あふれる回答だ」
はなさんつえー。
「ひつじを数えると寝られるっていうのは?」
「日本語では逆効果です。あれは、英語だから意味があるので」
「・・・・・・あーやっぱそうなんだ」
「スリープとシープが英語だと発音が似ているっていうのが由来ですからね」
「じゃあ、そっちでやればいいの?」
わんしーぷ、つーしーぷ、と唱えてみる。
「日本語が母国語の日本人の場合、いちいち頭の中で翻訳するわけですから、逆に目が冴えますよ」
「おー。はなさん物知り」
ぺちぺち、と気のない拍手をする。
「どうでもいい知識ですけどね」
でも納得の答えではある。
「スリープは眠れ、だから、眠れに近い語感のことばでやれば、あるいは・・・・・・」
「ふむ、一理ありますね」
「ネムレ、ネムレ、ネムレ・・・・・・。ラムネ?」
「いや、それはちょっと遠い気がしますね」
「らむねー、らむねー、らむねー」
「変な歌を歌わない。・・・・・・ひょっとして、寝不足でナチュラルにハイになってませんか? サン」
「・・・・・・・・・・・・あー。かも?」
首を傾げる。
よく考えると、頭が熱っぽくてぼうっとするし、なんだか妙に楽し気な気がする。
「はなさん。眠いです」
「寝不足ですね」
講義が終わるまでぼくははたして起きていられるだろうか。
+++
講義が終わって、はなさんに起こされた。
やはり途中で寝落ちしたらしい。
はなさんからは、今日は帰るように言われたので、素直に従うことにした。
帰って、かろうじて着替え、ベッドに倒れこむ。
はなさんから、心配のメッセージが来たけれど、
「あー」
返信を打ち切る前に、ぼくは強制終了していた。
スマホを握りしめながら眠ったせいか、はなさんが心配してかけてきた電話にぼくは偶然出てしまったらしく、
「サンの寝息はかわいいですね」
と翌日はなさんにからかわれて、悶絶するはめになった。
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