オペレーション、手品、とんがり帽子
とんがり帽子を用意する。
厚紙を丸め、三角錐の形を作って、重なった部分を止めていく。
口になる部分を、ハサミで切って、
「ほいほい」
紙の切り口で手を切ったりしないように、フェルトを当てて、
「ホチキス」
ぱちぱちと止めておく。
「・・・・・・んー。はなさん。こんなもん?」
「・・・・・・ええ、いいですね」
はなさんのお手伝いをしている。
何をしているのかと言えば、はなさんが時折やってるボランティアの手伝いである。
地区の子供会のイベントの一つ、ということらしい。
とんがり帽子は、ちょっとしたパーティー仕様ということらしい。
先端に丸い飾りをつけてみたり、周りに星の模様を描いてみたり。
いくつか作ってみると、それなりにバリエーションができていく。
「あ、あんまりデザインに差は作らないでくださいね」
「?」
「色違いのバリエーション位ならいいんですが、あんまり違うデザインを作ると、特別感が出るのか、奪い合いになることもあって」
「おお。そういうことも考えるの?」
「まあ、ケンカするなら好きにすればいいって人もいますけど、予測できるトラブルのもとなら、失くしておくに越したことはないですから」
ふふふ、と笑うはなさんに対して、ぼくは感心する。
「経験豊富、って感じだねえ」
「まあ、何回もやってますから」
はなさんは、何かの本を読みながら、手元をちょこちょこ動かしている。
何をしているのか、といえば、イベント用にいろいろ用意しているらしい。
ぼくがやっていることは、ちょっとした小道具の用意でしかないため、それほどでもない。
イベントのメインの進行は、基本的にはなさんがやる。
「で、はなさんは何やるか決まったの?」
「そうなんですよねえ」
困った、と頬に手を当てている。
「漫才はさすがに無理だもんね」
「わたしとサンなら、あるいは、とも思うんですが」
「いや、無理でしょ。子供に受けるネタとか、ちょっと難しいって」
素人芸をやるのはちょっと嫌だ。
最初にはなさんから提案されたときは、かなり本気で嫌がってしまった。
「本当にやるなら、サークルの先輩巻き込んで、ガチなネタ作るからね?」
「変なところで凝りますね」
はなさんは苦笑を浮かべて、首を振る。
「大丈夫、そこまでは頼みませんよ」
「まあ、こういう小道具づくりなら、いくらでも手伝うけど」
とんがり帽子を持ち上げて見せる。
机の上には、すでに十個ほどのとんがり帽子が重ねて積まれている。
「こういうのをかぶってパーティーって、今でもやるの?」
「こういう形態のイベントだから、こういうのもありでしょうって。思いつきでなんとなく集まるんじゃなくて、ちゃんと企画立ててイベントやりたいみたいですね」
みたい、という言い方に、ちょっと首を傾げて聞いてみる。
「・・・・・・そういえば、このイベントってボランティアってことになってるけど」
「ボランティアですよ。一応は」
「一応?」
「だから、企画です。・・・・・・発案者は九十九先輩ですが」
「何考えてんだあの先輩」
「なんでも、試作のケーキとかいくつか思いついたけれど、作った分をどうやって消費しようか、と考えて人の口を増やそうと考えたらしいです」
「あー」
「そこにゴロキュー先輩が乗っかって、どうせなら、イベントにしてしまおう、と盛り上がっているようで」
「芳賀先輩は?」
「金にならない仕事はしないそうです」
「・・・・・・はーどぼいるどかな」
まあ、それで楽しいことが起きるならいいか、と作業に戻る。
「それで、はなさんは手品するんだっけ?」
「ええ」
今、本を読んで練習中、というわけだ。
「本番でお手伝い頼んだら」
「アシスタントくらいならいくらでも」
へへ、と笑いながら答えれば、はなさんもにっこりと笑ってくれた。
「少し手伝っていただけるなら、ちょっとできること増やせそうですし」
「あんまり難しいのは無理だよ?」
「練習時間は取りますよ」
「えー」
「それに、それほど人数来ないとも思いますし、基本はテーブルの上でやるのを選ぶつもりですし」
「手品かー」
「あとで、見せますから、いろいろ意見くださいね」
「うん。楽しみ楽しみ」
くすくすと笑う。
「手先の器用さとごまかしが重要です」
「ごまかし。まあ、タネを用意しているところを見られなけりゃ、大概手品はうまくいくと思うけど」
「そう、そのごまかしをどうするか、なんですよねえ」
ふう、とため息を吐きながらも、はなさんは本のページをめくっていく。
「ゴロキュー先輩からは、いくつか手品ネタももらってるんで、そっちも準備しますけど」
「おー。やる気だ」
「なんだかんだで、実はちょっと楽しみにしています」
そのあとも、ちょいちょいと雑談をしながら、準備を進めた。
+++
イベント当日。
「ちょっと緊張」
そっと覗くと、会場の中にはぼくの作ったとんがり帽子をかぶった人の姿が見える。
子供の数は多くなくとも、その保護者も一緒に出ているため、人数自体はそれなりだ。
「では、準備完了ですね」
シャツとスラックスという白黒のシンプルなスタイルのはなさん。
「似合うねえ。そういうシンプルなスタイルも」
「そうですか? もうちょっと派手にしてもよかったんですが」
「ふふふ。コスプレにしてもよかったかもね」
「いやあ。子供に受けるコスプレは、慣れないときついですよ」
はなさんは、ワゴンに載せた手品のタネを確認していく。
「・・・・・・じゃあ、お手伝い、お願いします」
「うん。まかせて」
頷き合い、ポン、と小さくハイタッチをして、
「いきますよ」
「オペレーションスタートってね」
簡単に用意したステージに、二人で進み出るのだった。
余談ではあるけれど、パーティーの余興としては、十分成功だった。
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