判ってきたこと
ダンジョン探索を続け、いく分戦闘に慣れたおかげで、俺は何度か〈絵師〉のスキルを発動することに成功した。それにともなって、いくつか判ってきたことがあるのでまとめておくことにしよう。
1 リアライズする対象は聖獣でなくてもよい。魔獣に勝てる相手ということで、聖獣をイメージすることが多くなるだけだ。
2 同じ絵を描いてリアライズすることはできない。モーリ男爵は「自己模倣は芸術家にとって死に等しい」と言っていた。俺は自分を芸術家とは思っていないが、同じものを描こうとしている時、「筆に力(エルザの考えでは魔力)が乗っている」という感覚がないのは確かだ。ちなみに、リアライズすると絵は残らない。絵が紙から抜け出して実体化するようだ。
3 この「筆に力が乗っていること」がどうやらスキル発動の必須条件らしい。そして、少なくとも現状では、俺は戦闘中にしかリアライズ可能な絵が描けない。事前にある聖獣をイメージして描いておくというわけにはいかないのだ。
4 リアライズしたものの大きさは絵の大きさとは関係なく、俺が絵を描く時にイメージしていた大きさになる。まだやったことはないが、絵よりずっと小さな聖獣をリアライズすることもできそうな気がする。
5 スキル発動に成功した戦闘が短時間で終了してしまうため、実体化したものがどのくらいの間存在し続けられるのかはよく分からない。戦闘が終了して務めを果たすと、それらは程なく消滅する。
6 パーティの力が上がったおかげで、描いた絵をリアライズする前に敵を全滅させてしまうことがある。少し意外だったのだが、使わなかった絵は後の戦闘でリアライズすることができる。このことに気づいてから、俺はスケッチブックを携帯することにした。今ストックしているのは「ゴーレム」と「沼地の住人(自分の周囲を泥沼にして敵を足止めする。姿はカエル風)」の絵だ。




