落ち葉、化ける、露台
毎度のことながら、と思います。
こんにちは、はなです。
いつもサンを見ている、はなです。
サンは今日もかわいいですね。
大学生だというのに、サンには、どこか子供っぽいというか、言ってしまえば、幼い雰囲気があります。
わたしにくらべれば低いですが、サンの背は決して低い方ではありません。
服装はラフでだぼついた服を好んでいますが、こどもっぽい、という印象はありません。
それでも、子供っぽい、と思ってしまうのは、その落ち着きのなさとかわいらしくくるくる変わる表情のせいでしょうか。
今もほら、なんだか道端に一枚だけ落ちていた落ち葉を拾って、くるくると回し、何が楽しいのか笑っています。
かわいい。
サンのことはよく考えます。
毎日、といっても過言ではありません。
いえ、もはや毎時、いやいや、毎分、いやさ毎秒?
気が付くとサンのことばかり考えているわたしは、結構危ない人なのではないか、と時々本気で思います。
サンは、そんなわたしの内心に気づくことなく、屈託なく笑いかけてくれます。
ああ、かわいい。
大学の入学式の翌日、迷子の子供のようなサンと出会えたことは、まさしく運命でした。
ええ、言い切ります。
あれは、運命でした。
一目ぼれ、という言葉を、わたしは強く実感しました。
惚れ、というには違うかもしれませんが、この子は放っておけない、と思い、つい声をかけていました。
声をかけ、自己紹介して、新入生なら一緒ですね、と笑いかけ、手を握ったとき、ふんにゃりと笑ったサンの顔は、今も鮮明に思い出せます。
ええ、サン、かわいかった。
それから、ほぼ毎日のように一緒です。
聞けば、サンは大学生になってから、今までの友達とはほぼお別れをしてしまったとか。
わたしの場合、この大学は実家から近いこともあって、大学内には何人か友達はいます。
最近は、サンに構い過ぎて全く会ってませんが。
時々、スマホに友達から誘いが来ますが、全く対応していません。
サンに紹介して、という声もありますが、取り合っていません。
そんなことしたら、サンが減りますから。
それはともかく。
正直に言います。
サンに出会ってからのわたしは異常です。
はっきりと自覚しています。
こんな、一人に執着するようなわたしではなかった、と思うのです。
サンの魅力にやられてしまった、はなでした。
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「ん・・・・・・」
背を伸ばして、洗濯物を干します。
わたしの家の二階には、小さな露台があり、そこに洗濯物を干せるようになっています。
大学生になってから、自分の洗い物を自分で干すことになりました。
両親は、わたしが大学生になってから、わたしに関する多くのことは私自身がやるように、と言いました。
中学生のころから家事の手伝いはよくさせられていましたが、自分で全部するようになると、実家だというのに一人暮らしをしているようです。
よかった、と思うのは、一人暮らしに不慣れなサンのお手伝いができることでしょうか。
もっとも、サンは物覚えがよく、要領もいいので、一度教えると大概できるようになってしまいます。
わたしに、もっと頼ってほしい、と思うことは多々あります。口には出せませんが。
「・・・・・・さて」
干し終わったところで、スマホを取り出します。
着信は、なし。
「サン。今何をしていますか?」
呟きながらも、この時間だとおそらくサンはバイトでしょう、と見当をつけます。
サンのバイト先は喫茶店です。
サークルの先輩に紹介してもらったというこのバイトを、サンはいたく気に入っているようでした。
仕送りはそれなりにあるため、お金に困ってはいないでしょうが、バイトすることそのものが、サンには楽しいようです。
かわいいですね。
時間的には、今からサンのバイト先に向かえば、おそらくちょうどお客さんの切れ目にお店に着けるはずです。
そうすれば、エプロンをつけたかわいいサンと、しばらくおしゃべりできるでしょう。
「ええ。完璧ですね」
ストーカーみたい、とか、考えてはいけません。
+++
「・・・・・・はなさんて、狙ってこの時間に来てるの?」
「なんでです?」
「いや、いつもお客さんが少ないタイミングだから」
「そりゃ、狙ってきてますよ? せっかくサンがバイトしているのに、邪魔したら悪いですから」
「う~ん」
サンが何か悩んでいます。
「別に、普通に入ってもいいんですけどね? ただ、サンの友達である以上、他にお客さんがいるときは気を遣うべきかな、と」
「じゃあ、ぼくがバイトしているから、はなさんは他の時間にここに来れないの?」
「いえ、そういうわけでもないですよ? 今日なんか、家事を終わらせてここに来たら、ちょうど、この時間だっただけですから」
「・・・・・・ぼくがバイトしてない日でも来てる?」
「来てます。ねえ? マスター」
カウンターの向こうのマスターに問いかければ、頷きが返ってきます。
「ほら。わたしもう常連ですよ。・・・・・・まあ、サンがここでバイト始めなければ、この店の存在を知ることはなかったでしょうが」
「・・・・・・う~ん」
また、何か悩んでいます。
別に、何も悩むことはないと思います。
お店に迷惑をかけているわけではないのですから。
「・・・・・・まあまあ。サンも、あまり気にしないでください。どうせおいしいコーヒーを飲むなら、少しでもサンとお話したいな、と思うわたしのちょっとした小細工ですから」
「・・・・・・はなさん」
サンは、ふう、と呆れの混じったため息を吐きました。
「・・・・・・はなさん。よくぼくと遊んでくれるけど。・・・・・・ひょっとして、友達いないの?」
「・・・・・・」
まさかサンからそんなことを言われるとは。
「いえ、高校からの友達はいますよ? ただ、サンと遊ぶのを優先したいだけです」
「もう! ぼくと遊んでくれるのはうれしいけど、友達は大事にしなきゃだめだよ!」
もう、と叱ってくるサンがかわいいです。
しょうがないですね。
サンの言うことですし、ちょっとお友達を呼び出してみましょう。
ちょうどお客さんが来て接客に離れたサンを見送り、わたしはスマホを操作して何人かの友人にメッセージを送ります。
「・・・・・・・・・・・・おいこら」
返信を見て、思わず頬が引き攣りました。
遊びませんかってメッセージを送っただけじゃないですか。
なんで化けて出るなとか言われるんですか!




