エビフライ、自然の摂理、コーディネート
揚げ物は嫌いじゃない。
というか、いっそ好きだ。
だけれど、
「毎日はさすがに飽きる」
「違うのを食べればいいのでは?」
「うーん。そうなんだけどねえ・・・・・・」
最近、ちょっとバイトを増やしていた。
いつもの喫茶店のバイトに加えて、短期バイトをいくつか入れたのだ。
その結果、
「晩御飯が惣菜ばかりになってしまって」
「スーパーですか?」
「コンビニとかより安いからね」
コスパを考えるなら、スーパーマーケットで売っている惣菜の方が、コンビニの弁当より安いと思う。平均的には。
「それで、惣菜って揚げ物多いじゃない?」
「そうですね。肉と魚。揚げ物か焼きものか、メインはどうにしろ、油っこいのが多いかもしれません」
「焼き鳥とか手軽だし、ソースをかけてやれば、味も濃くなって、ごはんにも合うし」
なんだかんだと、結構食べること自体は楽しんでいた。
「間にサラダ挟めば、わりとさっぱりといけたしさ。たくさん食べたんだよ。惣菜の揚げ物って、結構ボリュームあるし、エビフライを十本まとめ買いして、タルタルソースぶっかけて、食べたりとか」
「ちょっと胸やけしそうな食べ方ですね」
「まったくもってその通りで、そればっかり食べてたら、飽きた」
というか、胃が疲れている、の方が正しいかもしれない。
「ぼくは、もっと丈夫な胃腸を持っていたはずなのに・・・・・・」
嘆くと、はなさんが呆れたため息を吐いた。
「普通に揚げ物とか肉類を抜いてはダメだったんですか?」
「短期バイトがそれなりに肉体労働でさ。食べないと死ぬ」
エネルギーというかタンパク質というか、とにかく、そういうの、具体的には肉類がよかったのだ。
「食べてるときはそれなりにおいしく食べられてたんだけど、一通りバイトが片付いたところで、なんかきつくなってきた」
「バイト終わってから、食生活戻しました?」
「・・・・・・・・・・・・戻ってなかったです」
「それが原因じゃないですか」
「まったくだね」
机に突っ伏したまま、ぼくは頷く。
「・・・・・・今日は、さっぱりしたものにしよう」
「具体的には?」
「・・・・・・・・・・・・冷やし中華?」
「まあ、いいでしょう」
なんか許されたらしい。
「でも、忙しくて体力落ちてないですか? もしかして、季節前倒しで夏バテ入ってません?」
「・・・・・・あー。ある、かも? 最近暑いし」
バイト先は、冷房の効かないところもあったから、水分は多く補給していたけれど、睡眠時間はどうだろうか。
あまり確保できていなかった気もする。
「寝不足からくる体力の低下、かなあ・・・・・・? 明日は休みだし、静かにしよう」
「そうしなさい」
はなさんがぽんぽんと、ぼくの肩を叩いて言った。
「きゅうり、ハム、錦糸卵、トマト、あたりが定番かなあ?」
スーパーで買って帰るか、と考える。
「生めんのやつならいくらでも売ってるだろうし」
「自前でゆでるやつですか」
「あれ、便利。すぐできる」
ちょっとゆでて、ざるに開けて水気を切り、皿に盛ってタレをかけるだけだ。
「氷とか使うと涼しくてよし」
「そうめんとかはどうなんですか?」
「暑い時にはいいかもしれないけど、味気なさ過ぎて軽いんだよね。食べ応えがない」
「だから暑い時にいいんでしょうけれど」
「ぼくは、もっと食べ応えが欲しいです」
「なるほど」
苦笑と微笑の混じった表情。
はなさんのぼくを見る目が微笑ましいものを見る目になっている。
「二、三日ほど、揚げ物は食べずに野菜とさっぱり系の飯で過ごせば、また揚げ物が食べられるようになるはず」
「その前に、睡眠時間を取るようにしましょうね」
「はい」
+++
帰りによったスーパーの袋から、夕食の材料を取り出す。
「・・・・・・ひやしちゅーかー」
二人前。
だけれど、普通に食べきれる量だ。
「あとは、キュウリと、錦糸卵、トマト」
紅ショウガとかも考えたが、ちょっと一食分の量ではないので断念した。
天かすとかもありかなあ、と思ったが、揚げ物断ちのため、こちらも断念。
他に載せるものといえば、ツナ缶だったり、コーンだったりもあったけれど、二人前の量だ。
麺が結構多くなることも見越して、上に載せるものは少な目にすることにした。
麺が多くなるから、錦糸卵と合わさって、全体的に黄色いコーディネート、とかふざけてみる。
「・・・・・・さて」
まずは、鍋。
それなりの大きさの鍋に水を張り、火にかけて沸騰させる。
その間に、麺の袋は切って、タレの袋は冷蔵庫に入れておく。
ざるを取り出し、流し台に置き、皿も出しておく。
「・・・・・・・・・・・・」
お湯が沸いたところで、麺をまとめて投入。
はしでぐるぐるかきまぜ、麺をほぐす。
あとは、なべ底にくっつかないようにだけ注意しつつ、吹きこぼれないかみながら、ゆでる。
そんなに長い時間はいらない。
数分ゆでた後、鍋の中身を流し台のざるの中へと流し込み、水道から冷水をぶっかける。
鍋を置いて、その中にざるを入れ、冷水をひっかけながら、冷凍庫から出した氷を投げ込んだ。
皿を持ってきて、ざるを取り出す。
短い時間では溶け切らなかった氷も一緒についてきたが、問題なし、とばかりに皿へと移す。
結構、山になった。
錦糸卵は袋を開けるだけだが、キュウリとトマトは切ってない。
「いっか」
まな板と包丁と持ってきて、軽く洗った野菜のへたを切り落とす。
きゅうりは適当にぶつ切りに。トマトは四つ切にして、麺の上に置く。
最後にタレをぶっかけ、錦糸卵を載せて、
「できあがりー」
ボリュームあるなあ、とは思うけれど、一食分と考えると上等だ。
「・・・・・・・・・・・・お茶」
冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに注ぐ。
テーブルの上に置いてみると、黄色に緑と赤の冷やし中華と、ガラスコップの麦茶。
意外と涼し気に見える。
「・・・・・・きゅうり、切り方雑過ぎた。次はゆでる前に切るようにしよう」
ちょっと、反省する。
「いただきます」
酸味の強いタレのかかった冷やし中華だ。
今日もそれなりの暑さだったこともあって、なんだか体の熱が引いていくような気さえする。
それなりのボリュームも、それほど時間を置かずに食べ終えて、
「ふいー」
麦茶を飲み干して、息を吐く。
「・・・・・・んむー」
しばらくぼうっとした後、食器を流し台に持って行って、洗い、棚に伏せて置く。
「・・・・・・あー」
腹いっぱい。
いい感じに疲れている。
そうなってくると、眠くなってくるのは自然の摂理だ。
「・・・・・・は、磨いて、ねよ」
そうした。
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