メロンパン、チョココロネ、ナイスガイ
コンビニに来ている。
休日、なんとなくごろごろしていたら、なんとなく小腹が空いた気がした。
なんとなくごろごろしているのにも飽きたので、ちょっと外に出るべきかと思う。
なので、何か買おうと思ってコンビニまで来た。
スナック菓子の一つでもいいかな、と思っていたのだけれど、パンの商品棚の前で立ち止まる。
「・・・・・・うーん」
スナック菓子をぽりぽりやる気分ではない。
だから、なんかしっとりしたものがいい。
ケーキやプリンなんかの生菓子でもいいけれど、
「おなかにたまらなさそう」
でもすっきりしたい気もする。
「・・・・・・むう」
飲み物は、自分でコーヒーを淹れればいいかな、と思っていたけれど、ジュースの類を買った方がいいかもしれない。
「さて、難題だ」
声には出さずに呟いて、ぼんやりとコンビニの商品を眺めて歩きながら考える。
気分が乗らない日はある。
正直、コンビニに入ってから、別にここのコンビニでなくてもよかったかなあ、とか、どうせちょっと外出たんなら、駅前のパン屋まで行こうかな、とか思ってるけど、それはそれで面倒だなあ、とか思っている。
そんな思いを抱えながら、ぼくはコンビニの中をうろついていた。
さっさと買って帰ればいいのに、と思うんだけれど、これだ、と思うものが見当たらない。
「・・・・・・むう」
パンの棚の前に戻ってきた。
「・・・・・・・・・・・・」
スマホを取り出す。
「・・・・・・・・・・・・ヘイ、はなさん!」
『どうしたんですか?』
「メロンパンとチョココロネ。どっち食べたい?」
『・・・・・・・・・・・・はい?』
はなさんに電話を掛けて、勢いのままに聞いたけれど、さすがに困惑の声が返ってきた。
「いや、はなさんの気分的に今だったらどっち?」
『え? どっちって言われれば、・・・・・・メロンパンで』
「わかった」
両方レジに持って行った。
+++
「一体なんなのかと思いましたよ」
はなさんの家。
はなさんの部屋で、ぼくははなさんにメロンパンを渡して、自分はチョココロネの袋を破いていた。
「いや、もう、なんか・・・・・・」
こう、
「本当にどうしようもない気分でさあ・・・・・・。ふとはなさんだったらどっちかなあ、と思ったんだけど、別にどっちでもよくね、と結論が出て、じゃあ、聞いてしまおうと」
「どこからどうつながってそうなったんですか」
はなさんは、メロンパンを持ったまま苦笑している。
「いや、暇だったんだ」
「そうですか。休日ですしね」
「で、ごろごろしてたんだけど、なんか退屈に耐えられなくて」
「はい」
「せめて小腹を見たそうと外に出たんだけど、コンビニ行くだけで終わったら外に出たかいがない、とか」
「なるほど。気持ちはわからなくはないです」
「・・・・・・はなさんと遊べればなあ、と思ったんだけど、約束してなかったし」
「そういう日もありますね」
はなさんは、なんか優しい感じに笑っている。
「まあ、電話くらいはいいかな、と思ったんだけど」
「電話くらいは、いつでもいいですよ? 出られない時は取らないので」
「そうだね」
はなさんに電話を掛けたのはいいけれど、
「もう目の前の悩みを勢いのままにぶちまけてしまった」
「かわいらしい悩みですね」
「はなさんと話したかっただけだからねえ・・・・・・」
自分でも苦笑する。
「そのあとはなさんと約束取れてよかったよ」
「普通に連絡してくれればよかったのに」
「んー。・・・・・・気分的に、ちょっとそうするのが億劫だった」
「なにか嫌なことでもあったんですか?」
「ううん? 昨日夜更かししたせいで眠いだけ」
「サン・・・・・・」
はなさんが咎めるような視線を送ってくるのに方をすくめる。
「まあ、おみやげにメロンパン持ってきたし、よかったら食べてよ」
「まあ、いただきますけど」
ぼくはチョココロネ。
チョココロネの細い方をちぎって、チョコをつけて口に運ぶ。
「・・・・・・・・・・・・尻尾をちぎって脳みそをつけて食べる」
「チョココロネの食べ方をそういう人は初めてですね」
はなさんがなんか嫌そうな顔をしている。
「そうだね。ぼくも思った。でも、コロネってどっちが頭か分からなくない?」
「いえ、パンの頭ってなんですか?」
「・・・・・・・・・・・・言われてみると」
よく考えるとパンに頭も尻尾もないよ。
「芋虫か貝かに見えるから?」
「見えたところで、パンに頭と尻尾を見るのはやめましょう」
「そうだね」
むぐむぐとパンを食べる。
「飲み物はジュースとスポドリとコーヒー。そして、ヨーグルト」
「なぜ四種類も」
「ぼくが飲みたいやつを買ってきました」
「つまり?」
「はなさんがどれを選んでも、ぼくが飲みたいものは残ります」
「・・・・・・賢いのか、何なのか」
はなさんは苦笑しながら、コーヒーを取った。
「では・・・・・・。ジュースにするか」
百パーセントオレンジジュース。
「・・・・・・・・・・・・あ」
はなさんがふと声を上げた。
「どうしたの?」
「あの、呼びかけのヘイって」
「思いついたのがあるなら、多分それは正解です」
「そうですか」
はなさんは、メロンパンを食べている。
「・・・・・・コンビニのパンとか、食べなれてもおいしいですね」
「そうだよねえ」
食べなれている安心感はある。
「わたしは、あまり食べないですけど」
「ぼくは、たまに、かなあ? パンだと、駅前のパン屋さんのやつとかの方がよく食べる」
手軽に買えるからコンビニを使うけれど、それ以外だとコンビニ以外の物の方がよい、気がする。
「気のせいだと思うけど」
「気のせいでしょうけどね。コンビニの商品って、結構考えられているイメージありますし」
「新商品がぽこぽこ出ている以上、思いつき商品も結構ありそうな気はするけどね」
「どっちもあるんじゃないですか? 考えるのも、許可を出すのも、どっちも人間ですし」
「説得力のあるお言葉で」
はなさんは、コーヒーを飲んだ。
「ちょっと話を戻しますけど。サン、今日はそんなに暇なんですか?」
「暇だった。夜更かししたけどなんか目が覚めちゃって、何もする気が起きなくて、退屈だった」
「ふむ」
「?」
「いえ、ちょっと出かけますか?」
「どうしたの?」
「いえ、家具を見に行こうかと思ってまして」
「家具?」
「昨日、椅子の足が折れちゃいまして。丈夫ないすがいるところだったんです」
「ありゃ」
「別にいつでもいいといえばいいんですけど、暇なら、どうです?」
「行く」
今回は少し変則かもしれない。
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