表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
47/768

三連休、スーパーマーケット、無効化

 三連休も最後の一日。 

 ぼくとしてはのんびりと過ごすのもよし、と思っていたのだが、

「・・・・・・・・・・・・飢えるね。これは」

 冷蔵庫の中が空だ。

 おまけに、インスタント食品も、スナック菓子の類すらない。

「仕方なし。買いに行こうか」

 ふへえ、とため息をついて、着替える。

 気温は高く、今日は夏日、と天気予報も言っていた。

 冬と春の服だったものが、春と夏の服に変わってきた。

 着なくなる服はクローゼットの奥に入り、半袖やノースリーブなんかの涼し気な服が前に出てくる。

「季節感だねえ」

 ちょっと重めの色が多かったものが、色合いも白や青なんかの軽い色が多くなった。

 生地も薄いものが多くなったため、クローゼット全体の色が変わって見える。

 ふと思いついて、写真を撮り、衣替え、とタイトルを振ってはなさんに送信した。

「・・・・・・さて、行くか」


+++


「おや?」

 近くのスーパーマーケットに出向いたところで、カゴを持ったはなさんに遭遇した。

「偶然。はなさんも買い物?」

「ええ。今日は両親がいないので、夕飯はわたしが作る必要がありますので」

「なるほど」

「サンは?」

「冷蔵庫の中身がなくなってしまったので補充にね。・・・・・・インスタント系も枯渇するとか、ちょっと油断してたかなあ」

「おやおや。台風とかが来る季節でなくてよかったですね」

「まったくだよ」

 何とはなしに連れ立って歩きながら、ぼくたちは互いに買い物を済ませていく。

「サンは、なんというか、生鮮食品の類は買わないんですか?」

 はなさんが、ぼくの持っているカゴの中身を見て言う。

 確かに、インスタント食品か、日持ちのするレトルトパックばかり買っている。

 あとはお菓子。

「うん? まあ、ごはんのお供があればいいかな。・・・・・・正直、料理するのも面倒だし」

「面倒くさがっているとよくないですよ?」

 はなさんの口調はたしなめるようでもあるけれど、

「とはいってもね。大学の学食で食べちゃうことも多いから、家の食材って本当に使わないんだよね。・・・・・・休日だって外で食べることも多いし」

 それこそ、休日でも開いている大学の学食が悪いともいえる。

「なるほど。確かに外で食べているなら、家で料理する必要はないですか」

「じいちゃんばあちゃんが野菜なりなんなり送ってくるから、全くしないわけではないんだけど・・・・・・。自分で買ってまでするか、と言われるとねえ・・・・・・」

 苦笑が浮かぶ。

「安く済みますよ?」

「それはそうなんだけど、生活費自体は足りてるからなあ・・・・・・」

 無理してまでするほどではないし、

「料理する時間も、別のことに使いたい」

「例えば?」

「散歩したり、本読んだり、ゲームしたり」

「遊んでばっかりじゃないですか」

 仕方ないですね、とはなさんが苦笑している。

「あとは、食品が便利すぎる。冷凍食品とかすごい楽」

「あー。それはとてもよくわかります」

「冷凍チャーハンとか、皿に盛ってチンするだけだよ? それで一食分できるんだから、楽だよねえ」

「一人だと、そういうものですか」

「夜食にも便利」

「太りますよ?」

「まあね」

 ただ、小腹が空いたときには、カップラーメンよりもいい気がする。

「唐揚げとか、パスタとか。チンするだけ食品が勝ちすぎる」

「わかりますけど」

「不思議とインスタント食品より体に悪くなさそう」

「明らかに勘違いだと思いますよ。それ」

 チン一つでも、ひと手間くわえた分健康に良さそうな気がする。

「レンジでチンは料理ではないです」

「そうだね」

 はなさんの言うことには全面的に同意だ。

「あとね。冷凍うどん。あれも楽」

「うどんが? ゆでないとダメなのでは?」

 確かに、そういう手間を感じるが、

「いや、それがさ。冷凍うどんを器に開けて」

「はい」

「沸かしたお湯をかけて、しばらくすると普通に食べられる」

「えー」

 茹で済なのか、お湯で解凍してざるにあければ、それだけで食べられる。

「醤油と卵で十分おいしい」

「それはどうなんです?」

「気になるなら、出汁つゆ入れて、お湯を入れてもよし。適当にトッピング散らせば普通にうどんになるよ」

「・・・・・・・・・・・・」

「でも、インスタントラーメンより絶対健康にいいよ。余計な油も浮かないし」

 普通に手短に食べられるのでありがたい。

「なんていうか、そういう手間かけずに食べられるもの、ってなると、生鮮食品の類はいらなくなるんだよね」

「なるほど」

 はなさんは、ふう、と一息ついて、

「・・・・・・あれですね。サンは、自分で作ると時短飯になるんですね」

「ああ。うん。それはある」

 なんか、こだわる気にならないのだ。

「作ること自体は嫌いじゃないんだけどね」

 あはは、と頬をかいて答える。

「でも、毎日ってなると、やっぱり適当になっちゃうというか」

「まあ、それはそうでしょうね・・・・・・」

 ふむ、とはなさんが何か考えている。

「はなさん?」

「決めました」

「何が?」

 はなさんの急な決定に、ぼくは目を瞬かせる。

「サン。いやだったら断ってくれていいんですが・・・・・・」

「うん。何?」

「今日の夕飯。ご一緒しませんか?」

「え? それはいいけど」

「そして、サンが作ってください」

「え? ぼくが作るの?」

「はい」

 はなさんが頷いた。

「いえ。どうしても、というわけでもないんですが、サンが時短飯になってしまうのは、結局自分が食べる分だけ作るからかと思うので」

「ああ・・・・・・。確かに、それはあるかも」

「あとは興味本位です。サンがどんな料理を作るのか、単純に興味があります」

「あはは・・・・・・」

 そう言われると確かに、はなさんの料理をごちそうになったことはあるけれど、ぼくの料理をふるまったことはなかった気がする。

「というわけで、どうでしょう? サンの都合が悪ければ、断っていただいて構いませんが」

「ううん。やる」

 なんか、言われるとやる気が出てきた。

「あんまり自信あるわけじゃないけど、はなさんにぼくが作ったものを食べてほしいかな」

 ちょっと照れくさい。

「それでは、買い物をやり直しましょう。何を作るか、考えないと」

「ああ、そうだね」

 うん、と頷く。

「ああ、でも、本当に期待しないでね? ぼく、料理得意ってわけじゃないんだから」

「構いませんよ。サンが作ってくれるなら」

 くすくすとはなさんが笑っている。

 どうせなら、おいしいと言ってくれるものを作りたいけれど。

 なんというか、緊張っていうデバフがかかっている気分だ。

「がんばってみる」

「大丈夫ですよ。何なら、少しお手伝いしましょうか?」

 そうされたら、ありとあらゆるデバフが無効化される気もするけれど。

「だめ。ぼくが作ったのを、食べてほしい」

「では、楽しみにしています」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ