浮き島、足、ルーレット
ルーレットを回す。
からからと軽い音を立てて回り、止まる。
「七か」
いち、に、さん、と数えながらコマを進め、七つ目で止まる。
「・・・・・・相手プレイヤーとじゃんけんをし、勝てば三マス進み、負ければ一回休み」
「では、じゃんけん・・・・・・」
「ポン!」
負けてしまった。
「一回休み、と」
ふう、とため息を吐く。
「二人とはいえ、結構かかるね、このすごろく」
「すごろく扱いでいいんでしょうか。これは」
今日、ぼくとはなさんはボードゲームをしている。
サークルの部室にあったボードゲームで、なにやら昔先輩が持ってきて、置いていったもののようだ。
ルールとしては、すごろくがベースだ。
人生ゲームの方が近いかもしれないけれど。
プレイヤーは、ルーレットを回し、出た目の数だけ進むのは、ふつうのすごろくと同じ。
違うのは、マスに書かれたイベントだろう。
ゴールに着けば勝ち、というルールではない。
マスは一周していて、勝負が決まらなければ何週かすることになる。
その何週かしているうちに、勝利条件を満たせば勝ち、というのが、ルールだ。
勝利条件となっているのは、キーとなるアイテムを集めること。
アイテムを取得する条件は、マスのイベントによって違うが、最初に何個のアイテムを先に集めたほうが勝ち、と決めてから、ゲームはスタートする。
ちなみに、今回は五個にした。
やってみた感じ、一周一個手に入るくらいだから、五周もすれば、勝負はつくはずだ。
今は、三周目である。
ぼくは、二個、はなさんは、三個持っている。
「では次はわたしが・・・・・・」
はなさんが、ルーレットを回す。
「・・・・・・ええっと、浮島を渡る橋を見つけた。ルーレットを回し、偶数なら橋を渡る。奇数なら渡らない」
こういった分岐の選択も、ルーレットで決まる。
はなさんが、もう一度ルーレットを回すと、
「・・・・・・四、ですね」
偶数なので、分岐したルートだ。
「・・・・・・なんていうか、完全に運ゲーだよね。このボードゲーム」
「そうですね。プレイヤーがルーレット回すしかできませんから」
なんというか、ルール的に通常のすごろくとは違う割に、プレイヤーに介入させないゲームルールだ。
「まあ、おかげで、ぼくでもはなさんと互角の戦いができているけど」
「ふふ。サンは、あまり考えませんよね。ゲームの時は」
「考えるより動いて試す派。習うより慣れろの精神。・・・・・・行き当たりばったりでもあるけど」
「普段何かするときは、割と考えることも多いのに」
「ゲームの時だって考えてるよ? ただ、考えるより動かした方が、予想外なことが起こって楽しいんだもん」
「なるほど」
くすくすと笑いながら、はなさんはルーレットをこちらへとよこそう、として、
「そういえば、一回休みでしたね」
「ああ。そうだった」
うぐ、と詰まる。
「では、もう一度、と」
くるくるとルーレットが回る。
「・・・・・・なんていうか、ルーレットが回っているのを見ると、ついその動きを目で追ってしまう」
「またかわいらしいことを。・・・・・・わかりますけど」
数字ごとに鮮やかに色が付けられたルーレットだ。
くるりと勢いよく回すと、なんとも鮮やかに見える。
「くるくるー」
「あ、五、です」
はなさんがコマを進める。
「・・・・・・ええっと? 洞窟を見つけた。中を探索し、宝箱を見つける。ルーレットをまわし、偶数なら鍵。奇数ならガラクタ」
鍵、というのは、ゲームに勝利するためのキーアイテムのことだ。
「むむ。奇数、奇数出ろ」
「はいはい」
くるくるとルーレットが周り、
「一」
「よしゃ」
ぐ、とガッツポーズ。
「ここで四個目取られたらリーチだからね」
「運がよかったですね。サン」
「まだ、負けないよ」
くっくっく、と言いながら、ルーレットを回す。
「二」
いち、に。
「・・・・・・あ、運よく鍵を拾った。アイテムを一つ手に入れる」
「あら。ラッキーなイベントですね」
「三対三だ、並んだぞー。はなさん」
「これはうかうかしていられませんねえ」
ご機嫌な調子で、はなさんがルーレットを回す。
もう少し、というところで、なかなか二人に鍵の来ない展開が続いて、
「あ、四個目です」
「むぐ! まだだ」
えいや、と回す。
「・・・・・・・・・・・・一回休み」
「ではでは」
「なんか、ぼくだけ一回休み多くない?」
「こういうところで、サンは運が悪いですよねえ」
微妙な苦笑を浮かべて、はなさんはルーレットを回す。
「・・・・・・あら、わたしも一回休みですか」
「・・・・・・つまり、ぼくの番だ!」
どりゃあ、となんとなく気合を入れて回す。
「・・・・・・あまり勢いよくやると、ルーレットが壊れますよ? ちゃちなプラスチックなんですから」
「おっと、それはそうだった、と」
あまり新しいものでもないし、付属のルーレットは結構がたついてもいる。
「・・・・・・? あ、初めてのイベント」
「なんです?」
「指名したプレイヤー同士でルーレットを回し、数の多かった方に、鍵を一つ譲る」
「ほう? つまり、わたしが勝つと、その時点ででわたしの勝利ですね」
「・・・・・・それは、負けられない」
はなさんをにらむと、にっこりと受け流された。
「では、サンからどうぞ」
「ようし!」
ルーレットの数字は、一から七。
つまり、一番大きな数は、七だ。
「出ろ、七!!」
ルーレットを回す。
「オチが見えます」
「何おう?!」
三だった。
「くう、低い! これは、これはまずい」
「まあまあ、七分の三ですから。・・・・・・では、つぎはわたしが」
えい、とはなさんがルーレットを回す。
「・・・・・・一、二、一、二」
「なんの掛け声ですか」
くす、とはなさんが笑って、ルーレットが止まり、
「四・・・・・・」
「あー。わたしの勝ちですねえ」
ふっふっふ、とはなさんが笑っている。
「・・・・・・負けた」
五対二ではなさんの勝ち。
「・・・・・・なんか、やっぱりはなさん運がいいんだよなあ。引きが強いというか」
「そうでしょうか? 普段から、あまり意識はしたことないんですが」
「でもさ、はなさんとゲームすると、たいていいい目を引いてるよ? はなさんは」
「まあ、ゲームのことですから」
二人で片づけをしながら、何とはなしに言い合う。
ぼくとはなさんの二人。
「・・・・・・案外、はなさんを拝むとぼくの運もよくなるのでは・・・・・・?」
「何をばかなことを言っているんですか」
しょうがないですねえ、とはなさんは嘆息した。
「ぼくは、もっとはなさんに勝ちたい」
「そうですねえ・・・・・・。では、次は楽しむより勝つこと優先で、頭を使ってみたらどうです? サンはそういう戦略を立てるの、結構得意なんですし」
「・・・・・・疲れるんだよね。頭を使うと」
「あらまあ・・・・・・」
はなさんは、苦笑している。
「でも、ゲームは楽しいんでしょう?」
「うん」
「じゃあ。いいんじゃないですか? 足し引きゼロで」
「・・・・・・そうだね。はなさんとゲームできるなら、プラスってことで」
「サン。そのセリフは少しクサイです」
「・・・・・・むう」




