表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/768

スローガン、反乱、豚に真珠

「むむむ」

 サンが唸っている。

「まだやってましたか」

「て言われてもさあ・・・・・・」

 サンが取り組んでいるのは課題である。

 人によっては難しいかもしれない。

 テーマを決めて、そのテーマに沿ったスローガンを作る、というものだ。

「テーマぐらいは、向こうで決めてほしいよ」

「そのテーマを決めるところから含めて課題なんですから、そこに文句言っても仕方ありませんよ?」

「わかっちゃいるけどねえ・・・・・・」

 くっそう、とため息を吐いて、サンはぐぬぬ、と唸る。

「スローガンってなんだスローガンって」

「スローガン・・・・・・。理念や目的を、簡潔に言い表した覚えやすい句・標語・モットーのこと」

「ネットで調べたの?」

「定義がわからないと、決められないですからね」

 はなが、スマホをひらひらと振っている。

「というか、サンはテーマとスローガンとどっちから決めようとしてます?」

「テーマ」

「正道ですね」

「・・・・・・? はなさんは違うの?」

 サンが首を傾げるのに合わせて、はなはくすりと笑う。

「適当にスローガンっぽい言葉を決めて、それに見合うテーマを決めちゃえばいいのでは?」

「えー。そっちの方が難しくない?」

「そうでしょうか?」

 はなは顎に手を当て、ふうむ、と一つ唸って、

「でも、どっちも決まらないなら、いっそ試してみては?」

「・・・・・・ちなみに、はなさんはどうしたの?」

 サンの問いに、はなは苦笑して、

「スローガン、『豚に真珠と言わせない』」

「・・・・・・テーマは?」

「ダイエット促進」

「・・・・・・うまい?」

「それっぽく見えれば十分ですよ」

 はなは笑う。

「豚とダイエットがかかっているので、これで関連性あるように見えるでしょう」

「そうかなあ・・・・・・」

 むう、とサンはまた唸りだす。

「サンは、こういうのは苦手ですか?」

「ん~。・・・・・・苦手というか、下手」

 唇を尖らせ、ぼやくようにサンは言う。

「昔から、こういうのを出して、いい評価もらったことない」

「・・・・・・ちなみに、どういうの出しました?」

 微妙にわくわくした顔をしているはなに、サンは少し上を向いて考えて、

「学校祭のテーマ募集に、『獅子奮迅』て出した」

「・・・・・・それほど外れていないのでは?」

「つまらん、て言われた」

「誰にですか?」

「当時学校祭の委員長をやっていた友人」

「ははあ・・・・・・」

 サンとしては、苦い顔をしながらも、

「その年のテーマは、『お空の向こうへ』だった」

「・・・・・・・・・・・・?」

「ねえ?! 分かんないよねえ! なんであれでよくて獅子奮迅はダメなのさ!!」

「ま、まあ、落ち着いて・・・・・・」

 はなが、どうどう、と抑える仕草を見せると、サンはぶー、と不貞腐れた息を吐いた。

「まあ、別にぼくのが通ってほしい、と思っていたわけじゃないけどね」

「きっと学校中から募集したんでしょう?」

「うん。全校生徒分集めてた。・・・・・・その中からなぜあれだったのか・・・・・・。お空って・・・・・・」

 ぐうう、と頭を抱え始めたサンを、慰めるようにぽんぽんと撫でつつ、

「きっと、祭りのテンションでおかしくなってたんですよ。今聞いたら、きっと当人も首を傾げるのではないでしょうか」

 慰めるように口に出す。

「・・・・・・まあ、とにかく」

 コホンと、咳払いを一つ、サンは気を取り直して課題へと向かう。

「あたりさわりのない無難なものにしよう」

「そういうこと言う人が本当に無難なものを出したことって、あるんですかね?」

「はなさん・・・・・・?」

 サンは何とも情けない顔をする。

「まあ、それほど気張らずに。・・・・・・テーマはどうするんです?」

「・・・・・・むう」

 また悩みだしたサンに苦笑し、はなは少し考えて、ぽん、と手を打った。

「そうだ」

「?」

 何か思いついた風なはなに、サンは疑問の顔を向ける。

「これでどうです?」

 はながテーブルに置いたのは、

「飲みかけのペットボトル」

「ではなく、ジュースです」

 飲みかけの炭酸飲料を見て、サンが首を傾げるのに、はなは説明する。

「ここに、新商品のジュースがあると仮定します」

「何味ですか?」

「・・・・・・・・・・・・サンが好きな味は?」

「リンゴ?」

「ではリンゴで」

「ではって・・・・・・」

「こういうのは何でもいいんですよ」

 ええい、と強引に話を断ち切って、はなはサンへとペットボトルを突きつける。

「さあ、美味しいリンゴジュースです。宣伝文句は?」

「・・・・・・・・・・・・『すっぺえ』」

「なんで?!」

 驚愕の声を上げるはなに、サンは頭をかいて、

「いや、なんか浮かんだ」

「それ、ジュースの販売のうたい文句としてどうなんです?」

「ないね。ぼくだったら買わない」

「わたしも買いませんよ」

「・・・・・・リンゴジュース。・・・・・・リンゴか…」

 むう、と唸り、ふと何かひらめいた様子で、サンはスマホをいじりだす。

「何か思いつきましたか?」

「うん。なんか出た」

 すらすら、とサンの持つペンが紙面を滑った。

「できた」

 いくつかの色ペンを組み合わせ、かき上げたサンの上げた声に、はなは紙を覗き込む。

「・・・・・・これは?」

「リンゴ」

「ええ」

「リンゴが赤くなると、医者が青くなる、と言います」

「そういう言葉もありますねえ・・・・・・」

「というわけで、リンゴのいい部分を抽出した健康ドリンク。スローガンは『医者への反乱』」

「・・・・・・・・・・・・まあ、課題としてならいいのでは?」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ