コメント、札束、上下
「お前ははなと遊んでばっかだな! もっとうちとも遊べ!!」
「・・・・・・おう」
ナオさんに詰め寄られて、ぼくはちょっとのけぞった。
ナオさんは、大学に入ってからできた、ぼくとはなさんの共通の友人だ。
同じサークルに入った新入生であり、その縁で友達になった。
もう一人同期はいるけれど、そちらは受ける講義が違うためか、滅多に会うことがない。
「というかさ、ナオさん」
「うん?」
「はなさんには言わないの?」
「はなとはお前がいないときに、よく遊んでもらってるからな!」
腕を組んで胸を張って、ナオさんは元気よく言う。
「・・・・・・そうなの?」
はなさんの方をうかがうと、
「ええ。サンがバイトで先に帰る時とかですね。一人で残る時によく声をかけてもらっています」
「はなはいっつもサンの話をする! ミミタコだ」
「えー。そうなの?」
「ソウナンダヨ!」
元気だなあ、という印象を受ける。
口調は怒っているかのように乱暴なのに、その表情はなんとも楽しそうな笑顔だ。
「でも、サンは、はなと遊んでないときは、いつも忙しいしさ。うちはサンとも遊びたい! せっかく、同じサークルに同期で入ったんだからな」
「そう言ってくれるのは、うれしいけど」
詰め寄られると、なんとも言い難い圧力がある。
避けるように、はなさんの方へと目をやる。
「今日は、譲ってあげますよ。二人で遊びに行って来たらどうです?」
「うん? 別にはなも一緒でもいいぞ。うちはサンと遊びに行きたいけど、はなとも遊びに行きたい」
ナオさんがはなさんも誘っている。
それを聞きながら、ぼくはナオさんと遊ぶのは決定事項か、とあきらめの境地に達していた。
「うーん。いえ。今日はやめておきましょう。わたしも、いいタイミングなので、ちょっと用事を片付けようと思いますし」
「そうか。まあ、用事が早く終わったなら来い」
「そうですね。できたら行きます」
すごいな、と普通に思う。
なんともパワフルにぐいぐいと来る。
「よし。サンはうちと一緒だ」
ナオさんに腕をつかまれて、ぐい、と立ち上がらせられる。
「あ、ちょっと待った」
そのまま腕を掴んでいこうとするナオさんを制止する。
「うん? なんだ?」
振り返ったナオさんが首を傾げるが、ぼくはスマホを取り出して言う。
「いや。ぼくナオさんの連絡先知らないから、いいタイミングだし教えてよ」
「・・・・・・・・・・・・お前、お前!!」
なんか襟首つかまれてがくがく揺すられた。
「一応、サークルで歓迎会あったぞ! はなとはその時に交換したのに!!」
「えー。ぼく、あの歓迎会で交換したのはなさんとだけだよ?」
「お前ー!!! 友達と思ってたのはうちだけかーー!!」
がくがくと前後に揺さぶられていた勢いが激しくなった。
「ちょ、ナオさん。気持ち悪くなるから、ストップ!」
「ナオ。その辺で・・・・・・」
「むう」
まったく、とナオさんはため息を吐きながら、スマホを出してきた。
「ほれ」
スマホを差し出してきたので、ぼくはアプリを起動して上下に振る。
「どう?」
「おう。きた」
ナオさんからも連絡先をもらって、
「おお。大学生活二人目の友達アドレス」
「お前友達少なすぎだぞ」
ナオさんの呆れかえった口調に、
「いや、ぼくははなさんがいればいい」
「いや。だめだろ。友達はたくさん作れ。な?」
ナオさんは何とも言い難い微妙な表情を作って、ぼくを諭すような口調で言う。
「友達なら高校の時のとか結構いるよ」
「毎日会える、友達を作れ。な?」
しょうがない奴だな、とナオさんは言いながら、またぼくの手を引いた。
「あ、はなさん。また明日」
「はい。また明日」
「おう。はな。またな!」
+++
「ていうかさ。ナオさん。ここなに?」
「ゲーセンだが?」
「いや、だが? じゃなくてね・・・・・・」
そのまま迷いのない足取りでここまで連れ込まれた。
「まあまあ。まずは、あれだ。金を出せ」
「カツアゲかよ」
いきなり何言い出すんだ。
「そうじゃねえよ。札束、とまでは言わねえから、札の一枚くらいは持ってるかって話だ」
「・・・・・・・・・・・・ええっと。使えるのなんて三千円くらいだよ?」
財布の中身を確認する。
遊びだけで使える、となるとそのくらいだ。
これ以上は、食費に障る。
「十分だな」
はっはっは、と笑い、ナオさんはぼくを両替機の前まで連れて行った。
そして、自分は一万円を崩している。
「・・・・・・ナオさんは、こういうところよく来るの?」
「うん? そうな。暇な時はよく来る。百円でも三十分くらいは潰せるし」
「へー」
なんとも騒がしい店内。
「ぼくは、あんまり来ないんだよね」
「そうか? うちは、サンは結構来てそうなイメージだっだけど」
「お金の無駄遣い。あと、ガラ悪いのが多い」
「ははは。ここら辺は、大学生が多いから。大人しいやつばっかだよ」
笑いながら、ナオさんはレースゲームの筐体の前へ連れてきて、ぼくを座らせる。
「勝負な?」
「はいはい」
お金を入れて、ゲームスタート。
ハンドルを切って、ペダルを踏んで。
家でゲームするのとは、まったく違う操作感に、気づけば夢中になり、
「あー。負けた!!」
「サン。下手」
「直球で言わないでよ。ぼく、これ慣れてないんだから!」
からからと笑いながら言うナオさんに食って掛かる。
数回勝負して、一回も勝てなかった。
「でも、後半めっちゃ伸びてたな」
「操作が分かっちゃえばね」
というか、
「ナオさんが上手すぎ。どんだけやりこんでるんだよ」
ナオさんを見ると、自販機で買ってきたジュースを飲んでいる。
「んー。なんだかんだ。暇な時は来てるからな。練習量の差」
「いや、自慢できないと思うよ。それ」
店内をうろついているうち、ナオさんはクレーンゲームの筐体の前で止まる。
「ようし」
「え。このぬいぐるみ取るの?」
「取れそうだからな」
なんとも自信満々に言っているけれど、
「でかいよ? 取れても邪魔になるんじゃ・・・・・・」
「気にしない」
「いや、そこは気にしよう?」
言っている間に、クレーンが動き、
「あ」
ストン、とぬいぐるみが落ちた。
「どーだ!」
「うまい、というか、すごい」
「へへへ」
なんとも自慢げで、なんだか微笑ましい。
「・・・・・・はなさんとも、遊ぶときはこうやって?」
「うーん。はなとはあまりここ来ないんだ。はなの場合、どっちかっていうとカラオケとかの方が多い」
「・・・・・・ぼくを置いて楽しそうなことをしている」
「今度一緒に行くか?」
「そうだね。行く」
「よしよし」
ナオさんは満足げだ。
「うちな、お前ら二人と、もっと仲良くしたいんよな」
「? もっとって?」
「なんか、お前ら楽しそう。混ぜろって感じ」
ししし、とナオさんは笑っている。
「サンもはなも、二人でいるのが楽しそうだからな。たまにはうちも混ぜてほしい」
「いつでもいいよ?」
「いや。タイミングは考える」
「なんでさ」
うーん、とナオさんは考えて、
「たまにお前ら、二人の世界に生きてるからな。そういう時は逆に遠ざかりたい」
「・・・・・・・・・・・・」
コメントに困る。
「ま、これからよろしくな」
セリフのある新キャラ。
サンとはなを外の人から見た視点が欲しくて入れたキャラです。
今後、ナオ視点が書けるといいなあ。
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