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小窓、雨天決行、パーセント

 ふと、足を止めた。

 はなさんの家の階段の途中には、小窓がある。

 明り取りのためなのだろう。

 すりガラスで、外が見えるようにはなっていない。

 窓枠は少し広めで、そこには花瓶が置いてあり、造花が飾られている。

 レースカーテンもかけてあって、インテリア、という感じだ。

 その小窓から外の明るさを見て、

「んー。雨、降るかなあ」

 独り言だけれど、ぽつりとつぶやく。

 天気予報を見ればすぐにわかることなのだろうけれど、ちょっと考える。

「・・・・・・まあ、洗濯物は干してないし、別にいっか」

 気にしてもしょうがない。

「傘がないけど」

 最悪、少し濡れながら帰ることになるかもしれないが、最近は暖かいを通り越して暑い天気も多いし、雨に多少濡れたところで、かえってシャワーを浴びるなりすれば、風邪をひくこともないだろう。

「・・・・・・」

 気にすることはないのだろうけど、と思いながら、階段を上る。

 はなさんの部屋へ向かう。

「はなさん。ぼくとしては考えることがある」

「開口一番なんですか? いきなり」

 ぼくが言い出したことに、はなさんは首を傾げる。

「いや。今日は普通にはなさんの家に遊びに来てしまいましたが」

「来てしまいましたが?」

「外の様子はどう?」

「どう、と言われても・・・・・・」

 ちら、と窓から外を見ると、曇り空が広がっている。

「やっぱり、降ったり止んだり、という感じですね」

 今日はなさんの家に遊びに来たのは、なんだか天気が不安定でいつ雨が降ってくるかわからなかったからだ。

 別に喫茶店なりなんなりに入ってもよかったのだけれど、今日はなんとなくはなさんの家に来た。

 はなさんが誘ってくれたのもある。

 座って、はなさんのくれた麦茶を飲む。

「・・・・・・麦茶ってさ。アイスはないよね」

「はい?」

「いや。紅茶なら、アイスティー。コーヒーなら、アイスコーヒーっていうけど、麦茶はアイスないじゃない」

「基本的に麦茶は冷たい状態で飲むのが多いからでしょうね」

「熱い麦茶って、のまないよね。温い麦茶はあるけど」

「それは放置しておいて、常温に戻っただけでは?」

「温い麦茶も飲みやすいからぼくは嫌いじゃないよ」

「ふふふ。なんでもおいしそうなのは、サンのいいところですね」

「・・・・・・・・・・・・暗に子供っぽいと言われている気がする」

 くすくす笑うはなさんから視線を外して、麦茶をポットから注ぎなおして飲む。

「なんていうか。こういう夏前の微妙な天気の日はちょっと困るね」

 ぼやいた。

「蒸し暑くてさ・・・・・・」

「そうですね。湿度が上がりますから、蒸し暑くなりますから」

 エアコンの恩恵がありがたい。

「電気製品売り場とか行くとさ。服に扇風機のついたジャケットが売ってたよ」

「あー。・・・・・・なんていうか、子供のころ考えた夏でも涼しい服を実現したような奴ですよね・・・・・・」

「バッテリーが必要だし、モーター動かす分熱も出て、逆に暑いんじゃ、と思わなくもないけどね」

「体感温度というものは、空気の流れがあるだけでも随分と違うものらしいですよ。エアコンだって、設定温度が高くても、扇風機で風を回してやると、ずいぶんと涼しく感じるようになるものです」

「へー」

 部屋の隅に、サーキュレーターが置いてある。

「あれもそれ?」

「ええ。あれも、そのためですね。節電ですよ」

「なるほどなぁ」

 ふうむ、と唸る。

「やっぱ、僕も買おうかな。扇風機」

「いいんじゃないですか?」

「・・・・・・高くはないしねえ」

「安いのなら、それこそ千円からありますよ」

 なるほどなあ、と頷きながら、スマホでついつい、と検索をして、

「ようし、今度買いに行こう」

「そうですか。・・・・・・付き合いましょうか?」

「いいね」

 決まってくると、テンションも上がってくる。

「結構、一年中回しっぱなしにしても不快感がないんですよね」

「そうなの?」

「ええ。結局のところ、部屋の中の空気をかき回せると、全体的に快適に過ごせるんでしょうね」

「それってつまり、部屋を閉め切るより、窓でも開けて空気の入れ替えをした方が、いろいろ快適となるということ?」

「空気がこもっていると嫌な気分になるのは、どんな人だっておなじじゃないですか」

「それは、まあ、そうだね」

 はなさんの言葉に頷き、

「・・・・・・雨が降っていると嫌な気分になるのは、空気の入れ替えができないからか」

「朝起きて一発目で窓開けるようにしましょうよ。風が入ると気持ちいいですよ?」

「でも、これからの季節は暑いぞー」

「暑くても、風があるのとないのでは違いますから」

「まあ、それは感覚的に分かるけどね」

 本当に感覚的だけど。

「・・・・・・・・・・・・あれ? 何の話をしてたっけ?」

「今度扇風機を買いに行く」

「そう、それ・・・・・・、だっけ?」

「麦茶がアイスしかないのはなんで、とか、思い起こさなくてもいいでしょう?」

「そうだね」

 ええと、とスマホを操作して、

「週末の天気。降水確率は、三十パーセント」

「また微妙な・・・・・・」

「湿っぽい一日になりそうだ・・・・・・。この日でいい?」

「わたしは、特に予定はありませんね」

 はなさんもスケジュール帳を確認して、頷いてくれた。

「じゃあ、その日に」

「どこかに待ち合わせしますか?」

「駅前だと、雨降った時困るし、近くの喫茶店で」

「ああ。あそこの」

 そうだよ、と頷いて、これは言っておかないと、宣言する。

「雨天決行!」

「店内は屋内ですから、雨降ってても行けますけどね」

 そうですね、と頷いておいた。

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