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英単語、新しい、限りある

 にらみつけている。

「どうしたんですか?」

 はなさんに声をかけられて、ぼくはそちらを振り向いた。

 はなさんは、ぼくを見て、もう一度、

「どうしたんですか?」

と問うてきた。

 ぼくは、手に持っていたスマホの画面を見せる。

「・・・・・・英語?」

「うん。海外のゲーム会社のサイト。ちょっと見てた」

 へー、と言いながら、はなさんが傍に腰を下ろす。

「それで、どうしてあんなににらみつけていたんですか?」

「いや、単純に読みづらいなーと」

「ああ・・・・・・」

 一応、日本語翻訳はなされているものの、スマホだと画面が小さくて見づらい。

「でもどうして海外のサイトを?」

「んー。ゴロキュー先輩が、今度出るおすすめゲームって教えてくれたんだけど、日本語訳はされない海外ゲームらしくて」

 一応情報収集、ということである。

「そんなので、ゲームできるんですか?」

「んー。ゲームの操作方法なんて、コントローラーの形状がそんなに変わらない以上、大体どんなゲームも一緒だよ。慣れれば説明書なしでも、直感で大体ゲームできるようになるもの。ゲーム特有の細かいルールとかは、きちんと把握しないとうまくいかないけどね」

「そういうものですか」

「そ。ボードゲームの類と違って、テレビゲームは基本的に操作方法は一緒だよ」

 アクションゲームなんて最たるもので、ジャンプボタンの位置は、同じ会社のゲームなら大体同じだ。

 他のゲームでも、コントローラーに合わせるため、大体操作方法は同じになる。

「・・・・・・・・・・・・とはいえ、まったく何の情報もないと、あんまり面白くないから」

「ふむ?」

「例えばさ、全編英語でストーリーが進むと、まったく訳が分からなくなる」

「それは、まあ、そうでしょうね」

 はなさんも想像して頷く。

「字幕なしで海外映画見るようなものですよね」

「雰囲気はつかめても、細かいところが分からないとやっぱり面白味がないからね」

 肩をすくめた。

「・・・・・・子供のころさ」

「はい?」

「小学生になるかならないかの位の時。テレビゲームしててもアクションゲームしか楽しめなかった」

「そうなんですか?」

 んー、と唸って、

「できなくはないんだけどさ。RPGにしろ、シミュレーションにしろ、ある程度ストーリーとか戦略が大事じゃない? そういうのを全部無視して進めると、何やってるのか分からなくなっちゃうから、途中で飽きるんだよね」

 主人公が城から旅立った。

 なんで旅立ったのかもわからなければ、どこに行けばいいのかもわからない。

 町の人に話を聞けばいい、と思うのだけれど、

「町の人は、西に行けという。・・・・・・テレビの上で西ってどっちってなる」

「上が北なら、西は左でしょうか」

「そうなんだけどね。子供のころ、東西南北の知識がないと、まったくそういうのわからないわけでさ」

「ああ。なるほど」

 ぼくが苦笑して見せると、はなさんも頷いた。

「ゲームをしっかり楽しむには、ある程度は常識が必要。ところが、アクションゲーム。特にベルトスクロールアクションなんかは、そういうのいらないんだよね。ひたすらに右に進めば大体なんとかなるから」

 そういうわけで、ひたすらダッシュとジャンプになる。

「で、ある程度勉強して、知識を得て、昔できなかったゲームとかできるようになると、成長したなあ、と思う」

「そんなことを成長を実感するんですか」

「するんですよ」

 ふふふ、と笑って見せると、はなさんも苦笑していた。

「・・・・・・それで、今度は英語のゲームですか?」

 話が戻ってきた。

「まあ、すすめられたからには、ちょっとやってみようかな、と」

 値段もそれほど高くないみたいだし、ちょうどいいかと思ったのだ。

「ただ、まったく予備知識がないと、ストーリーとかつかめないと思ったから」

「ある程度知っていればどうにかなる、と?」

「んー・・・・・・」

 ぼくは少し考える。

「どうにか、とまではいかないけど、先に読んでおいて、同じ単語が出てきたら意味が分かりやすい?」

 ちょっと説明が難しいな、と思う。

「アメリカが舞台と知っていれば、ニューヨークが地名って分かるけど、ヨーロッパが舞台と思ってたら、ニューヨークって出ても新しい何か? とか思うかもしれない、的な?」

 この表現でいいのかな、と思いつつもいう。

「ふむ・・・・・・」

「まあ、そういう感じ。知っているのと知らないのじゃ違うから」

 ぼくはそう言って、またスマホを見た。

「・・・・・・でもさ」

「?」

 しばらく見ていて、ふと思う。

「高校まで英語習ってきたけど、映画の字幕とかゲームの文章とか、そういうのを見て覚えた英単語の方が多い気がするのはなぜだろう?」

「興味の問題だと思います」

「だよね」

 興味あることは覚えやすい。

「あれだよね。主人公の技の名前に英語が使われていると、どういう意味かな、とか調べたくなる感じ」

「気持ちはわかりますよ。なんだか知らない単語で名前を付けられていると、ちょっと意味を調べてみたくなりますよね」

「そういう名前の意味って、あとで伏線になったりするしね」

「そうなんですよねー。・・・・・・日本の作家さんは、そういう仕込み好きな人が多い気がします」

「あー・・・・・・」

 分かる気がする。

「なんか名前の意味って大事にするよね」

「ええ」

 そうだなあ、と考える。

「英語の成績、そんなに良くなかったけど、雑に読んで意味を取るくらいなら、割となんとかなったもんなー」

「和訳は正確にしないと点数もらえませんでしたね」

「英単語を覚えるのに必死。毎回授業ごとに十個の英単語の小テストがあった思い出」

「そんなことしてたんですか?」

「うん。六問正解しないと後日再テスト」

「・・・・・・毎回、ですよね?」

「そうだよ? 点数悪いのを連続させると、学期末に何個も再テスト受けさせられるの。・・・・・・懐かしい」

 最終的に、どうしても一つクリアできなくて、先生にもういいよと言われたことを思い出す。

「・・・・・・限りある記憶容量に、英単語をこれ以上新しく詰め込めなかったんです。ごめんなさい先生」

「他にいらんことたくさん覚えてたからでしょう。それ」

 はなさんは、ぼくの懺悔に呆れた声を返すのだった。

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