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難易度、運営、早寝

「うおおおおおぉ・・・・・・」

 ぼくがうめいていると、はなさんが寄ってきた。

「何をうめいているんですか?」

 ぼくは応えず、スマホを操作する。

「いけ」

 ぽちっと行ってみた。

「・・・・・・・・・・・・うおぉ・・・・・・」

「・・・・・・ガチャ?」

 ぼくの持つスマホを覗き見て、はなさんがつぶやいた。

 十連続である。

 そして、ピックアップは来ていない。

「・・・・・・・・・・・・よし、課金しよう」

「やめなさい。キリがないですよ」

「うぐっ!」

 はなさんの正論に手を止める。

「やめなさい。本当にキリないですよ? 沼にわざわざ飛び込むことはありません。沼に落ちては、もう戻ってこれなくなりますよ?」

「・・・・・・はなさんの説得の仕方が怖い。なんで沼とか表現するの?」

「いえ。わたしも高校の時にちょっとやって、毎月のお小遣いとバイト代突っ込んでた時期がありまして」

「ちょっと意外」

 本当に意外だ。

 はなさんは、そういうお金の使い方には厳しいイメージがある。

「最初は無料ですからね。そして、最初はお金を使うことを警戒しているものです」

「でも、百円くらいから、課金しちゃうんだよね。ちょっとガチャ引くに足りない時に、まあ、百円くらいなら、と」

「でも、一度払ってしまうと、心の制限が緩むんですよ。そして、冷静に計算してしまうわけです。一万円払った方が、効率いいじゃないか、と」

「ね。一万円の方がボーナスが多いから、基本的に高額突っ込んだ方がお得なんだよね」

 運営の罠だと思う。

 高額の方がもらえるものは多いのは事実だけれど、高額を突っ込んでいる時点で、効率云々は意味がない。

「というか、手にするもの何もないものね」

「多少、射幸心が満たされるくらいじゃないですか?」

 射幸心、収集欲、なんでもいいけれど、

「精神的には満たされるけど、本当に手に入るものは何もないんだよね」

 お金をひたすら使うだけ。

 沼にはたくさんのお金が沈んでいく。

「計算してみたら、総額で五桁は突っ込んでいたことに気づいてアプリ削除しました」

「冷静になると見えてくる怖さだね」

 あとからいくら使った計算すると、見えてくる怖さである。

 毎月一万円課金したとして、一年で十二万。

「十万越えるまで課金するくらいなら、本を買うなり、ゲーム買うなりした方がいいよねえ」

「まったくもってその通りですよ。あとで気づいて愕然とするんですよねえ」

 ふう、とはなさんがため息を吐く。

「でもその冷静さはガチャを当てるにはいらないんだ」

 ぽち

「あ」

 はなさんが短く驚きの声を挙げる中で、課金がなされ、ガチャが回る。

「こいこいこい」

「ギャンブル狂いのダメ人間みたいです・・・・・・」

「来ない。だがまだいける!」

「・・・・・・もう課金してしまった以上は止めても意味ないですよねー」

 はなさんが横でなんか言っているけれど、ぼくはさらに引いていく。

 そうして、課金で溜まった石がすべてなくなるころ、

「・・・・・・いよっし、キター!!」

「来なくてよかったのに」

「怖い」

 ぼそっと呟かれたはなさんのセリフが怖い。

「いえ、まあ、よかったですね」

「そうだね。・・・・・・課金一発目で出てよかったよ」

 うんうん、と頷いているところで、はなさんがぽん、とぼくの肩に手を置いて、

「ところで、今まで総額でいくら課金しているんです?」

「それは聞いちゃだめな奴だとおもう」

「いえ、聞いておかないと、サンが冷静さを失ってしまうでしょう」

「・・・・・・課金して沼に漬かっている時点で、もはや冷静さなどかけらもないのでは?」

「では、沼から引き上げなければ。・・・・・・さあ、いくら使ったかを思い出して、冷静になりましょう」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・うおおぉ」

 言われていくと、聞いてはいけない気になってくるけれど、

「というか、本当、冷静になっておきましょうよ。アプリを消すだけで、十万円貯金できるんですよ?」

「・・・・・・・・・・・・まあ、ねえ」

 言いたいことは分かる。

「・・・・・・ぶっちゃけ、課金してガチャ引かなくても、クリアはできる程度の難易度ではあるもんね」

「ソシャゲでクリアするために必要なものを課金にしたら、まあ、炎上するでしょうけどね」

 ソシャゲは、あくまでも無料で最後まで楽しめるのが前提な気がする。

 別にそんなことする義理はない気がするけれど、

「なんか、無料で最後までやれるってさ。ある意味すごいよね」

「メインは無料で、本筋には関係しない部分でお金を稼げるのがすごいですよね」

 はなさんも感心しているけれど、

「まあ、その戦略に面白いようにはまっているぼくのようなのもいるわけだけど」

「自重しなさい」

「自嘲してないで自重しろ、と」

「はい?」

 はなさんからすごい冷たい目で見られた。

 なんか今まで見たことのない目の冷たさだった。

 なんかすいません。


+++


 ゲームは好きだ。

 だけれど、正直、スマホでやるソシャゲに、ぼくが楽しむ要素は案外少ないようにも思う。

 というのも、ぼくとしては、キャラを操作する、という感覚こそ、ゲームを楽しむポイント、と思うからだ。

 しかし、ソシャゲは基本的に操作するポイントは少ないものが多い。

 できても、オートで動くようになるのがほとんどだ。

「・・・・・・・・・・・・なんで、ここまでソシャゲやるんだろ?」

 冷静になってみると、本当、なんでなのか分からなくなる。

 レアキャラを集めるとか楽しくはあるけれど、

「本当、別になくても困らないのに」

 キャラごとのプロフィールとか、イラストとか、眺めている分にはとても楽しい。

 それは認める。

「・・・・・・・・・・・・んー」

 暇つぶしにはいい。

 だけど、熱中するほどではない。

「おおう。はなさんに言われて冷静になってきてしまったぞう」

 そうやって、はなさんとの会話を思い出していると、なんだか笑みが漏れてくる。

「・・・・・・・・・・・・」

 ちょっと、考えた。

 そういえば、今日はこれに熱中して、はなさんをちょっと疎かにしたかもしれない。

 時計を見る。

 いつもなら、ソシャゲでキャラを育てる素材集めとかをしている時間だけれど、

「・・・・・・いいや」

 アプリを消した。

「・・・・・・・・・・・・ん。明日。はなさんと話そう」

 その方が、きっと楽しい。

 早寝して、睡眠時間を確保して、しゃっきりした頭で、はなさんと会話することを想像する。

「うん。その方が、はなさんも喜ぶよね」

評価いただけると励みになります。

よろしくお願いします。

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