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劣化コピースキルと言われる〈絵師〉を授かったが、画力がアレだったせいで、いろいろスゴイことになった件  作者: コケモモ


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ハンス、お前もか……

 〈几帳面〉を克服してからのエルザの上達ぶりは実に目覚ましかった。魔術師として自信がついたおかげで、表情も別人のように明るくなった。やはり、詠唱短縮を身に着けたことが大きい。ケイトによると、古代語と現代語の併用はこれまで完全に盲点になっていて、魔法の習得方法を根本的に変えることになるらしい。エルザは二日に一度は我が家にやって来て、ケイトと一緒に併用効果の検証に取り組んでいる。

 アイリーンはエルザにすっかりなついた。アイリーンがエルザをおねえちゃんと呼んでいるのを耳にすると、娘が二人になったようで、俺も父親としてうれしい。

 男爵の承諾を得て、俺はさらにダンジョン探索を続けることになった。もちろん、あのパーティの一員としてだ。当初の約束通り、『レッド・ウィングス』は晴れて準CクラスからCクラスに昇進した。当面の目標は20階層制覇ということになっている。

 とまあ順風満帆と言えそうなある日、俺はハンスから相談に乗って欲しいと頼まれて、『猪鹿亭』で夕飯を食うことになった。

「探索の後なのにすみません。飯代は俺が持ちますから」

「いやいや、まだ二十歳の若者が、そんなことに気をまわさなくていいよ。エールでも飲みながら、ゆっくり話そう」

「ありがとうございます。エルザは今日もお宅に?」

「うん、うちの嫁さんと共同研究をしているからね。娘の面倒も見てくれるし、ありがたいよ」

「彼女、すっかり変わりましたよね。攻撃魔法をバンバンぶっ放す姿なんて、想像したこともなかった……。アンリさんがすごい人だってことが、あらためてわかりました」

「俺はちょっとしたヒントになることを言っただけだよ。計算の話をしただけで、それが魔法に役立つなんて、これっぽっちも考えちゃいなかった」

「そのヒントになることが言えるところがすごいんです。エルザの師匠、つまり『レッド・ウイングス』のリーダーにもできなかったことなんだから」

 エルザの師匠がパーティのリーダーだったというのは初耳だ。

「その人はなぜパーティを抜けたんだい?」

「うーん、はっきりしたことはわからないんですが、自分と俺たちの実力の差に悩んでいたんじゃないかって気がします。Bランクに昇格する話が出たとき、少しも喜んでいませんでしたから」

「リーダーは今どこに?」

「王都の魔法学院の臨時講師をやっているはずです」

 メンバーの自立をうながすために、一時的にパーティを離れたってところか。ギルマスも一枚噛んでそうだな……。

「それで、アンリさん、俺にもアドバイスをしてもらえませんか?」

「ってことは、ハンス君も何か悩んでいるってことだよね。俺にはそれほど問題があるようには見えないんだけど……」

「あはは、本当に問題がないのなら、どこにも問題があるように見えない、とおっしゃるはずでしょう。そのモヤっとした感じが、俺の現状そのままなんですよね。フレッドがよく、俺のことをものぐさだって言うじゃないですか」

「うん……」

「あのバカにものぐさ呼ばわりされるのはむかつくんですが、自分の限界まで何かに打ち込んだ経験というものが、俺にはないんです」

「ああ、確かになんていうか、君はいつでも合理的な行動を取っているって感じがするね」

「俺のスキルは〈見切り〉なんです。このスキルも今お話ししたことと関係があるように思えて……」

 そうか、〈剣技・見切り〉だったら当たりスキルだろうに、何を見切るか曖昧なところが問題なんだろう。それと、〈見切り〉に「見極める」と「あきらめる」、二つの意味があることにも用心する必要がありそうだ。

「うーん、確かに〈見切り〉を使いこなすのが難しいんだろうね。一応、アドバイスとしては、連続で使ってみてはどうか、ってところかな」

「連続で?」

「うん。たとえば君が何かやろうとしていることがあったとする。迷いがあるなら、君はそれが実現するかどうか〈見切ろう〉とするだろう。それで実現しないとわかった時、次は実現できなければ得るものは何もないのかを見切る。とかね。それと、そんな風に掘り下げていくことのできない問題は、そもそも見切らないほうがいいのかもしれない。見切らないことが大切な場合もあるんじゃないかと思うんだよ」

「見切らない?」

「ああ、たとえばこのあいだの隠し部屋の一件だと、あの状況で助かる可能性の有無を見切ることに意味はない。時間の無駄だ。見切る必要があるのは、助かるために考え出した方法が有効かどうかだ」

「なるほど。戦闘でいえば、その攻撃で相手を倒せるかどうかを見切って、倒せないから攻撃しないって考えは馬鹿げているわけですね。倒せなくても、その攻撃が有効かどうか、有効だとしたら、それが最善なのかと、さらに見切っていく必要がある。俺が無駄だと見切ってきた中にも、何かが得られるものがあったはずだ、ということになりますね……。うん、相談してよかった。アンリさんはやっぱりすごい」

「ほめすぎだと思うけれど、何か参考になったのならうれしいよ」

 その後、ハンスは戦闘時の位置取りが格段に向上した。敵の戦力やフレッドの行動パターンを上手く見切っているようだ。剣技の見切りも進化した。盾で受けるか、身をかわすか、剣でパリイするか、だけでなく、技を使う最善のタイミングまで見切るようにしたんだろう。

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