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ランドリー、通りすがり、横断歩道

「・・・・・・雨、やまないねえ」

 どうしようもない、とはいえ、天を恨むようににらむ。

 洗濯物が生乾きになってしまう。

 別に、部屋の中に干しておいていいのだが、

「・・・・・・狭い」

 それほど広くはない部屋の中。

 洗濯物を干すための干し台を広げると、とたんに狭くなる。

 足の踏み場もない、というほどではないにしろ、物が多くなったように見えて、まさしく狭い。

「どうしよ」

 それに、湿気る。

 濡れた洗濯物を干しているのだから当たり前といえば当たり前だが、部屋の中の空気が湿気ているように感じる。

 下手をすると、かび臭さすらあるようにも思う。

「・・・・・・・・・・・・」

 エアコンは除湿モードで全開ではあるのだけれど、やはりイメージとして湿気っているように感じる。

「・・・・・・・・・・・・アイロンで乾かすか?」

 ドライヤー、という手もあるが、

「・・・・・・一着一着とか、すごい面倒だよねえ」

 腕を組んで、首をひねる。

「でも、洗濯しない選択肢ない」

 何せ、今着ている一着以外は、もう洗濯物入れにしているカゴの中だ。

「洗濯機回したとて、乾くかが怪しいんだよなあ」

 外は曇り。

 いつ雨が降ってもおかしくない天気だ。

「・・・・・・さて、こういうときは」

 スマホを取り出し、

「はなさーん」

 電話してみた。


+++


 はなさんが来てくれた。

 今暇だったらしい。

「乾燥機とか、ないんですか?」

 部屋の中の惨状、というか、洗濯物を干したせいで狭い部屋を見て、はなさんが言う。

「大学生の一人暮らしだよ? あるわけないじゃん」

「洗濯機に内蔵されていたりは・・・・・・」

「そこまで高性能なやつじゃないよ」

「そうですか」

 うーん、とはなさんは考え込んでいる。

「一日干しとけば、乾くことは乾くんだけど・・・・・・」

「なんか、生乾きになりそうですね」

「乾かないから、って迷ってたら、結構洗濯物も溜まっちゃって」

「部屋干しはできるんですから、きちんと洗いましょうね」

「そうだね。ちょっと反省した」

 さすがに、今着ているもの以外に着替えがない、という惨状には、はなさんも顔をしかめている。

 服自体はあるのだけれど、今の季節には合わない。

「・・・・・・最悪、冬服を着ることになるか」

「そうなる前に、洗濯をしましょう」

 ふう、とため息を吐いて、はなさんは洗濯物の入ったカゴを見る。

「とりあえず、近くにコインランドリーがありますよね。そっちに持って行きますよ」

「? お金かかるところでやるの?」

「コインランドリーなら、乾燥機がありますから」

「・・・・・・へー。知らなかった」

「使ったことないんですか?」

 ぼくは、洗濯機を示す。

「自前のがあるから。お金がもったいない」

 お金がないわけではないけれど、無駄遣いできるほどではない。

「それもそうですね」

 はなさんも頷く。

「コインランドリーに乾燥機があるとは思わなかった」

「大概あるはずですよ?」

「通りすがりに眺めることはあったけど、中まで入ったことってなかったし」

「まあ、必要なければそういうものかもしれないですね」

 適当な袋に洗濯物を詰めて、持ち上げる。

 ついでに、乾かし途中の洗濯物も、袋に詰めた。

 二袋になったため、はなさんも一袋持ってくれた。

「サイフは忘れないように」

「はーい」

 アパートを出て、歩く。

「雨降りそう」

「ほんとうに。・・・・・・もう、梅雨でしょうか?」

「天気予報的には、そろそろ?」

「そう言ってましたか」

 はなさんと一緒に空を見上げる。

 灰色の雲が、厚く空を覆っていた。

 風が生ぬるいようにも感じる。

「・・・・・・・・・・・・今日は、夜ぐらいから降りそう」

「そんな感じですね」

 なんとなくの感覚だけれど、そう感じる。

「・・・・・・これから、しばらくはずっとこうかあ」

「梅雨入りしたら、もう部屋干しに頼らないといけないでしょうね」

「カビ生えないかな」

「エアコンの除湿機能を使うしかないでしょう。・・・・・・あとは、晴れている時にきちんと空気の入れ替えをすることです」

「うん。・・・・・・なんか、ごめんね? こんな迷惑かけちゃって」

「いいんですよ。暇してましたし」

 はなさんは、なんでもないと笑ってくれる。

 コインランドリーにたどり着いてみれば、いくつか並んでいる洗濯機。

 一つは誰かの洗濯物を入れて勢いよく回っている。

「さて、この量なら、一台で全部入るでしょうか」

 洗濯機の蓋を開け、中に洗濯ものを流し込む。

「そっち、生乾きのやつは乾燥機の方に」

 乾燥機に洗濯済みの生乾き衣類を入れて、コインを投入。

「・・・・・・・・・・・・コインランドリー、という割に、千円とかする」

「まあ、高いですよね。・・・・・・自前でできるんだから、自前でしないとダメですよ?」

「そうだね」

 不意に来る、ちょっと重い出費、という感じだった。

「さて、あとは、終わるまで待つだけですね」

「洗剤もいらないとか、結構手間かからないね」

「その代金はちょっと高いですよ」

 壁に貼られた料金表を見れば、たしかに高い。

「・・・・・・・・・・・・終わるまで待つか」

「一時間ほどでしょうか?」

「そうだね」

 回っている洗濯機の横に、残り時間は出ている。

「・・・・・・・・・・・・待ってる間暇だし、何か飲み物買ってくるよ」

「じゃあ、わたしはここで見てますよ」

「何飲みたい?」

「そうですね。・・・・・・今日は紅茶、ミルクティーで」

「りょーかい」

 コインランドリーの外へ出る。

 まだ、雨は降っていない。

「さて、と」

 道の向かいのコンビニへ向かう。

 コンビニで適当に見繕って飲み物を買い、コインランドリーへ戻る。

「・・・・・・・・・・・・ああ」

 横断歩道を渡りながら、ふと思った。

 何もないはずの日が、不意にはなさんとおしゃべりできる一日に変わった。

 雨っていうのも、悪くない。

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