能力、セーブデータ、隙間風
のんびりしていた。
コントローラーをぽちぽちしながら、ポテチに手を伸ばす。
「・・・・・・んー」
レベルアップして能力が上がった。
サンは、ぽちぽちとまたボタンを押して、次の経験値を探してキャラを操作する。
「・・・・・・」
最近買ったRPGをやりながら、サンはふと、時計を見た。
「あ」
朝起きてからだから、かれこれ六時間はやっている。
「・・・・・・ん~」
ぐ、と伸びを一つ。
「あれ?」
ふと見るとスマホにメッセージが入っていた。
「あ、はなさんだ」
内容を読んで、サンは返信を打った。
「・・・・・・しかし、平日の昼間にひたすらゲームをして過ごすとは、引きこもりっぽいなあ」
けらけらと笑いながら、サンはゲームをセーブして、電源を落とした。
「・・・・・・ちょっと、散歩しようかな」
スマホを使い、サンははなへとちょいちょいとメッセージを打った。
+++
「やほ。はなさん」
外でサンははなと会う。
「・・・・・・今日の講義が休講になって、平日の休みに何をしているかと思えば、ずっとゲームですか」
「いやあ。なんか、新しいの始めたら止まらなくなっちゃって・・・・・・」
呆れたようなはなの言葉に、ははは、とサンは笑って答えた。
「一度始めると、集中しちゃうよね。ゲームって」
「そういうものですか?」
「はなさんだったら、何も予定なければ本の一冊くらい読んじゃうでしょ? 大体似た感じ」
「・・・・・・なるほど、そういわれると」
はなは頷いた。
「ただねえ・・・・・・」
「うん? 何かあったんですか?」
「アパートってさ。なんだかんだ密閉性高くて、隙間風の一つも入らないじゃない?」
「そういうものですか?」
「そ。で、春先だしいいかなって思って、エアコンをつけてなかったんだけど、そしたら暑くてさあ」
「あら」
「何か、冷たくて甘い飲み物がほしいかな」
サンは、苦笑を浮かべて、はなを誘った。
「というわけでさ、はなさんも何か飲みに行かない?」
「お付き合いしましょう。急にぽっかり一日空いて、何だかんだと暇になっていたもので」
はなは微笑みを浮かべた。
「どこかでテイクアウト取って、河原あたり散歩しようかな」
「・・・・・・お店で飲まないのですか?」
「うん。ゲームしてたから、目を休ませたい。というわけで遠くを見たい」
サンの目は、よく見れば少し赤い。
「今日はいい天気ですし、それもいいですね」
はなはくすくすと笑い、連れ立って歩き出した。
「でも、ゲームに集中っていうのも、サンとしては少し珍しいですね」
「うん?」
サンが首を傾げると、はなは答えた。
「いえ。こういう暇があると、サンはなんだかどこかに出歩いていることが多いと思いまして」
「そうだね」
サンは頷いた。
「いい天気だし、普通はそうするよ。ただ、昨日買ったやつだったから、つい、ね」
「それも珍しい気がします。サンが新しいゲームを買うとか」
「いやあ。ゲーム自体は好きだから。ただ、新しいのをさっさと買うほどじゃなかったんだけど。・・・・・・でも、なんかテレビでCMをやってるのを見てたら、なんか我慢できなかった」
「衝動買いですか。・・・・・・あまり感心しませんよ?」
「あはは。おっしゃる通り」
からからと笑いながら、サンは頭をかいた。
二人は、店でテイクアウトの飲み物を買い求めると、連れ立って歩き出した。
「でも、そういうときって、あるじゃん?」
「サン・・・・・・」
「いや。今日が休講の予定じゃなかったら、多分買わなかったよ。ただ、今日が一日休みになるって思ったら、まとまってやる時間できるじゃん、とか思っちゃって」
なんというか、予定のつじつまが合ってしまったのが悪いのだ、とサンは割り切っていた。
「・・・・・・まあ、面白いからいいんだけどさ。それでも、ちょっと集中してやり過ぎた。ちょっと目が痛い」
「適度に休憩しないと本当に目を悪くしますよ?」
「ぼくの友達なんか、一日四十八時間ゲームするとかのたまってたのもいたけどね」
苦笑を浮かべながら、サンはばかげたことを言い出した。
「・・・・・・一日は二十四時間では?」
「テレビゲーム、PCゲーム、スマホのソシャゲを同時にやれば一日四十八時間くらいはできる、と言ってたよ?」
「屁理屈でしょう。それ」
心底あきれ果てた、という顔のはなに、サンは苦笑を返す。
「だよねえ・・・・・・」
「というか、一度に三つゲームをしたとして、それでも十六時間ゲームって、起きてる時間ほぼゲームしているじゃないですか」
「徹夜してゲームするのもいる位だし、その程度は大したことないんじゃないの? ガチもののゲーマーって」
「本当に目を悪くしそうですよねえ」
「目が悪くなったらゲームできなくなるし、本末転倒、という感想が浮かぶよね」
「ゲームって、そこまで楽しいんでしょうか?」
「んー・・・・・・」
サンは顎に手を当てて、
「ぼくも昔聞いたことある。ゲームは面白いけど、そこまで楽しい? って」
「なんて答えてました?」
「『ゲーム』ってひとくくりにするなって怒られた」
「はい?」
「ゲームにはすごくたくさんのジャンルがある。人の好みは十人十色。蓼食う虫も好き好き。要は、種類がものすごく多いんだから、どれかは好みにヒットするから、ゲームを楽しめない人間はいるはずがない、だって」
「・・・・・・一理あるように聞こえます」
むむむ、とはなは唸ったが、
「はなさん。その感想は間違っている。ぶっちゃけ、ただのオタクの理論武装だから」
「あー・・・・・・」
「ゲームをいくらやったところで、生産性は皆無なんだから、ゲームばっかりやっているのはただの怠け者と同じだよ」
「・・・・・・サンは、はっきり言いますね」
はなは、少し意外な感情を表情に載せて、サンへと向ける。
「わりと父さんの受け売りだよ。父さんは、『楽しむのに理屈はこねるな。何の役にも立たないから遊び。そこに理屈をつけてしまうと、役に立たないことを受け入れてしまうかもしれないから、人生を無駄にする』だって」
「なんだか深い言葉ですね」
「『豊かな人生のためには、遊びは必要。だけど、遊びはただ生きるだけなら邪魔なものだよ』と」
「難しいことを言いますねえ」
「こう言っとけば、大体の人は煙に巻けるって言ってた」
「・・・・・・詐欺師かなんかですか?」
「だよねえ」
サンはくすくすと笑っている。
「まあ、ぼくは楽しければどうでもいいと思う」
「そうですか」
+++
サンは、家に戻ってゲームを再起動する。
「・・・・・・さて」
続きのセーブデータを選択する。
「ま、明日も休みだし。今日は徹夜かなあ・・・・・・」
くすくすとサンは笑う。
「そういう日があっても、いいじゃんね」




