夜型、B級映画、えこひいき
「・・・・・・大学に来てから、夜遅くに起きていることが多くなった気がする」
「気のせいではないでしょうね」
はなさんも頷いた。
「あはは。やっぱりそうなんだ。・・・・・・はなさんも?」
「うーん・・・・・・」
ちょっとはなさんは悩むと、
「・・・・・・いや、確かに夜更かしへの抵抗は少なくなってます」
「わかるー」
眠い目をしている自覚はある。
それはともかく、ぼくは結構今日はきつい。
「あれだよね。大学って、朝一で講義がないと、朝起きるのが遅くなってもいいから、別に夜更かしして寝坊してもいいやってなって・・・・・・」
「健康に悪いですね」
「まあねえ」
「わたしは、朝起きる時間はできるだけ一定になるようにしていますから」
「そうなの?」
「朝起きる時間を不定期にするのって、結構疲れますからね。・・・・・・休日でも、朝起きる時間はできるだけ同じにしておいた方が、調子は整う気がしますから」
「気のせい?」
「気の持ちよう、ということです」
はなさんは頷く。
「講義の取り方さえ工夫したら、夜型に近い生活もできそうだもんね。大学って」
「健康に悪い」
「・・・・・・・・・・・・不思議な感じなんだけどさ。朝起きて夜寝るじゃん? じゃあ、それを完全に逆転した場合、それでこう、同じ時間に起きて同じ時間に寝る生活をした場合」
「完全な昼夜逆転、ということですか?」
「そう、それになった場合、果たして健康に悪いんだろうか?」
「・・・・・・・・・・・・不規則な生活をするよりは大丈夫かもしれませんけど」
んー、とはなさんは唸る。
「日光を健康的に浴びれない生活は、やっぱり健康に悪いでしょうね」
「・・・・・・吸血鬼なら大丈夫そうなのにね」
「人間は吸血鬼じゃないですからね」
ぼくの変な冗談にも、はなさんはくすくすと笑っている。
「夜の方がいろいろ楽しいけどね」
テレビ、ゲーム、マンガ。
夜にやる方が楽しく思える。
「でも、夜にやって楽しいことって、大体一人でやることじゃないですか?」
「む・・・・・・?」
そう言われると、と思う。
「わたしは、昼にサンと話す方が楽しいですけどね」
くすくすとあなさんが笑う。
「ぼくもはなさんと話すのは楽しいけどさあ。・・・・・・でも一人で楽しめることは、はなさんと話す時のネタになったりするんだよなあ」
「あらあら」
はなさんと話すネタなんて、仕入れがなくてもいくらでも不思議と湧いてくるけれど、ネタがあるとそれはそれで楽しいのだ。
「でも、一人で夜の時間に、じんわりと映画を連続で見るとか楽しいよ?」
「楽しいのは分かりますけど、休憩、取ってますか?」
「取ってるよ? 映画は元気がないと楽しめないから」
感動するためには体力が必要だと思う。
疲れているときは、感動の仕方も適当になってしまうと思っている。
「ただ、シリーズものとかさ、連続で見ないと気持ち悪くなったりして」
「サンは、なんていうか集中すると限界無視していろいろやってしまいそうで怖いんですよね」
「えー。はなさんはそういうことないの? 本を読んでて、ついつい夜更かししてしまいました、みたいな?」
「よくやりますけど、それが?」
にっこりと笑いながら言われると、どうにも反論がしづらい。
「朝きつくない?」
「朝、後悔する、と分かっていても、読まなければそっちの方が後悔しそうで・・・・・・」
「本くらい、ぶっちゃけ空いた隙間時間でいくらでも読めそうだけどね」
「続けて読むのがいいんですよ」
「・・・・・・・・・・・・はなさん。さっきまでのぼくと立場逆転してますよ?」
「・・・・・・おっと、これはいけませんね」
ふふふ、とはなさんは笑った。
ふう、と一つ息を吐いて、
「まあ、一人でやる楽しいことは、基本的にそれに夢中になると体に悪い、ということで」
「そうだね」
「寝不足でクマを作るようなことはしないでくださいよ?」
「あはは」
笑い事じゃないですよ、という顔をはなさんはしている。
「気を付けます」
「わたしもそうしますよ」
笑い合う。
「・・・・・・そういえば」
「? どうしました?」
「前にさ、サークルの先輩たちが、そろそろ映画を作りたいねえって言っててさ」
「・・・・・・何が、そろそろ?」
「ぼくもそう思う」
あの先輩たちは、基本的に変人ばかりなので、考えを読むのは不可能に近い。
「ただ、なんか楽しそうなことをしようとしているな、ということだけわかってる」
「へー」
「下の先輩たちが、上の先輩にえこひいきすんなよって言ってたけど、配役のことかな?」
「あー。なんか、絶対ろくでもない脚本が上がってきそうな気がします」
「あの先輩たち、徹夜明けのハイテンションに泥酔状態をプラスして脚本作りそうだしね」
「むしろ、ノリノリでそれやりますよね」
「素面じゃ、面白いものなんて作れないだろ、とか平然と言うタイプだよね。あの人ら」
「シラフで面白いものを作っている、世界のプロに謝れって感じですが」
はなさんが厳しいこという。
「ぼくと、はなさんと、ナオさんと、湯原さんがキャストにされるよ。あの人らのイジリはそういう感じになるはず」
「ひどい話です」
やれやれ、とはなさんはため息を吐く。
「・・・・・・きっと、ひどいB級映画ができるに違いない」
「間違いないでしょうね」
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