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チーズ、船、まとめ買い

「おお。山盛り」

 机の上に、でかいお菓子箱がある。

 船形をした箱だ。

 その上に、お菓子類が盛りに盛られている。

「・・・・・・ふぇへへえ」

「気持ちの悪い笑い方をしない」

「わお。はなさんこんにちはー」

「こんにちは」

 はなさんがあきれ顔で立っている。

 今日は、ぼくの部屋だ。

 はなさんを招待してみた。

 理由は、目の前にあるお菓子の山である。

「菓子の船盛だよ。どう?」

「どう? と言われても・・・・・・」

 はなさんは困惑を浮かべてみる。

 結構な種類があるお菓子の山を見て、どうにも困っているようだった。

「これ、どうしたんですか?」

「懸賞で当たった」

「・・・・・・ああ、なるほど」

 ぼくの言葉に納得した顔になったけれど、ぼくは下にある船部分を示す。

「この船とその中のお菓子ね。上に積んであるポテチとかは、ぼくが買ってあった買い置きを積んでみた」

 実際に当たった量はテーブルの上の船に積まれた量の半分程度だ。

 チョコ菓子、飴菓子をはじめとした駄菓子の類が詰め込まれていた。

 ちなみに、船の部分は紙でできているため、ぶっちゃけちゃっちい代物ではある。

 送られてきたものだけだと、微妙に迫力が足りなかったため、ぼくの方で上に積んでみた結果、それなりに迫力のある出来となった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、買い置きということなら」

 なんとも言えない顔をした後、はなさんは一つため息を吐いて、部屋へと入ってきた。

「まあ、なんか積んでみたら結構いい感じってことで」

「でも、こんなに買い置きしてあったんですか?」

「いや、ぼく、もともとスナック菓子ってあんまり食べないんだけどね」

 首を傾げる。

「そうなんですか?」

「毎日ってほどじゃないよ。ごはんをよく食べるせいで、お菓子が入る隙間がないともいえるけど」

「・・・・・・確かに」

 サンはよく食べますもんね、と微笑まれて、頬をかく。

「とはいえ、小腹が空いたときには便利だし? ぶっちゃけそうそう腐るようなもんでもないし? そういうことで、スーパーとかでセールやってるときにまとめ買いしたりしてる」

「なるほど」

 はなさんは積んである袋の一つを手に取る。

「・・・・・・・・・・・・オーソドックスなものが多いですね?」

「まあ、基本的には小腹が空いた時用の、いうなれば非常食だからね? 正統派というかなんというか、な味が多くなるよ」

 並べてみると、うすしおをのりしおが多い。

「特殊な味とか季節限定、とかは、店先で食べたくなった時に買うやつだから。そういうのは、買ったらその日の内に食べちゃうから」

「そういうものですか」

 はなさんがおかしをテーブルの上に並べ出したため、

「飲み物用意するよ。何飲む?」

「コーヒーで」

「・・・・・・はなさん。ぼくの家来ると毎回コーヒー頼むけど、おいしい?」

「ちょっとずつ味は良くなってますよ?」

 ふふふ、とはなさんが笑うため、正直面映ゆい。

「いや、まあ、はなさんが喜んでくれるならいいけど」

「ではアイスコーヒーにしてください」

「はーい」

 流し台へ向かう。

「あ、好きなのあったら食べちゃっていいから」

「はい」

 はなさんに言い置いて、キッチンに立って、お湯を沸かす。

 いつもの手順でドリップコーヒーを用意するが、ドリップするポットの中へ氷を詰め込んでおく。

 そして、いつものようにお湯でドリップ。

 下に溜まったコーヒーは、ほどよく氷で冷えたアイスコーヒーだ。

 氷が解けるため、コーヒーは粉の量を多めにして、濃いめに淹れている。

 ぼくの思うおいしいアイスコーヒー。

 それをコップに入れて、はなさんのところへ戻る。

「はい」

「ありがとうございます」

 はなさんは受け取って、一口。

「しみますねえ」

「そんなコーヒー一杯に・・・・・・」

「ふふ。今日も外は暑いですから」

「そう?」

 ぼくも一口。

 おいしくできたかなあ、と思うけれど、コーヒーとして飲めない味ではないし、割と淹れたてのコーヒーは美味しく感じるものだし。

「ああ、そこの方に結構お菓子が詰まってますね」

「ね。量があるから、欲しいのあったらあげる」

「あら。いいんですか?」

「懸賞で当たったやつだからなあ・・・・・・。けちけちと独り占めするものでもないよ」

「そうですか。では、いくつかもらっても?」

「どうぞどうぞ」

 はなさんが一つ一つお菓子を見比べているのを見つつ、ぼくも一つお菓子を手に取る。

 棒付きチョコだ。

「・・・・・・このチョコレートを棒付きにする意味とはいったいなんだろうか?」

 食べるとすぐさまかじってなくなってしまうため、棒を持っている意味があまりないような気がする。

「そういうデザインですよ」

「・・・・・・そうだね」

 二人で、適当にお菓子を見つつ、コーヒーを飲みながらお菓子を食べる。

「はなさんは、夏休みはどうするの?

「どう、とは?」

「大学の夏休みって結構長いらしいじゃない? はなさん、どこか旅行行ったりするかなって」

「そうですね。今のところ予定はないです。サンは?」

「お盆にじいちゃんばあちゃんのところに行くだろうし、その前あたりで、一回実家の方に帰ると思う。バイトのこともあるからそんなに長くはないだろうけど、一週間くらいはこっち留守にするかなあ?」

 まだぼんやりとした予定しか決めていない。

 お母さんとも相談しないとなあ、と思う。

「そうですか」

「帰る前に、どっか遊び行く? 海とか」

「いいですねえ。でも、この辺海はないですから」

「山か」

「キャンプですか。それもいいですねえ」

 未定の予定を話し合う。

 決まっていないことを想像する楽しさは、なんというか、格別だ。

 はなさんとしゃべっていると、なおのことそう思う。

「・・・・・・まあ、山だ海だ、と行かなくても、電車でちょっと遠出する、ていうだけでもいいかもね」

 ぼくがチーズ味のスナックをかじりながら言うと、はなさんも頷いた。

「別に、行き当たりばったりのテンションで決めてもいいでしょうね。ナオやすずさんも誘ったりして」

「・・・・・・いいねえ。夏だねえ」

 テンションが上がる話題だ。

 夏が楽しみになる。

「何より、夏休みの宿題がないのがすばらしい」

「サン・・・・・・」

 ぼくがもっともだと頷きながら言うと、はなさんからは、呆れの混じったため息を吐かれた。

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