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壁、晴れ、独擅場

 壁にもたれる。

 もへえ、と息を吐いた。

「んが」

「眠いんですか?」

「眠い。・・・・・・暑くて疲れたかな?」

「かもしれないですね。昼食も終えたばかりです」

 はなさんはにこにこと笑っている。

 ぼくとしては、なんか椅子に座って、壁にもたれて、このまま眠ってしまいたいくらいには、だるい。

「・・・・・・まだ、午後講義あるんだよなあ・・・・・・」

 うへえ、とため息を吐く。

「こういう日は早く帰りたいものよ」

「はいはい。ぼんやり呟いてないで、次の講義の準備もしましょうね」

「・・・・・・気合が必要過ぎる」

 だるい。

「とりあえず。講義室に移動し、そこで寝ればいいだろうか」

「なんか口調まで変わってきてますよ」

「だるいときはこんなもんだって」

「・・・・・・なんです? 何か、他に体調不良になる原因でもあるんですか? また寝不足?」

「・・・・・・・・・・・・あー、そうね。・・・・・・うむ」

 ちょっと考える。

「はなさんさ。ぼくの部屋の窓について」

「? 何かありましたか?」

 んー、と考える。

「・・・・・・昨日ね? ちょっと手元を狂わせた結果、部屋のカーテンにハンバーガーを投げつけてしまいました」

「何やっているんですか?」

「いや本当に手元が狂ったんだよ。ちょっとバランス崩して、手が滑って、そのままだとベッドにたたきつけることになる、と思った時にちょっと力の入れ方間違えて、窓の方に思いっきり飛ばしちゃって」

「あらまあ・・・・・・」

 はなさんがなんとも言えない顔をした。

 失敗した、と全く思う。

「で、ケチャップべったり、ソースべったり。床はフローリングだから雑巾で拭けばいいとして、カーテンがそのままだとシミになってしまう、と思って、カーテン外して、風呂桶に叩き込んで水につけたの。それが、昨日の夜の話」

「・・・・・・じゃあ、今はカーテンかかってないんですか?」

「一応、風呂桶の中でもみ洗いして、何回かすすいだんだけど、結構夜遅くなっちゃって」

 日が変わるギリギリ前くらいまでかかってしまった。

「洗濯機もまわそうかと思ったんだけど、そうするとほら、真夜中だから近所迷惑になっちゃうかな、と思って」

「気を使ったんですね」

「そ。朝起きたら大学行く前にやろうかな、と思って、水につけっぱなしにして、寝たんだ」

「・・・・・・つまり、カーテンはかかってない、と」

「そうなの」

 頷く。

「寝るときは、暗いからよかった。・・・・・・外から丸見えだけど、ぼくの部屋高いとこにあるし、外から見えるようにはなってないからいいかなって」

 そう、練る時はよかったのだ。

「・・・・・・朝。晴れてるじゃん?」

「ええ。今日はいい天気です」

「朝、窓から差し込む朝日によって強制的に目を覚まさせられた・・・・・・」

「あー。・・・・・・朝日で目を覚ますと健康にいいらしいですよ?」

 はなさんがなだめる顔でぼくに言う。

「知ってる。すっきり目が覚める、とかいうやつでしょ? でも、あれは睡眠時間が足りている場合の話だと思う」

 昨日は、寝るのが遅かったのだ。

「朝の六時前だったよ。目が覚めたの。しかもそれ以上眠れない。・・・・・・いや、朝はわりとしゃっきりしてたから。そのまま洗濯機回して、終わったら干す代わりにカーテン吊るして、ってやったところでいい時間だったから、大学に来て・・・・・・」

 そう、朝は割と目がはっきりと冴えていた。

「・・・・・・昼を過ぎたあたりから限界が来たっていう感じ。・・・・・・睡眠時間やっぱり足りてない」

「それは、本当にしかたないですね」

「・・・・・・今日の夜はカーテンかかってるし、睡眠時間確保できそうでよかった」

「濡れたまま干してきたんですよね」

「うん。一応、エアコンで二時間の除湿をかけて出てきた。・・・・・・帰ったころには乾いている、と思う」

「そうですか」

 そうなるといいよねえ、と思いつつ、はなさんと頷き合う。

「では、午後からもう少し頑張りましょう」

「・・・・・・頑張る」

「コーヒー、飲みますか?」

「・・・・・・そうだね。始まるまでにはまだ時間あるし、ちょっと買ってくる」

「はい。・・・・・・途中で寝ないでくださいよ?」

 苦笑とともに告げられた冗談に、笑って、

「大丈夫だよー」


+++


 午後の講義を終えて、はなさんと分かれ、家に戻る。

 部屋に戻って、窓を見てみれば、

「カーテンは、さて、どうかな?」

 濡れたものを干していたため、やはり部屋の中に少し湿り気がある。

 エアコンを除湿で動かして、

「さて、さて」

 そっと、カーテンに触ってみる。

「んー・・・・・・」

 なんだか、まだ少し湿り気がある気がする。

「・・・・・・ふむ」

 窓を開ける。

 晴れている空気は暖かく、からっとしているように感じる。

 風はほとんどないけれど、閉じ切っているよりはよさそう。

 日が昇るのが早いけれど、日が落ちるまでも遅くなった。

 まだまだ外は明るく、昼、という感じだ。

「・・・・・・んー」

 開け放ってしまえば、それなりにいい気分になれる。

「外だと暑いのにねえ」

 ふう、とため息を吐いたところで、風が吹き込んで、カーテンを持ち上げる。

「おお」

 ぶわっと持ち上がるカーテンは、少し水気を含んでいるからか重さがあるけれど、

「これは早く乾きそう」

 思いながら、吹き込む風を待つ。

「・・・・・・夜までに乾いてね」

 今日の朝みたいに、太陽の独壇場みたいなのは、もうなしでお願いします。

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よろしくお願いします。

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